第十二話 「笑顔」
今回は第十一話の主人公視点のお話です。
「話がちょっとズレちゃったけど、私みたいにここに運ばれた記憶が無いのなら貴族が召喚魔法を使うようなことを言っていたし、そのあとに膨大な魔力が動いていたから召喚されたのはレインさん自身だと思います。あたしはその時に気絶しちゃったから見てはいないですけど…」
はい、異世界召喚確定。
しかも『人族の王族が行う勇者召喚もこの一種』って、何してくれてるんだ王子様。
確証はないが、サナ運ばれる→サキュバス召喚完了→サナ気絶→サキュバス食い散らかす→私召喚完了→エロバトル→私勝利→サキュバスを吸収or融合って感じなのだろう。
魔法の理屈はよく分からないがロリショタサキュバス乱交パーティーのついでに召喚された可哀想な私。
っていうかサキュバスとの「戦い」に負けてたら私も王子様たちのように死んでたのか。
とにかくサキュバス召喚と勇者召喚が混線(?)したのか出力をミスったのかそんな感じなんだろう。
勇者召喚についての情報も欲しいが今はそれは横に置いておいて、そんなヤバいパーティーなら「後片付け」をどうされるか分かったもんじゃない。
いや、この世界に奴隷制度があるなら良くてサナと同じように奴隷にされるか最悪殺されて闇に葬られるな。
それにしてもこんなに可愛い子が何故奴隷なんかに……いや、色々あるのだろう。
だが、「食う」ためだけに「奴隷を買う」という世界観が自称女尊男卑主義者としては面白くない。
そういう世界か時代だからしょうがないといえばしょうがないのだろうが、面白くないものは面白くない。
よし、一緒に逃げよう。
いや逃がそう。
普通に考えて逃げるなら自分一人の方が成功率は高い。
だが、それをしてしまってはたぶん私は自分を許せない。
不安そうに部屋の中をキョロキョロしているサナを見つめ
「一緒に逃げましょう。ここから。」
と、宣言した。
びっくりしたようなサナに向かって指を立てながら言葉を続ける。
「理由一つ目。サナも私も、たぶん執事らしき少年も貴族たちの慰み者にされるためにここに呼ばれたのだと思う。」
「…はい。」
「私はそういう目に合いたくないし、サナにも合わせたくない。」
「でもあたし…」
サナの言葉を遮るように立てる指を追加して話を続ける。
「二つ目。執事君も含めてそいつらは今ここに居ないけど、相手がそいつらだけとは限らない。もし仲間を連れて来たら?それこそ私たちがどういう扱いを受けるか想像したくもないわ。」
サナはうつむいてしまう。
「三つ目。何よりも私は貴方を助けたい。女の子はもっと明るい未来があるべきよ。騙されたと思って助けられなさい。お姉さん、たまにしか嘘つかないから。」
「たまには嘘つくんですか?」
「嘘をつかずに騙す方が多いかもね。」
「それじゃまるで信用できないじゃないですか。」
そういってサナはクスクスと笑う。
うん、やはり女の子は笑い顔が一番可愛らしい。
キーワード回収まで相当かかりそうです。
長い目で見ていただけると幸いです。




