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第一三二話 「川の字」


 意外と、というのも変な話しだが、その後も別段エロい展開になることもなく、昨晩のサナのリクエストどおり三人でベッドに横になった。


 右肩にサナの頭が、左肩にミツキの頭が乗っているような形で寄り添った川の字だ。

 それぞれの腕で二人の背中というか肩を抱いている。


 「男の身体だと、やっぱりちょっと狭くない?」

 「狭くないです。」


 サナに即答される。

 いや、確かにサナの身体が小さい分、普通に三人寝るよりは余裕があるけれども。


 「アタシはパパでもご主人様でも、どちらでもいいッスけど、今日はやっぱりパパと寝たいッスね。」

 ミツキもそう答える。

 結局ミツキもサナと同じく淫魔の身体の方の私を『ご主人様』と呼ぶことにしたらしい。


 いや二人がいいなら構わないんだけども。

 どうも最近、二人がかりで襲われているせいか、ちょっと身構えてしまうというか、そういう方向に過敏になっているような気がする。


 ただ今日は温泉効果もあるのか、まったりとしていて必要以上にエロい方向に行かず、わりとまともな家族らしい距離感になっているような気がする。

 問題があるとすれば、三人ともその『わりとまともな家族らしい距離感』とやらを知らない事だが。


 「明日は早くから動く予定だから、今日は早く寝ようね。」

 一応、そう釘を刺しておく。


 ちょいちょいと、サナに頬を突かれたので、そちらを振り向くと、チュッと唇を奪われた。

 「おやすみなさい、お父さん。」

 いたずらが成功した子どもの笑顔でサナが微笑んでいる。


 「おやすみ、サナ。明日もよろしくね。」

 そういって、サナの両角に口づけると、今度は後ろから首の辺りを突かれる。


 振り返ると今度はミツキにも唇を奪われた。

 「パパ、おやすみッス。明日はアタシも迷宮頑張るッス。」

 「おやすみ、ミツキ。怪我のないように気をつけようね。」

 照れた顔をしているサナのうさ耳を甘噛しながら、そう答える。


 二人にギュッとしがみつかれ、二人の温もりと愛しさに身を包まれながらも眠りについた。


 と、言いたいところだが、二人の体温はともかく、その温められた二人の身体から香る甘い蠱惑的な女の子の体臭が鼻をくすぐり、すぐ眠ってしまった二人を尻目に、眠りにつくまでには結構な時間がかかった。



▽▽▽▽▽



 眠りが浅かったのか三人の中では一番最初に目が覚めてしまったようだ。


 結局、一晩中抱きまくら代わりにされてしまっていた様子で、身体が接触している部分がお互いに軽く汗ばんでおり、身動きするたびに布団の中から漏れてくる女の子の香りにちょっとクラっとする。

 朝の生理現象も二人に見られたら誤解されるくらいに元気だ。


 目の前には安らかな顔で眠るサナの顔が、そしてその反対側には、気が抜けた顔で眠るミツキの顔がある。

 朝日を反射してかつややかに光るサナの桜色の唇に思わず目が吸い込まれてしまう。


 チュ


 そっと起こさないように二人の頭から両腕を抜き、ベッドを抜け出すとミツキの頬にも軽く口付けをして朝風呂ならぬ朝温泉へと向かった。


 元々朝風呂の習慣があるのだが、それが温泉となればまたそれは格別だ。

 浴槽に浸かると、昨日の晩とは反対に窓側を見るように浴槽に寄りかかり、両手両足を伸ばして大の字でくつろぐ。


 なんか久しぶりにゆったりとした朝を迎えているような気がする。

 サナが発情期だったのもあるけど、しばらく爛れた朝が続いたしな。


 両手でお湯を掬って顔を擦り、最後に淫スキル【淫魔】と種族特性【トランスセクシュアル】を繰り返し、外見をリセットして身支度を整える。


 とはいっても、温泉で身体が暖まっているので、上に来ているのはバスローブ1枚だ。

 部屋に戻りソファーに腰掛け、冷蔵庫から出したミネラルウォーターを飲んでいると、サナが丁度目を覚ましたようだ。


 目をつむったまま、元々私が寝ていた場所を右手で、パンパンパンと探っている。

 ちょっとカワイイ。


 そこに居ないと気づいたのか、寝ぼけまなこで周りをキョロキョロしているしているサナと目があった。


 そっと人差し指を唇にあて、静かにというジェスチャーをしたあと、手招きしてソファーに呼び寄せると、サナは猫のようにするりとベッドを抜け出し、ソファーの上、そして私の膝の上に向かい合うように乗ってきた。


 「(おはよう、サナ)」

 小さな声でそう話しかけて、唇にキスをすると、サナは嬉しそうに

 「(おはようございます、お父さん)」

 同じ様に小声で挨拶をして、同じように唇にキスをしてきた。


 二人顔を合わせて、声を殺して笑い合う。


 サナが無言でペットボトルを指差した後、自分の唇をちょんちょんと人差し指で突いたので、口移しでミネラルウォーターを飲ませてやる。


 唇を合わせたまま、コクコクと音を立ててそれを飲み干すサナ。

 唇を離した瞬間、ぷはっと小さな息を立てて、またいたずらが成功した子どものような笑顔で笑うサナが可愛くて、ついつい頭を撫でながら抱きしめてしまう。


 「…あのー、そろそろアタシも起きてもいいッスか?」

 ミツキの言葉に驚いてビクッと跳ねてしまうところまで可愛い。



 ミツキッス!

 二人がラブラブしているのを朝から目撃してしまったッス。

 アタシにはまだああいう感じは恥ずかしくって無理ッスねー。


 次回、第一三三話 「買い物」


 でも、ちょっと憧れるッス。

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