第一四七話 「息抜き」
「はい、じゃあこれ10人分で金貨1枚ねぇ。」
カレルラから性病の初期症状組の治療費を受け取る。
「はい、確かに。」
「月一くらいでいいから定期的に診てくれると助かるんだけど、どうかしらぁ?」
「ひと月後なら、たぶんサナの故郷に帰っていると思うので無理だと思います。」
「うーん、その後、こっちに帰ってきたりはしないのかしらぁ?」
実際のところサナの故郷に戻るプランさえまだ決まってないので、その後どうするかも、もちろん未定だ。
今となっては旅費も十分あるしそろそろ真面目に考えなくては。
「まだ全然そこまで考えてはいませんが、頭には入れておきますよ。」
「そう?じゃぁ、機会があったらよろしくねぇ。」
「はい。あ、そういえば、カレルラさん、ちょっと聞きたいことが…」
▽▽▽▽▽
「二人ともお待たせ。」
「あらセンセ、今日は早いのね。」
「先生、昨日はお楽しみだったんだって?」
「センセー、たまには遊びに来てきてよー」
はいはいはい、近い近い散った散った。
娼館の食堂に戻るとまたサナとミツキが娼館のお姉さん方に囲まれていた。
「パパ、おかえりッス!」
「お疲れ様です。お父さん。」
なんかミツキの顔が赤いような気がするので、またなにか教わってたのだろう。
「それじゃ、そろそろ行こうか。皆さん、これで失礼しますが、身体大事にしてくださいね。」
それは私達にじゃなくて客に言って欲しいわね。とか茶々を入れられたが、みんな快く送ってくれた。
「たまに遊びに来てねー。」
「はい。」
「はいッス!」
え?二人が娼館に遊びに来るの?
「お姉さん方、差し入れ喜んでくれましたよ。」
サナは、いつものシンプルな七分丈の淡いグリーンのシャツに膝上丈のカーキのキュロットスカートで、可愛らしい雰囲気だ。
ミツキが小麦色の肌なせいで対比してしまう部分もあるが、サナの足は抜けるように白く、人形のように美しい。
今朝は久しぶりに(というほどではないのだが)サナのご飯での朝食だったのと、お昼用のお弁当を作るということだったので、先日お姉さん方に何か教わったならお礼になにか差し入れては?と提案したのだった。
「で、パパ、今日はどこに行くッスか?」
一方、今日のミツキはデニムのショートパンツに白いタイトなTシャツ、その上に赤のカーディガンという出で立ちだ。
先日、店で買った服だが、やっとパパに見せられると朝喜んでいた。
ベースはミツキのスポーティーな身体のラインが強調される服だが、カーディガンを羽織ることによって、落ち着いた雰囲気に収まっている。
当然、めっちゃ褒めた。
改めて見ると、健康的な足のラインが美しいと思うほどに魅力的だ。
「それは良かった。カレルラさんに良いところを紹介してもらったから、今日はそこに行ってみよう。」
「はい。」
「はいッス!」
▽▽▽▽▽
「牧場ッスね!」
「あたし、初めてです。」
「たまには日の当たる広い場所で過ごすのもいいと思ってね。
あと、乳搾り体験やバターづくり体験もできるそうだよ?」
「バター!やってみたいです。」
「搾りたての牛乳って美味しいッスよねー。楽しみッス。」
二人を遊びに行かせる場所に悩んだ挙げ句、結局、カレルラに相談して教えて貰ったのは、この観光牧場だった。
エグザルの街の西門からすぐの所にある牧場で、予約が必要なので今回は使わないがコテージで宿泊もできるらしい。
奴隷上がりで普段も迷宮ばかり入っているなら、広い日の当たる場所がいいんじゃないのぉ?とのアドバイスだったが、もうすでに二人のテンションが高いところを見ると当たりだったようだ。
しばらく広い牧場を見学した後、乳搾りを体験し、その搾りたての牛乳を味わったり、同じくその牛乳を使ってのバターづくりなど、ワイワイやっているうちに、あっという間に昼時を過ぎてしまった。
今は牧場にある東屋の下で、お弁当を広げ、遅めの昼食を取ろうとしているところで、今日のお弁当はサナとミツキの合作だそうなので楽しみだ。
サナです。
バターってあんな風に作るんですね。
搾りたての牛乳も美味しかったし、凄い楽しいです!
次回、第一四八話 「相談」
絶対お父さん喜んでくれるから大丈夫だよ、ミツキちゃん。




