第一六八話 「持病」
「はい、確かにお預かりいたしました。」
「よろしくお願いします。」
「なにもかも、お任せですいません。」
丁度受付で用事を済ませたところでサオリさんが戻ってきた。
「いえ、いいんですよ。奥さんの方の手続きは終わりましたか?」
「ええ、滞りなく。こちらの迷宮でもカッパーの探索者扱いをしていただけることになりました。」
朝、私が起きた時にはもうサオリさんが故郷あての手紙を書き終わっていたので、それの発送とギルドから借りていたレターセット一式の返却をするために、サオリさんと一緒に探索者ギルドまで来ていた。
二人で待っている必要はないので、私が手続きをしている間、サオリさんには探索者ギルドの登録をしに行って貰っていたのだが、そちらも無事手続きが終了したようだ。
昨日の話の中で、長引いている探索の旅の路銀稼ぎにサオリさんも別の街で探索者として活動していた事が話題に出た。
なんでも、サナを探す魔法が一週間に1度しか使えないため、時間調節も兼ねての事だったそうな。
その時に教えてもらったのだが、各街での探索者ギルドのランクについては、迷宮管理公社のバック。つまり迷宮の所属国が一緒であれば引き継げるらしい。
細かい納品履歴や依頼達成履歴も引き継ぐとなると結構時間もお金もかかるそうだが、ランクだけなら簡単な申請で引き継げるそうな。
時計の文字盤のように配置されている十二新興街だと、8時の位置にあるこの『エグザルの街』から11時の位置にある『イノラの街』までが同じ所属国で、同じ様に1時の位置にある『ウルーシの街』から4時の位置にある『タツルギの街』が別の同じ所属国、5時の位置にある『ミスネルの街』から7時の位置にある『ヒツシプの街』までが更に別の同じ所属国だとミツキにも教えて貰った。
12時の位置にある『ネネの街』については、これら3国の何処にも所属しておらず、中央に位置する大聖神国街と同じ、大教会の直轄地だとのこと。
この辺りは過去の経緯や迷宮の利権も含めて色々と複雑らしい。
ともあれ、サオリさんが同じカッパーなのも、今後旅をするに当たってイノラの街までは現在のランクを使い回せるのも朗報だった。
いや基本的には淫魔法【ラブホテル】のショートカット機能を使ってこのエグザルの街を拠点にするつもりではあるのだが、何かあったときの保険として、この情報はありがたい。
「それでは、そろそろ部屋に戻りますか。」
「はい。あぁ、里に手紙も出せたし、一段落してホッとしました。」
「お疲れ様でした。でも、気が抜けるとガクッと疲労が来ますから気をつけてください。」
「そうですねぇ。」
そんな話をしながらラブホテルの部屋まで戻って来ると、すでに朝食の準備が整っていた。
白いご飯に、ネギのお味噌汁、ネギと鳥肉の炒めものに白菜風の野菜のおひたし、あとは数種のお漬物。
昨日の晩ごはんの材料の残りを使いつつも、いかにも朝ごはん、という感じだ。
こういうのを作れるのは、お店の料理とは別の料理スキルという感じがする。
安心させるようなお味噌汁の香りで表情が緩んでしまう。
「おかえりなさい。お父さん、お母さん。」
「ちょうどいいタイミングッスねー。」
▽▽▽▽▽
「…痛っ…。」
「お母さん大丈夫?いつもの腹病み?」
ミツキと二人で朝食の食器洗いを終わらせ、カウンターから戻ると、お腹を抑えて蹲っているサオリさんと、それを心配そうに見ているサナがいた。
「ママさん、大丈夫ッスか?」
「ええ、持病だから大丈夫。こうして回復魔法をかければ…」
お腹を押さえているサオリさんの手が白く光り、筆字を思わすような赤い紋様がその光の中を踊る。
「…痛みは治まるわ。」
逆にいうと回復魔法でも治らない病なのか。
というか、サオリさん、回復魔法使えるんだな。
「わたしは元々、『僧兵』という職業だったので、少々の神聖魔法が使えるんですよ。」
思っていた事が顔に出ていたのか、サオリさんにそう説明された。
回復系が増えるのはパーティーにとっては良いことだが、それよりもサオリさんの体調が心配だ。
「お父さん、お母さんの病気を治すことって出来ませんか?」
「え?」
サオリさんはサナのその言葉に戸惑っている。
「ママさん、パパはお医者さんみたいな事も出来るんスよ。」
なぜか得意げにミツキがそう説明する。
「そうだな、心配だし一度診てみよう。」
そういって、淫スキル【性病検査】でサオリさんを鑑定する。
ステータス画面の中の色々な情報や病状が並ぶ中、私の目を奪ったのは何よりも
余命:149日
の文字だった。
サナです。
昔からお母さんはお腹痛くなる持病を持ってたけど、これを機に良くなるといいな。
次回、第一六九話 「余命」
お父さんならきっと治せるだろうし。




