第一話 「サキュバス」
非常に良い買い物をしたと思う。
こうして夢の中まで出てくるとは非常にコスパが良い。
左手で目の前の褐色の大きな尻を掴み「攻撃」を続けながらそう思う。
淡く紫がかったプラチナブロンドの長い髪が上下左右に大きく揺れる。
髪の間からは牛の角を思わせる黒い角が同じく左右に振られ、まるでロデオをしているかのようだ。
先ほどまで背中から伸びていた黒い蝙蝠のような羽根は、今はうっすらと汗の浮かぶ背中にしまわれており、肩甲骨のあたりに黒い筋として残っている。
そこに爪を立てたり舌を這わせたりすると、角を突き上げるかのように頭が跳ねる。
右手でしごいていたスペードマークを思い起こさせる尻尾を口に加えなおし、改めて両手で尻を掴みながらスパートをかける。
「たまには変わったジャンルを」と、サキュバスものを買ったのは正解であった。
いわゆる抜きゲーにしては、異常に選択肢が多かったものの、80%オフで500円。
内容も「非常に使えそう」なものであった。
その上、こうして夢の中で続きまで出来るとあっては、思いつきで始めた余暇の過ごし方としては上等ではないだろうか?
サキュバスより先に達しないように、そんなことを考え、気を紛らわしながら「攻撃」を続けると、やがて大きな嬌声とともにサキュバスが達する。
「良し、勝った!」
搾り取るようなサキュバスの最後の「攻撃」を耐えた瞬間、目の前にメッセージログが表示される。
>「淫魔」を倒した
>12,350ポイントの経験値を得た
>ランク差ボーナスとして7,000ポイントの経験値を得た
経験値?そんなのあのエロゲにあったかな?
そう思っている間にも、「レベルが上った」だの「ランクが上がった」だの「ステータスが上がった」だの、色々なログが続く。
頭が一瞬真っ白になり、目眩と倦怠感が襲ってくる。
おいおい、そんな殺生な。せめて出るまで待って欲しいとは思ったものの、ある意味同じような倦怠感を味わいながら、後ろから重なるようにサキュバスに身体を預けていく。
まるで身体が溶けたように微睡みながら
「まぁ、夢精は避けられてるだろうから良しとしよう。」
と、すごくどうでも良いことを考えながら意識を手放した。
キーワード回収まで相当かかりそうです。
長い目で見ていただけると幸いです。