第一六一話 「ニット」
「お風呂に続いて、ご飯までご馳走になってしまって…。」
「いえ、これくらいいいですよ。」
「お母さん、この街なら探索者としてお金稼ぐこともできるよ。手持ち心許ないんでしょ?」
「あ、それ、おすすめッス。パパと一緒なら大丈夫ッスよー。」
「ずいぶん信頼厚いんですねぇ。」
「あはは…」
今はサオリさんの着替えを買いに西区に向かっている。
そんな服まで…と、遠慮はされたものの、それなりに洗濯や裁縫などで手入れはしていただろうが、何ヶ月も続けて着古した服は見ていて痛々しい。
「そうね、こうしてレンさんのお世話になり続けるのも心苦しいですし、探索者ギルドで手紙の依頼を出したら、少し路銀稼ぎをさせていただこうかしら?」
「うんうん。」
「それがいいと思うッス。装備もアタシ達が使っているのがあるッスから大丈夫ッスよー。」
なんかサナとミツキはこの街から離れたくない様子だ。
資料室でのミツキの話ではないが、離れ離れになる可能性があるからだろう。
「そういえば、鎖帷子が前の街で限界を迎えたので新調しなきゃ…。」
鎖帷子か、防御力アップにはいいな。
「良ければそれも帰りに買っちゃいましょう。一つあれば魔法で使い回せますし。」
「え?そんな、あんなに高くて重い物…。」
「値段はともかく重さはなんとかなりますし、必要経費ですから。」
「…すいません、働いて返しますのでお願いします。」
鎖帷子はサナもミツキも筋力のステータスが低めなので前は見送っていたが、今はレベルが上がっている上に、淫魔法【コスチュームプレイ】の効果で魔法の防具扱いになって軽くなるので大丈夫だろう。
「どっちみち、帰り道にしますね。さて、着きました。」
そんな話をしているうちに婦人服店に着いた。
サナの服を買った子供服専門店やミツキの服を買ったティーンズ用専門店の並びにあったので分かりやすい。
ひょっとしたら同系列店なのかもしれない。
「あとは二人に任せたよ。」
「はい!」
「了解ッス!」
「え?ええっ?」
二人に腕を組まれながら困惑気味に店の中に連行されるサオリさんがちょっと可愛い。
▽▽▽▽▽
『お父さん、ちょっと来てー。』
『2着に絞ったので見て欲しいッス。』
結構な時間がかかったものの、二人から念話が来たので店の中へと戻る。
子ども用の服屋と違って男の居場所がない感じの店だったのだ。
黒のハイネックノースリーブニットに白のハイウエストワイドパンツ。
それに同じく白系の丈の短いカーディガンを羽織っているサオリさん。
色やフォルムはなんとなく最初に着ていた僧兵の服のイメージもあるが、結構身体のラインが出ており、普通の女子大生かどっかのお嬢様っぽい。
これ童貞死んじゃう系の服じゃないのかなぁ。
「年甲斐もなく、こんな格好ですが、どう…でしょうか?」
「お似合いですよ。」
こんなの直球で返すしかない。
「パパの昨日の服をイメージしてみたッスよー。」
「気温に合わせて変えれるように上着を考えてみました。」
「うん、いいと思う。」
「それじゃ、これは決定ッスね。」
「じゃ、お母さん、次いこ?」
「え、ええ。」
▽▽▽▽▽
「ちょっと胸元空いていて恥ずかしいです…。」
鎖骨が丸見えになるほどの深いVネックの長袖ニットは淡いグリーン系で、それにデニムのロングタイトスカートを合わしている。
シンプルだが、スタイルの良さが際立つコーデだ。
人妻味が強い。
いや、人妻だな。
と、いうか、サナとミツキに私がニット好きだと思われているっぽい。
いや、嫌いではないけども。
ぶっちゃけ好きだけども。
ニットが嫌いな男がいるだろうか、いやいない(反語)
「今度はなんとなくあたし達の服に合わせてみました。」
「ママさんスタイルいいから何着ても似合うッスね。」
「ちょっと若々しすぎないかしら…。」
「いえ、こちらもお似合いですよ。先程の服とどっちかをこの店で着ていきましょう。」
「ええっ?!」
結局サオリさんはVネックの方の服を着ることにしたようだ。
と、いうのも、この後、時間的に例のパンケーキ屋に寄るという話になったからだ。
食べ慣れない料理なので白系の服じゃ無いほうがいいと二人に説得されていた。
脱いだ服や下着類も含めて買った服を包んで貰ったので、受け取ってバックパック経由でメニューのアイテム欄に仕舞う。
受け取った瞬間、ほのかに体温と香りを感じてしまったのは秘密だ。
いや、淫魔法【コスチュームプレイ】で出した服なので、仕舞った瞬間消えてしまうのだが。
サナです。
お母さんの背だと色んな種類の服が着れるので選ぶの大変でした。
服屋の店員さんって凄いですね。
次回、第一六二話 「買い出し」
ぱんけーき!ぱんけーき!




