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第一一九話 「性病治療」


 「でぇ?サンプルとしてミサラを治療してみたとぉ?」

 黒いタイトなドレスをきたカレルラが呆れたような声でそういうと、いつものようにキセルで紫煙をくゆらせた。


 「それがぁ本当ならぁ、アンタそれだけで食っていけるわぁ。」

 「疑うようでしたらミサラさんを後で本職の医者にみて貰ってください。」

 「そうねぇ。」

 カレルラは応接室にいる黒服とミサラに声をかけると部屋から退席させた。

 どうやら本当に医者に見せにいったらしい。


 「それでは、今日は診断だけで良いですか?」

 「お願いするわぁ。見ての通り、今日はとりあえず8人よぉ。もしも診断が早く終わるようであれば、順次空いている子から呼び出すわぁ。」


 「わかりました。それでは診断を開始しますので、一人ずつ私の前に出てきてください。」

 スツールを座り直し、カレルラから視線を外すと、目の前に最初の一人が近寄ってきて着ているガウンを脱ごうとする。


 「いえ、脱がなくても結構です。」

 金髪碧眼とまではいかないが、目は明るい鳶色だが髪色も明るくメリハリのある身体つきなので、いわゆる人族に人気が出そうな娘だ。


 ただでさえこの応接室、女性が多くてフェロモンを思わす独特の匂いがするため、これ以上の刺激は私の身体によくない。


 淫スキル【性病検査】で【健康状態】を見ると、人族にも人気っぽいが性病にも大人気だ。

 性病のデパートな上に、不妊症(アッシャーマン症候群)まで付いている。


 アッシャーマン症候群ってなんだろう?と淫スキル【婦人科】の助けで解説を見ると、子宮壁が癒着した状態らしく、これも堕胎が原因でなるそうだ。

 気が滅入るなこれ。


 あまり詳しく説明しても分かりづらいし、突っ込まれても説明が面倒なので、単純に性病名と進行度だけを読み上げていこう。


 キャリアから初期症状までを初期、慢性状態になっているのを中期、直接または合併症によって死に至るレベルを重症と表現することにする。

 一応、不妊の件は要望外なので伏せておくことにした。



▽▽▽▽▽



 「まさか、この時間で予定の倍の人数を見るとは思わなかったわぁ。」

 またもや呆れた顔でカレルラにそう言われるが、読み上げなければ、実際にはもっと早く終わったはずだ。


 私が読み上げて、それを黒服がメモって、という段取りになってしまったので、私としては思ったよりかかった。という印象だ。


 もうすぐミサラが医者から戻ってくる時間とのことなので、治療サンプルとして、中期の患者と初期の患者の2名だけ残して、残りの治療と診断は明日にして退席して貰った。

 その残っている中期の患者がミサラと同じく早期梅毒第2期なので、今はバラ発疹と呼ばれる特徴的な症状が出ているのをカレルラに確認して貰っている。


 カレルラ曰く、そんな珍しいものじゃないわぁ。とのことだ。

 今日見た16名のうち、中期の患者が8名、初期症状までで収まっている患者が6名、キャリアで留まっている患者が2名。

 つまり全滅。

 重症の患者が居なかっただけマシなレベルだった。


 残りの4名、いやミサラが抜けるから現在仕事中の3名も似たようなものだろう。

 医療技術や衛生観念が発達していない夜のお店怖えー。


 私はこないだ習得した種族特性【性病無効】を持っているから大丈夫だが、夜遊びも命がけだな。

 いや、サナとミツキがいるので夜遊びする気もないんだが。


 「ただいまーもどりーましたー。」

 そんな事を考えている間に、ミサラと黒服が戻ってきた。


 喋り方がスローリーなミサラに代わって説明する黒服によると、確かに梅毒の症状は消えており、昨日の今日で治っていることに医者も頭を捻っていたとのことだった。


 「ふ~ん。間違いないみたいねぇ。この娘達もミサラみたいにすぐ治るのぉ?」

 「試してみますか?」

 「眼の前でやってみせてくれるというのなら、治療分は即金で払うわぁ。もちろんミサラの分もねぇ。」

 遠回しにまだイカサマか何かをやってるんじゃないかと言われているような気がする。


 とはいえ、私としても病状の中期と初期で淫魔法【性病治療】がどれくらい魔力を消費するかを確認しておかないと、一日何人を治せるかの見通しが立たないので、これは今日のうちに試しておきたい。

 淫魔の身体と違って魔力が潤沢ではないのだ。


 「では、早速。」

 まずは見た目でわかりやすい中期の患者から試す。

 淫魔法【性病治療】の後に淫魔法【精力回復】をかけ、再度淫スキル【性病検査】でチェックすると、ミサラの時の苦労はなんだったんだろうというくらい簡単に癒えた。


 淫魔法【性病治療】で手のひらの中にカプセル状に排出された病原体と異物はそのままメニューのアイテム欄に見えないようにしまっておく。


 続いて初期の患者も試してみる。

 やっぱり症状によって使用される魔力が違うようだ。

 消費される魔力もそれなりなので診断のように一気にとはいかないな。


 「本当に治るのねぇ。」

 中期の患者のバラ発疹が無くなっているのを確認したカレルラが感心している。


 「特殊な回復魔術を使っているのですが、魔力的に中期の患者だけなら6名、初期の患者だけなら10名が一日に治せる限界です。」

 カレルラに指示された黒服からミサラを含んだ中期の患者分二人分の治療費として大銀貨2枚、初期の患者一人分の治療費として大銀貨1枚の合計3枚を受け取りながら、そう説明する。


 「今日はあとどれくらい治せそうかしらぁ?」

 「中期だけなら4人、初期だけなら8人ってとこですね。」

 「まだ空いている中期の娘を4人呼び出してぇ。」

 即、カレルラが黒服に手配した。



 「サナです。」

 「ミツキッス。」

 「今日はお部屋静かだね。」

 「女の子たちが交代でパパの診察受けに行ってるせいっぽいッスねー。」


 次回、第一二○話 「鬼風」

 「ミツキちゃん、お昼なにか食べたいものある?」

 「え?お昼までアタシ向けでいいんスか?」


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