第一八八話 「発情期再び」
「下ごしらえも終わりましたし、ここからは少し長い時間煮込まなきゃならないので、後は宿のお部屋の方でやりますね。」
「二人とも、ごゆっくりッスー。」
そういってサナとミツキがラブホテルの部屋から出ていった。
どうやら気を使われているらしい。
「あ、あの、これ、そういう事ですよね。」
サオリさんが赤くなりながら、落ち着かなさそうにキョロキョロしている。
「えーと、サオリママに自覚があるか分からないんですが、昨日から身体が熱くなったり、落ち着かなかったりしませんか?」
「え、ええ。実はちょっと…。男の子のレン君と一緒なのと、慣れない事しているせいだと思ってましたが…もしかして、また病気のせいでしょうか?」
不安そうな顔で私の顔を覗き込んでくるサオリさん。
目元のホクロが色っぽい。
「いえ、病気ではないんですが…実はサオリママは今発情期に入ってます。」
「え?」
「サナも気づいているそうですよ?同族同士なら匂いで分かるんですよね?」
そうなのだ。
珍しく調理中のサナに味見以外で呼ばれたと思ったら
「レンちゃんは気づいてると思いますけど、今、お母さん発情期みたいです。
なんか、そういう匂いがします。」
と、告げられた。
なんでも同族ならわかる独特の体臭がするらしく、自分が発情期の時も布団の中が丁度今のサオリさんのような匂いがしていたらしい。
だから自分の時のように鎮めてやって欲しいとサナにも頼まれているのだ。
実際、今、淫スキル【性病検査】を使ってサオリさんの状況を確認してみても、健康状態が発情期(二日目:中期)と、朝の初期から進行している。
サナの例でいくと、そろそろヤバくなってくるはずだ。
「あの、わたし、初めての発情期なので、全然自覚ありませんでした…。」
ベッドに座り、両手を太ももの間に挟み、うつむきながら小さくなって耳まで赤くしているサオリさん。
発情期自体がというより、娘に指摘されたのが恥ずかしいのかもしれない。
「生理現象ですし、お腹がちゃんと治った証拠でもあります。
私の『レベル上げ』の件もありますし、サオリさんが嫌でなければ、お互い助け合いませんか?」
サナの時みたいに自分から言わせるような恥のかかせ方をするのは忍びない。
「そんな、嫌なんて事は…ありません…。」
驚いたように発した声の言葉尻がだんだん小さくなっていく。
「あの、わたし、まだたぶん男の人が怖くて、でもレン君なら、その、大丈夫で、だから、あの、不束者ですが、よろしくお願いします…。」
もう最後の方は聞き取れないくらいの小さな声だ。
サオリさんの前の床に跪くように座り、その頬を両手で捧げ持つように上げると、緊張からかプルプル震えながら真っ赤な顔でサオリさんは目をつむった。
▽▽▽▽▽
>レンは淫魔の契りにより眷属を倒した
>110ポイントの経験値を得た
>サオリは淫魔の契りにより主を倒した
>90ポイントの経験値を得た
>レベルが19になった
>サオリは淫魔の契りにより主を倒した
>80ポイントの経験値を得た
▽▽▽▽▽
「本当にレベルが上がるんですねぇ。
でもわたしだけ上がってしまって申し訳ないです…。」
『タイミングの問題ですから大丈夫ですよ。実は私も、もう少しで上がりそうなくらいですし。』
私の腕枕でピロートークしながらの台詞なら格好も付くかもしれないが、実際のところは私が小さく、身長差もあってサオリさんの胸に顔を埋められる状態で抱きしめられている状態だ。
『レベル上げ』が終わって冷静になったサオリさんが、恥ずかしくて私の顔を見れないという理由でこういう体勢なのだが、いい匂いがするのに、おっぱいで窒息しそうで声が出ないという状態なため、念話でフォローを入れた。
「ぷは、サナの時もそうでしたが、これから少しづつ切なくなっていくらしいので、遠慮しないで言ってくださいね。」
押さえられている腕をくぐり抜けるように胸の谷間から無理やり顔を起こし、サオリさんにそういった。
位置的に上目遣いになってしまうのはしょうがない。
客観的に見ると大人ぶっている子どもみたいに見えてしまうだろう。
「…うふふ。はい。その時はよろしくおねがいしますね。レン君。」
サオリさんも同じような事を思ったのだろう。
愛し子を見るような優しい笑みを見せてくれた。
そのまま、もぞもぞとサオリさんの両手の拘束からずり上がってサオリさんの頭を抱き、その唇と桜色の両角にキスをした。
サナです。
夜市のおかみさんが言ってました、「発情期の女同士は助け合わなきゃ。」って。
お母さん、大丈夫かなぁ。
次回、第一八九話 「夕食」
うん、いい感じに煮えてきた。




