第一九三話 「狩場」
「どうッスか?」
「うーん、毎日敵が湧く。ってわけじゃないみたい。
3階への階段付近は探索者が3パーティーくらいいるけど、まだまだこっちまでは来ないと思うわ。」
今は昨日と同じく新迷宮4階の小部屋まで来て、淫魔法【夜遊び情報誌】でフロアの状況を確認しているところだ。
諸事情(『レベル上げ』)により、昨日より遅いスタートになったが、敵がまだちゃんと湧いてないところを見ると、24時間リポップというわけではないらしい。
とはいえ、昨日狩ってない箇所の敵が、こちらの階段方面にも流れてきているので周辺が涸れているというほどではない。
「ここの周辺まで来ている敵を狩ってもいいんだけど、そうなると他のパーティーがこっちに来る時間も早まっちゃいそうなのよね。」
「5階まで行くのはどうでしょう?あの、りざあどまんがいた所。」
サナが懐かしい話を元に提案してきた。
「5階ならハーピーって手もあるッスね。」
その手もあるか。
たしか前者だとあの辺りは人型の的が多いのでドロップ武器が稼げそうだし、後者だと、サオリさん以外は慣れたものなので安定して狩れそうだ。
「穴がどうなっているかも気になるし、先にハーピーの方に行ってみようか。」
「はい。」
「了解ッス!」
「お任せします。」
▽▽▽▽▽
「おー。」
「天井直ってますね。」
「最後に来たの一週間前くらいッスよね?
あれだけ壊れてたのに、これくらいの期間で直るもんなんスねー。」
「ここに何かあったのですか?」
一人だけ話についていけないサオリさんに当時の状況を説明した。
「っていうか、ハーピーいないッスね。」
「前までここにいたのは、元々6階の敵だったデミハーピーと6階に空いていた穴から入り込んだ野生のハーピーだったのかもね?」
「この階段上がったら、いっぱい人面鳥いたりするのかな?」
サナが階段の上の方を覗き込んでいるので、一緒に見に行ってみる。
視覚強化スキルでもある淫スキル【窃視症】で見てみると、階段の途中にもデミハーピーがいるのが見えた。
「階段の途中にもいるみたいだから、ここから上がるのは危なそうね。」
「そうですねぇ。足場も悪いし、相手に有利な場所だと思います。」
サオリさんも賛同してくれた。
あらためて淫魔法【夜遊び情報誌】でこのフロアの状況を確認する。
「他のパーティーはこの階にはいないし、今はランク3の敵も近くにいないから、ここを拠点にして狩りましょう。」
▽▽▽▽▽
『改めて狩り始めると、この階、爬虫類系の敵も多いのね。』
『爬虫類?』
『ああ、蛇とかトカゲとかそんな感じの動物。』
『カエルもッスか?』
『カエルはまたちょっと違う種類ね。と、噂をしたらまたカエルがいたので連れて行くわよ。』
『お気をつけて。』
念話を打ち切り、淫スキル【マゾヒスト】のレーダーを頼りにT字路の真ん中にいるデミジャイアントトードに近づいていく。
人型の敵と違って群れていないから狩りやすく、レベルも25と丁度いい。
淫魔法【コスチュームプレイ】で投擲槍を召喚して投げた瞬間、デミジャイアントトードが食われた。
大型犬ほどもある大きさのカエルが一口で飲み込まれる。
蛇、それも巨大な蛇だ。
ランクが低くて範囲の狭いレーダーの外から一気に移動して来たらしい。
咄嗟に淫スキル【性病検査】で鑑定すると、デミイメンススネークという敵らしい。
レベルは30。
この階に来た時に調べた時点では、かなり遠い位置にいたはずなのだが、どうやら移動速度が早く、移動範囲も広いらしい。
投げた槍は無慈悲に大蛇に当たり、こちらに気づいて威嚇してきてる。
『大蛇に絡まれそう。レベルは30。緊急避難できるように小部屋の扉前まで下がって待機して。』
念話でそう告げた後、ダッシュで来た道を戻る。
後ろを振り向かずにレーダーを頼りに走っているが凄い勢いで追ってきている。
速い!
いつぞやのように淫魔法【ウェット&メッシー】で大量の粘性の高いローションを両脚の踵からコーン状にぶちまけながら、更にスキル【突進】も使い引き離そうとするが、思ったより距離が広がらない。
畜生!デミミノタウロスと違って足元安定してやがる。
というか、自分の身体が小さい分、速度が出てないのかもしれない。
『ミツキ姉、弓矢の準備しておいて!』
『了解ッス!』
サオリです。
迷宮はひとりでに直るとは聞いていましたが、そんなにも大きく壊れたものでも直るのですね。
少し見て見たかったです。
次回、第一九四話 「デミイメンススネーク」
大蛇?生命力強そう。
レン君、大丈夫かしら?




