第一三四話 「初陣」
「それじゃぁ、今日は中期症状が5人ねぇ。残りの初期症状の10人は明日で終わるかしらぁ?」
「そうですね。たぶん大丈夫だと思います。時間はもっと早く来ても大丈夫ですか?」 「そうねぇ。あと1~2時間早く来ても大丈夫よぉ。」
「では、明日は早めにお伺いします。」
カレルラから治療代金の金貨1枚を受け取る。
明日は初期が10人だから同じく金貨1枚か。
「それじゃぁ、また明日、よろしくねぇ。」
応接室から出て、治療した娼婦たちの『センセ、治療のお礼に遊んでかない?』攻撃を受け流しながら娼館を後にする。
感覚的には11時過ぎくらいかな?
『二人とも、今どこだい?』
『パンケーキ屋さんに入ったところですー。』
『パパ、すっごい美味しそうな匂いするッスよ?』
念話で二人に話しかけると、すぐ返事が帰ってきた。
『お父さんも今向かうから、サナ、前と同じもの注文しておいて。』
『わかりましたー。』
『パパ、待ってるッスよー。』
娼館の近くの公園のトイレの扉から淫魔法【ラブホテル】経由で西門側の公衆トイレの扉までショートカットして、パンケーキ屋に向かう。
こっちから出る方が噴水公園の方から出るより若干近い。
そういえば隣町に向かう馬車の便はこの西門の方から出るんだな。
てっきり北門と南門から出るものだと思いこんでいた。
そんな事を考えながら歩いていると、しばらくして前にも行ったオープンテラスの店が見えてきた。
パンケーキ屋とはいったが、それが売りなだけで実際には軽食も出す喫茶店だ。
こちらに気づいたサナが小さく、さらにそれに気づいたミツキが大きく手を振っているので、小さく手を振り返す。
「お待たせ。」
「本当ッスよー。もうヨダレ出ちゃうかと思ったッス。」
「ミツキちゃん、パンケーキ好きなんだって。」
ミツキが左右に身体を振りながら、今か今かと待っている。
「ごめんごめん。じゃ、いただきます。」
「「いただきます。」」
▽▽▽▽▽
「いやー美味しかったッスねー。」
「バラの香りのクリームが良かったです。」
「前も思ったけどフレーバーティーも美味しいよな。あそこ。」
今は食休みということで、噴水公園のベンチで日向ぼっこをしている。
ここからなら迷宮までもショートカットできるので、多少ゆっくりしても大丈夫だろう。
「迷宮や建物を行ったり来たりだし、ショートカットも使うから、中々太陽にあたる機会が少ない気がするな。」
「そうですね。」
「日差しが暖かいッスー。」
噴水公園まで来ると探索者だけじゃなく、街の人や行商人、色々な人が行き交っているので、のんびりそれを見ているだけでも面白い。
あ、猫耳の亜人がいる。
「パパ、猫人族好きなんスか?」
思わず目で追ったところを目ざとくミツキに見つかった。
「いや、元の世界でも亜人、というか獣人といえば猫耳みたいなところあったから気になっただけだよ。」
「うさ耳はどうッスか?」
「バニーガールっていうのが一つのジャンルだな。うさ耳と白兎族の種族衣装に近い感じの服込みで。」
「へー。」
「お父さんの世界に鬼族はいるんですか?」
「そもそも亜人はいないんだよ。創作や伝説の中で亜人みたいな考え方があるくらいかな?
鬼は伝説の方だね。
サナみたいな可愛らしい鬼よりロマさんみたいなタイプの方がイメージに近いかな。」
そんなような話をしながら、少しの間日向ぼっこを楽しんだ。
▽▽▽▽▽
「アタシはサナちーの護衛とトドメ刺し係ッスね。どこを狙えばいいッスか?」
「基本首ね。ハーピーは鳥がベースなせいか骨が脆いみたいだから心臓狙ってもいいわよ。」
「どっちみちスプラッタッスね。」
「迷宮獣だと血は出ないから大丈夫。」
「スプラッタな方のハーピーは少し慣れてからにするよ。
サナ、今回は私も釣りに参加するから交代でやろうね。」
「はい。」
結局あの後、太陽の下の東区をミツキにも見せたいというのと、昨日買うのを見送った投擲用の槍を買うために歩いて探索者ギルドまで戻って来て、簡易宿泊所経由で今はハーピーの狩場までやってきている。
ミツキの初陣ということもあり、入念に打ち合わせをしているところだ。
残るハーピー達は13体。
最低レベルが20、最高レベルが35とレベルは高いが、今日中に狩り尽くせる数だろう。
とりあえず事故にだけ気をつけよう。
「サナです。」
「ミツキッス。」
「やっぱりミツキちゃんはパン系の方が好きなの?」
「いや、食べ慣れているだけで好き嫌いはないッスよ。
サナ姉さんの作るご飯はどれも美味しいッスから、その辺りは気を使わなくても大丈夫ッス。」
次回、「「緊縛の心得」」
「緊縛?」
「えーと、緊縛っていうのはッスね…」




