第一六七話 「娯楽」
「パパ。お願いがあるッス…。」
ん、ミツキのうさ耳を軽く甘噛みした後、唇にお休みのキスをした。
「ん。嬉しいけど、そうじゃないッス。」
「え?どうした?」
腕枕で一緒に寝ているミツキは思いつめたような顔をしている。
「あの、その、ご主人様の格好になって欲しいッス。」
「あー。」
サナとサオリさんを見て自分の母親を思い出してしまったのだろう。
淫魔の身体の私は声や身体つきがミツキの母親に少し似ていると前に言ってたっけ。
「いいよ。」
淫スキル【淫魔】で女の身体になり、ミツキを抱きしめる。
「今晩はこのまま甘えて寝ていいよ。」
「ありがとうございます。ご主人様…。」
▽▽▽▽▽
「そろそろ起きてください。」
ユサユサと布団の上から肩を揺すられる。
うー、まだ眠い。
昨日は結構飲みすぎたみたいだ。
もう少し寝ていたいので、その揺らしてくる手を取り引き寄せ、ベッドに抱きしめるように寝かしつける。
あれ?声からサナだと思ったけどこの身体つきはミツキ?
いや、ミツキにしては柔らかい。
………やらかした気がする。
種族特性【性病破棄】をオンにして毒扱いのアルコールを一気に抜いて正気に戻る。
というか、眠気もすっ飛んだ。
「…おはようございます。奥さん。」
「おはようございます。えーと、女の人の時はレインさん。で良かったんですよね。」
鼻が触れ合うような距離でサオリさんが微笑んでる。
「すいません、寝ぼけてました。」
「今は女同士だから大丈夫ですよ。」
そういって、なぜか頭を撫でてくれた。
「ご主人様、お風呂入れるッスよー。」
「あ、ありがとう。すいません、ちょっと行ってきます。」
「はい。」
非常に気まずいので、ベッドから飛び起き、風呂場へ向かう。
途中、ミツキに感謝を述べて頭を撫で、脱衣所に入った。
▽▽▽▽▽
「で、なんでミツキも一緒に?」
「だって、元々アタシが入るのにお湯張り直してたんスもの。」
大きな湯船に手足を伸ばして入っている私を座椅子にするような感じで、内側にミツキがお湯に浸かっている。
久しぶりに淫魔の身体で寝たからか熟睡まで出来なかった感じがするので、風呂場に入った瞬間、種族特性【トランスセクシュアル】で男の身体に戻っている。
なんだかんだでこの方が楽だ。
具体的には腕のポジショニングとかが。
逆にいうと足のポジショニングは身体の柔らかさと挟まるものがない関係で淫魔の身体の方が楽なのだが。
「パパ、身体洗うから、こっち座って欲しいッス。」
「はいはい。」
いつものように楽しそうに身体を洗われる。
『パパ洗い』や『お父さん洗い』は二人にとって娯楽の一部のようだ。
いつも交替で『娘さん洗い』もすることなるのだが、実際やってみるとこれが楽しい。
性的にという楽しさじゃなく、愛情表現の一部的な楽しさだ。
洗っても洗わられても気持ちいいというか、心地いいというか。
じゃれ合いの一部といった感じで、アットホームな雰囲気になる。
いや、人に見られたら絶対そんな感想は返ってこないのは重々承知なんだが。
「あれ?パパ、今日は反応良すぎじゃないッスか?」
ミツキの目線と手元を追う。
あ。
そういや、昨日は珍しく1度も『レベル上げ』をしてなかった。
そのせいか、スキル【絶倫】ランク3さんの主張が激しくなっている。
アットホーム何処行った?
思えば爛れた生活というつもりはないが、毎日の『レベル上げ』が習慣づいてしまっていたのは否めない。
そう考えている間も丁寧に洗い続けているミツキ。
「えーと、パパ…」
「外にサオリさんいるんだから、しないよ。」
「えー。」
えーじゃない。
その後、ミツキと身体を洗うのを交替して泡を流し、また軽く湯船に浸かりながら不満そうなミツキをキスで誤魔化した後、風呂場を後にした。
ミツキッス。
サナちーがママさんにかかりっきりなので、パパと二人の時間が増えて嬉しいッス。
たまにはいいッスよね?
次回、第一六八話 「持病」
でもラブラブできないのは不満ッスー。




