第一三六話 「卵」
休憩のため、迷宮内の扉経由でラブホテルの部屋に戻ってきている。
サナが電気ポットでお湯を沸かし、部屋に備え付けのティーバッグでお茶を入れてくれた。
三人とも革鎧も脱いで、ゆったりとしており、私の方は、それに加え男の身体にも戻って手足を伸ばしているところだ。
「眠りの魔術か魔法とかあると、もっと楽かもしれないッスね。」
ミツキが紅茶をチビチビ飲みながら、そう話始めた。
「縛り上げる魔法より、抵抗されて引きちぎられないない分、落下距離は稼げそうだな。使い方によってはリンクも防げそうだし。」
いつものパターンだと、エロいキーワードとかでまた覚えそうだけども…。
眠り…睡眠………、夜這いじゃなくて、寝ている最中に悪戯するのはなんだったっけ?
>淫魔法【睡眠姦】を習得
おー、悪戯で済んでないが、それそれ。
「それっぽい魔法があるから、どっちかで試してみてもいい?」
「じゃ、あたしにどうぞ。」
サナが持っていた湯呑をテーブルの上に置いて、ベッドの方に座った。
「では、いくよ。」
「はい。」
淫魔法【睡眠姦】を使った途端、サナの目がトロンとしてきて、欠伸をすると、そのまま横になって寝てしまった。
視覚にサブウインドみたいなものが浮かび、それには1:35と表示されている。
「ミツキ、試しに起こしてみて。」
「ハイッス!サナちー、起きてー。」
ミツキはユサユサとサナの身体を揺するが起きる気配が無い。
「結構、深い眠りっぽいッスね。」
メニューからの魔法の説明を見ると、体力が減るクラスのダメージを受けるか、術者がキャンセルするかしないと、表示されている時間の分、寝続けるらしい。
「使えそうだな。魔法キャンセルして起こすよ。」
「あ、ちょっと待って欲しいッス!」
そういうとミツキがタタタタとこちらに近づいて来て、チュッと唇を奪っていった。
「今朝、出遅れた分、回収ッス…。」
唇に指をあて、照れながらも蠱惑的な笑みでミツキが微笑む。
地味にこの表情に弱い。
こちらの照れ隠しにワシワシと頭を撫でてやった。
淫魔法【睡眠姦】をキャンセルすると、サナがパチッと目を覚ます。
「気分はどうだい?」
「なんかスッキリしてます。爽やかな目覚めというか、なんか疲れも取れたような気もします。」
疲労回復効果もあるらしい。
「結構な勢いで揺すったけど起きなかったね。その辺りは感覚ある?」
「いえ、全然ないです。気が付いたら寝て、気が付いたら起きたみたいな感じです。」
「なるほど。」
今回以外にも色々使えそうだ。
射程の問題は勇者装備の『変成の腕輪』で効果を拡大すればなんとかなるけど、あれ馬鹿みたいに魔力食うからなぁ。
射程ギリギリでロープか何か召喚して、それを操作出来れば何とかなりそうな気もする。
先程と同じようにエロいキーワードを考えようと思ったが、もっと手っ取り早い方法がありそうなので試すことにしよう。
淫魔法【淫具召喚】を使用してみた。
「なんスか?そのピンクの小さい卵みたいなの。」
興味を持ったミツキに召喚したワイヤレスのピンクローターを投げて渡す。
「鳥の卵というより虫の卵っぽい形ッスよね。」
「紐の輪が尻尾みたい。お父さん、これは?」
「マッサージ機だよ。」
そういって、手元のリモコンのスイッチを入れると、ミツキの手の中でブブブブブッという音を立てて震えるローター。
「わっ!」
ミツキが驚いて手を放してしまう。
>淫魔法【淫具操作】を習得
やっぱり淫魔法【性病治療】を覚えた時みたいに、行為に成功しても魔法を習得できるようだ。
試しに使ってみると、本来の動きである振動はもとより、本体の動きも操作できるので歩かせるというか移動させることも出来るようだ。
「なんか小さい鼠みたいですね。」
サナがローターの紐の部分を鼠の尻尾を掴むように持って床から拾っている。
なんか背徳的な絵面だ。
「これをマッサージにって、どうやって使うんですか。」
キョトンと不思議そうな顔でこちらを見つめるサナ。
「肩とか、こったり疲れたりしているところに押し付けて、振動させると血行が良くなるんだよ。」
サナから受け取って自分の肩にあて、実際に振動させてみる。
「なるほど。」
「なるほどッス。」
アダルトグッズとはいえ、表向きの使い方はこういうことになっているはずなので嘘ではない。
本来の使い方は、そのうち気が向いたときにでも教えよう。
サナです。
なんかブルブルして可愛い卵ですね。
それにしても、なんかお父さんが味わい深い顔をしてこっちを見てるのが気になります。
次回、
輪になった紐がついてるので、身につけるお守りみたいにも見えますね。




