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第二○○話 「温もり」


 「お父さん分が切れたんです。」

 「アタシもパパ分が切れたッス。」

 なんだその成分。

 いや言いたいことは分かるけど。


 今はベッドの上でミツキの膝枕に縦に頭を乗せられた状態でサナに押し倒されているような恰好だ。


 私の上に四つん這いになっているサナの顔が近い。

 ちなみにサオリさんはベッドの隅っこに座って心配そうにこちらの様子を伺っている。


 さっきからゆっくりとミツキに撫でられている頭が地味に気持ちいい。


 「だから、お父さん、早く帰って来て?」

 真剣な顔でそういったサナに唇を奪われた。



▽▽▽▽▽



>レンは淫魔の契りにより眷属を倒した

>590ポイントの経験値を得た

>ランク差ボーナスとして1,000ポイントの経験値を得た

>レベル20になった

>レベル30になった

>サナは淫魔の契りにより主を倒した

>260ポイントの経験値を得た

>ランク差ボーナスとして1,000ポイントの経験値を得た



 「サナ、大丈夫?!」

 ランクアップに伴い、状態異常【源魔力枯渇】が解除されたのか、予想どおり身体は元のサイズに戻った。


 が、根元まで入っていた状態でサイズが戻ったものだから大変だ。


 これまではお互いのサイズ的にこの状態は無理だったのだが、今はとりあえず淫魔法【精力回復】でケアしておく。


 私の上で何かを我慢するような表情で身体をプルプルさせていたサナの顔が、ふと緩み、胸の上に身体を預けて来たので、身体を起こし抱きとめる。


 「おかえりなさい。お父さん。」

 肩でするような息を整えながら笑顔でそう言うサナに

 「ただいま。サナ」

 そういって口づけた。


 そのまま口から頬、おでこへと上がっていき、最後はくすぐったそうにしているサナの両角に口づける。

 腕の中にすっぽり収まるサナの感触も久しぶりだ。


 「パパ!」

 後ろから裸で抱き着いてきたミツキにも振り返るような形でキスをする。

 「ミツキにも心配をかけたね。」

 「ううん、ホントに元に戻れて良かったッス!パパ、おかえりなさい!」


 涙目のミツキの頭をうさ耳ごと撫でながら、もう一度キスをすると、頭を抱きかかえられてしまった。

 いや、ちょっと角度的に首がつらい。


 手で誘導しながら後ろじゃなくて横に回って貰い、腕を頭じゃなくて首に回すようにずらし解放して貰った。

 今はミツキの頭をうさ耳ごと頬に擦りつけられている。


 ちなみに胸元ではサナが両角ごと頭を擦りつけながら、うっとりとしていた。


 サオリさんはどうしているかと思い、こちらに背を向ける形でベッドに腰かけ、うつむいているその肩に手を伸ばすと、触れるか触れないかくらいの位置で跳ねるように震える。


 「サオリさん、あの、やっぱり大人の私は怖いですか?」

 怯えているのかと思い、伸ばした手を引っ込めようとしたが、それは途中で振り返ったサオリさんの両手で握りしめられた。


 「本当に…良かった……わたしのせいで…レン君が……元に戻れなかったら…どうしようかと…」


 ポロポロと涙をこぼしながら、そう気持ちを吐露とろするサオリさん。

 相当責任を感じていたようだ。


 握られた手を抜き、改めてサオリさんの左目の涙を人差し指で、右目の涙を親指で拭い、そのまま手のひらを頬に添えた。


 「小さくなってしまったのは、今思えば私の準備不足でした。

 万全の状態で挑めば避けられたトラブルです。

 サオリさんが気に病むことじゃないですよ?」


 「でも…でも…。」

 添えた手をその上から両手で包み込むような恰好で、溢れる涙を隠そうとせず、真っすぐ見つめてくるサオリさん。


 「それにみんなもこうして私が元に戻るために助けてくれたじゃないですか。

 特にサオリさんは男の人が怖いはずなのに、いの一番に。

 なにか償いが必要だと思っているのなら、それで十分おつりが出ますよ。」


 そういって精一杯の笑顔を返す。

 ぎこちない表情になってないだろうか?

 サナの言う、ちょっと困ったような笑顔になってしまっていないだろうか?


 「…はい。…じゃあ…おかえりなさい、レン君。」

 私に合わせるように無理に作ったサオリさんの笑顔。

 それでもその笑顔は美しかった。


 「ただいま。サオリさん。」


 頬に添えた手を引くと、そのままサオリさんの身体がついてくる。

 手を離し、遠慮がちに近寄ってくるその身体をミツキの反対側に抱き寄せた。


 手が触れた瞬間、怯えたように、または緊張したように一瞬硬くなったサオリさんの身体が、腕の中で少しずつ柔らかくなる。


 サオリさんは服を着たままなので、私の胸に添えられた両方の手のひらのみから人肌が伝わる。


 反対側のミツキの肌から伝わる温かさ、抱っこしたような状態のサナから伝わる温もりとともに少しだけそれを無言でそれを噛みしめた。



 サナです!

 お父さん、おかえりなさい!

 嬉しい!


 次回、第二○一話 「おあずけ」


 あと、お父さんのを全部受け入れられるようになったのも嬉しいです。

 このまま離れたくないなぁ。

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