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第一二一話 「不安」


 「そんなに貰えたんスか?!」

 「良くも悪くも症状の重い患者が多かったからね。」

 「えーと、これであと、どれくらい必要なんでしょう?」


 昼食も終わり、淫魔法【ウェット&メッシー】で出したケーキを摘みながら午前中の報告を二人にしている。


 ちなみに皿洗いは3人共同でさっさと済ませてしまった。

 ホテル備え付けのティッシュで粗々の汚れを拭き取ってから、同じく淫魔法【ウェット&メッシー】で温水を出して洗って魔法をキャンセルすると乾燥の手間が省けるので時間が相当短縮できるのだ。


 「明日以降の治療で入る分や、貸切料金として預けてある分も考えたら、あと金貨3~4枚分ってとこかな?このペースなら明後日には必要な分が揃いそうだ。」


 「うー、二人が頑張ってくれてるのに、なにも出来なくって申し訳ないッス。」

 ミツキがそのうさ耳ごとショボンとしている。

 「外に出れるようになったらミツキちゃんも色々出来るようになるから大丈夫だよ。」

 そんなミツキをサナが励ましているのが微笑ましい。


 「そうッスね。うん、それまではせめてご奉仕頑張るッス!」


 まて。

 なぜそっちに言った。


 「うん!頑張ろう!」

 あれ?これもしかしてサナの入れ知恵?


 「いや、そんなに無理に頑張らなくてもいいんだよ?」

 「全然無理じゃ無いッス!むしろパパに何もお返しできない方がストレスッス。」

 「今はあたしもご飯つくったり、迷宮でお手伝い出来るようになったからそうでもないですけど、それまではずっと不安でしたよ?あたしの場合は発情のお世話までして貰ってましたし…。」


 「不安?」

 「はい。あたし必要じゃないんじゃないか?って、足手まといにしかなってないんじゃないか?負担にしかなってないんじゃないか?って不安です。」

 「そんな…」

 サナがいなければ今の自分はないくらい精神的に依存していたつもりだったが。


 「今アタシが丁度そんな気持ちッス。金貨何十枚も使わせて、ご飯の用意までしてもらって、気も使って貰って、その割に何も出来なくって…。」

 ミツキが申し訳なさそうな顔でサナに続いた。


 「でも、こんなあたしでも、いえ、あたし達でも、その、頑張ればお父さんは喜んでくれるし、あの、求めてくれると嬉しいし、一つになっていると安心出来るんです。」


 「パパの事、信用してないわけじゃないんスよ?頭では分かってるんス。でも感情がついてかないんス。でも、その、身体を重ねている時は、必要とされている。って実感できるんスよ。」


 「二人の気持ちは分かった。でも、」

 「「でも?」」

 不安そうな4つの目に見つめられる。


 「ほどほどにして貰わないと、私が二人に溺れちゃうよ?

 まだミツキの身請け代金も残っているんだし、ちゃんと稼がなきゃ。

 それに一方的にされるより、その、サナとする時みたいなラブラブな感じの方が心が安らぐ。」


 自分の気持ちも伝えておかねば。と、恥を偲んでそう話したものの、しばらくの沈黙。


 「溺れて欲しいッス!」

 「ミツキちゃん!あたし頑張るから、お金揃ったら二人でらぶらぶでお父さん溺れさせちゃおう!」

 「サナ姉さん!アタシも頑張るッス!また色々教えて欲しいッス!」

 「うん!二人で頑張ろう!」


 おぅ、燃え上がってしまった。


 「でも今からは駄目だよ。」

 「「えー。」」

 えーじゃない。


 「私だってしたくないわけじゃないけど、さっきも言ったとおり、ちゃんとやることやってからじゃないと、何かあってミツキの身請けが出来ないとか、みんな嫌だろ?」


 「うん。」

 「ハイッス。」


 「サナ、まずは二人で迷宮に入って昨日の続きをしよう。何もなければ昨日よりは稼げるだろうから。

 ミツキは落ち着かないかもしれないけど、もう何日か辛抱してね。」


 「はい。」

 「分かったッス。…えーと、パパ、一つだけお願いしていいッスか?」


 「ん?いいよ、何?」

 「今、アタシすっごくパパにチューしたいッス。」

 「あ、あたしも。」

 サナも小さく手を上げている。


 「ちょっとだけだよ?」

 そう言った途端、二人にたかられ、左右それぞれの太ももに座って抱きつかれている。

 「あ、一つだけ言っておくけど。」

 不思議そうな顔で二人に見つめられる。


 「ちゃんと私も嬉しいからね。」

 これだけは誤解のないように伝えておきたかった。



 ミツキッス。

 アタシから見ると十分パパとサナちーは『レベル上げ』の時にラブラブしているように見えるんスけど、まだ上があるんスか?


 次回、第一二二話 「ヘルプ」

 …実は結構興味があるッス。ラブラブ…。


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