第十八話 「ラブホテル」
そもそもだ、迷宮側から見て通路の行き止まりに、まるでそこで待っていれば獲物が来るのを知っているかのようにデミオークが待機してたり次々と現れるのが異常だ。
あの部屋は貴族たちのお楽しみの場所で、使い終わった獲物は迷宮に捨てていたのだろう。
しかも定期的に。
迷宮行きのいかにも出口という扉から、わざとそちらに獲物が逃げるようにしていたのかもしれない。
実際、私も種族特性【ドレイン】が無かったらそうなっていただろう。
これ表沙汰になったら一大スキャンダルだろうなぁ。
アイテム欄に並ぶ王子様方の死体を眺め、そんな事を考えながら階段を上がっていく。
あとどうでもいいがアイテム欄でドラッグすることにより死体にズボンを履かすことも出来た。
「ご主人様、また扉です。」
サナの声で視線を視界内のメニューから階段の上に向き直す。
木造りの扉でこちら側から鍵をかけるタイプだ。
鍵を外し、そっと外を見る。
淫スキル【夜這い】と淫スキル【マゾヒスト】を組み合わせたレーダーで体温感知や危険感知に反応は無いのは確認済みだが念の為だ。
扉の外は鉱山か炭鉱の跡地のような洞窟で、砕いたような岩肌とそれを補強する鳥居のように組み合わせた丸太が点々と続いているのが見える。
「敵はいなさそうね…。いくわよサナ。」
「はい。」
サナの手を引いて、空気の流れがある方へ歩いていく。
気温は肌寒いくらいだ。
まぁ、自分の格好も格好だが。
下半身はズボンなのでともかく、上半身は腕を捲ったシャツ一枚。
おっぱいがキツイのでボタンは上から3つ外している上に、下からも外して胸の下でシャツを縛っている。
こうして少しでも絞っておっぱいを固定しないと動いて邪魔なのだ。
ただでさえ足元を見づらいのに右に左に動いて調べ物するときに邪魔なのだ。
あと戦闘中も痛かった。
思わず受ける苦痛を快楽へ変換する魔法【被虐の心得】を使うくらいに。
いや、防御力も上がるし、ダメージを精力に変換する魔法でもあるからどっちみち使っただろうけどさ。
10分くらい歩いただろうか、洞窟の出口が見えてきた。
ついつい早足になってしまう。
外にでると空には月が登っており、一面の星空だ。
月と星座は元の世界と同じように見える。
回りに明かりが無い分、星が沢山見え、田舎に住んでいたころを思い出す。
「ご主人様、麓に街が見えます。」
サナが指差す方を見るとポツポツと明かりが見え、大きな街があることが分かる。
今いる場所は山の上の方のようだ。
回りを見渡すと明かりらしきものは見えないが古びた建物が大きな何軒がある。
人の気配は無くフクロウのような鳥の鳴き声や虫の声だけが響いている。
「廃坑跡地か何かなのかしらね?」
試しに宿舎かなにかだったような大きな建物に入ってみる。
もうしばらくの間、使ってない様子だが、ある程度いらなくなった生活用品がそのまま残されており廃墟マニアが喜びそうな雰囲気だ。
壁に張り紙がしてあり、何か文字が書いてあるが当然読めない。
ピコン!
>淫スキル【ラブレター】を得た。
おお、読める読める。
保有する言語スキル(この場合は共通大陸語)の読み書きができるスキルらしい。
とはいえ、大したことは書いてない。
張り紙には働くためのスローガンが書いてありここが元々鉱山だったのが分かったくらいだ。
「今のうちに麓の街まで逃げなくていいんですか?」
不安そうにサナがそう聞いてくる。
「そうしたいのは山々だけど、暗くて道がわからないし危険だから明るくなってから移動しましょう。」
「わかりました。それなら今晩はここにお泊りですね。」
そういってサナは近くのドアを開けて部屋の中を覗き始めた。
「うー埃っぽい…。」
そりゃそうだ。
部屋の中には打ち捨てられたベッドはあるが、ホコリとカビでとても横になる気にはならない。
こりゃ寝られずに徹夜コースかな?と、考えていたところ、使っていない魔法を思い出した。
淫魔法【ラブホテル】を使ってみる。
ドアか床に魔法の始点を選ぶようだ。
近くの別のドアを始点に選択すると視界にパネルのように6種類の部屋の映像が浮かぶ。
まんまラブホの入り口だな。
適当に選び魔法を発動させると、始点に指定したドアの枠が光る。
ちなみに魔力の使用量はかなり大きい。
「サナー、戻って来てー」
とりあえず部屋の奥の方を探索しているサナを呼び寄せる。
「どうしたんですか?」
トテテテという足音が聞こえるようにサナが小走りで戻ってきた。
光っているドアに気づいている様子はない。
この光は術者にしか見えないのかな?
サナの手を引きながらドアを開けてみる。
キーワード回収まで相当かかりそうです。
長い目で見ていただけると幸いです。