第十六話 「絶倫」
パタン
「「あっ」」
サナが扉から出てきた途端、扉は自動的に閉まってしまった。
その後には扉はなく壁だけが残されいる。
一方通行扉か!?
「ご、ごめんなさいご主人様!」
あわててトレイを落としそうになるサナを支えながら、大丈夫だと落ち着かせる。
ついでにコップの水も飲ませて貰おう。
「サナも飲む?」
「い、いえ大丈夫です。」
一息ついて落ち着いて壁を調べなおす。
最初の部屋が隠し部屋で隠し扉がここにあるような雰囲気なんだよな。
一本道の通路の行き止まりだし。
ピコン!
>淫スキル【引き出しの秘密】を得た。
ふむふむ隠形感知系のスキルか。
扉があった場所の足元にAR標記のように【開閉スイッチ】という表示がポップアップしてる。
開けるにはちょっと複雑な手順が必要な様子だ。
と、ここでまたスキル【マゾヒスト】を通して危険感知。
レーダーによると通路奥からまた3体のデミオークがこっちに向かって来ているようだ。
もういいっちゅーの。
「サナ。」
「はい。」
隠し部屋があった方を心配そうに見ているサナは当然気づいていない。
「そのトレイを床に置いて、その代りにこれを持って」
「はい?」
そういって前にデミオークから回収したナイフを渡す。
「出来たらでいいからトドメよろしくね。」
「え?」
サナの横を走り抜け5mほど近くまで横並びでこちらに向かってくるデミオーク三人組の真ん中の顔面に両手を広げた状態でドロップキックをかます。
つま先がデミオークの額にある魔素核に触れているのでそのままドレイン。
真ん中を貫通するようにノックバックさせ、勢いをそのままに両手で左右のデミオークの頭をアイアンクローの形で掴み、そのまま両手で同じ様に額にある魔素核からドレイン。
デミオーク3体は体力が急激に減り気絶する。
倒れた中央のデミオークの顔面にそのまま着地する。
もう流石にデミオークの相手にもこの身体の身体能力にも慣れた。
ピコン!
>スキル【絶倫】をドレインしました。
なんか追加でドレインしている。
ほかにも【経験値】と【習得値】というのも吸ったようだ。
そういや
種族特性【ドレイン】がランク2になった。
とか、さっき表示出てたな。
ちなみにスキル【絶倫】は精力回復量アップの効果があるパッシブスキルのようだ。
使用に精力を使うドレインとは相性がいいのでこれはラッキー。
「えい!」
サナの気合が入った声で我に返る。
ついつい手に入った能力の効果を検証したくなってしまうんだよな。
振り返るとサナが手に持ったナイフで気絶しているデミオークの首を突いていた。
緑色の光の粒子になって消えていくデミオーク。
パーティー扱いになっているのかサナが所得した経験値もログとして視界に流れる。
ポイントは20ポイントと私と同じポイントが入っているようだ。
サナからすればデミオークは6レベル上だからボーナスポイントを期待したが、パーティー内のより高いレベルの方に合わせられるのだろうか?
攻撃した相手の中で一番レベルが高い者に合わせられてるのかもしれないが、どっちにしろパワーレベリングは無理っぽい。
ただ、サナの経験値ゲージ的にもうすぐレベルは上がりそうではある。
「サナ、残り2体もお願いしていい?」
「はい!」
ひどく真面目な顔でそう答えるとサナはさらに隣のデミオークにとどめを差す。
お、上がるか?
「ご主人様、その、顔から降りていただかないと怪我させてしまうかもしれないです。」
「あ、ごめんごめん。」
ドロップキックを決めて顔面に着地したままだったのを思い出し、デミオークの顔面から降りる。
「えい!」
手慣れた様子でトドメを差すサナ。
「サナはこういう戦いの経験あるの?」
「はい、地元にもこのような迷宮はありますし、狩りもしますから一通りは出来る方だと思います。」
おお、これは心強い。
「私、迷宮初めてだから経験者のサナがいるのは頼もしいわ。」
「えへへ…あっ!」
照れくさそうに笑うサナが急にビクンと跳ねる。
「どうしたの?」
「あたし、レベル上がったみたいです。」
あー、ちゃんとレベルという概念あるんだこの世界。
キーワード回収まで相当かかりそうです。
長い目で見ていただけると幸いです。