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第一一三話 「雛鳥」


 しばらくするとガラス張りになっている浴室の向こうにサナが現れた。

 わざわざシャワーでガラスのくもりをとってから、手を振っているので、こちらも振り返す。


 それにしても、あいかわらずサナは肌を隠さないな。

 サナの奥では泡だらけになっているミツキがいるので、先にサナが身体を洗ったのだろう。

 眠気が少し飛んだのか爽やかな顔をしている。


 あ、ミツキもこっちに気づいた。

 跳ねるように胸や股間を隠して、こちらに背を向ける。

 ミツキの方はまだまだ恥ずかしいらしい。


 羞恥心というより温泉のある地元で入浴習慣があるサナと、普段は身体を拭く程度のミツキとの習慣の差なんだろうなこれ。

 ミツキは昨日一緒に風呂入った時も、浴槽に使ったことは数えるほどしかないとかいってたし。


 ともあれ、そんな光景を酒飲みながら見ているっていうのはこれ、犯罪なんじゃないだろうか?捕まったりしないだろうか?とか思いながらもグラスをまた傾ける。


 ガラスの向こうではサナが浴槽を泡風呂にしつつミツキの泡を流している。

 泡が流れたミツキは逃げ込むように泡風呂に飛び込み、サナがそれに続いた。

 身体が隠れて安心したのかミツキは改めてこっちに向かって手を振ってるのでこちらも再度振りなおす。


 微妙に気まずいのだが、少しずつまたガラスがくもってきているので、もう少しの辛抱だ。

 浴室が湯気で包まれ、ガラスがくもって落ち着いたところにサナからの念話が届く。

 『お父さん、ちょっと来てー』

 『お父さんは一緒に入らないよ?3人は流石に狭いだろ。』

 『そうじゃなくてー来てー』

 今日のサナは積極的に甘えてくるな。

 うん、良い事だと思いながら浴室に向かう。


 「どうした?」

 と、浴室に入ると、二人並んで口を開けている。

 浴槽が円形なのもあって、鳥のヒナが餌をねだっているようにも見えるな。とか思っていると、サナが自分の口をちょいちょいと指さした。


 あー。

 サナの口に右手の人差し指と中指を入れ、その間から淫魔法【ウェット&メッシー】で冷水を出してやる。

 舌を使いながらもコクコクと喉を鳴らすサナ。

 いや、指からは舌使わなくても出るから。


 「なんか…エロいッスね?」

 そうね。


 「はい、ミツキもあーん。」

 「あ、あーん。」

 同じ様に左手でミツキにも冷水を出してやると、同じ様にして喉を鳴らした。

 いや、舌は真似しなくていいってば。


 「ね?美味しいでしょ?」

 「よくわかんないッスよ。」

 「えー。それはそうと、お酒飲む時は水分多く取ると悪酔いしないんだって。」

 「へーそうなんスかー?」


 なんか満足したらしいので、お酒入ってるんだからのぼせないようにとだけ声をかけてソファーに戻ろうとすると、もう一回、もう一回と両手を持ってせがまれたので、また口の中に出してやる。


 それぞれが両手で手を掴み、指先を咥えているので、水を飲ましているだけなのに、非常に非道徳的な光景だった。


 ソファーに戻り、しばらくグラスを傾けながら待っていると二人が風呂からバスローブ姿で戻ってきて、元の位置に座る。


 「おかえり。」

 「ただいまー」

 そういってサナが左腕に巻き付くようにタックルしてくる。

 ミツキも来るかな?と、思って右を見ると、なんかためらっているようなので、手に持っているグラスを置き、手をミツキに伸ばすと、ようやく恐る恐る抱きついてきた。

 「た、ただいまッス。」


 なんか色々と慣れないというか、ためらいがあるらしい。

 「えーと、サナがお父さんにしていることは、ミツキがパパに同じことやっても怒らないよ?」

 「ほ、本当ッスか?サナ姉さんもそうッスか?」

 「うん!一緒に甘えるの練習しよ?」


 サナは本当にいい子だな。

 巻き付かれている左手を抜き、サナの背中から巻き込むように抱きしめ、そのまま頭を撫でる。

 「えへへー。」

 「あ、ズルいッス。アタシもー。」

 そういってピトッとミツキもひっついてきたので、右手で同じ様に抱きしめる。

 風呂上がりの女の子の香りと温かさがダブルで来て、ちょっとクラっとなる。


 「温かくて気持ちいいんだけど、これじゃお父さんお酒飲めない。」

 そういうとミツキは残念そうに身体を起こすが、サナは左手で私のグラスを取ると右手を添えて口元に持って来たので、そのまま一口貰う。


 ミツキが、その手があったか!みたいな顔をしているが、いまさら戻りづらいらしく自分のグラスを取って傾けていた。

 「あ、冷たくて美味しい。」

 「風呂上がりだからなおさらだろ?」

 「そうッスねー。」


 「あたしももう少し飲もうかなー。」

 サナも腕の中から離れてグラスを手にとった。


 その後はいつもサナとやっているように、ツマミを食べさせあったりしながら酒を楽しんだ。

 最初ミツキは照れていたようだが、だんだん慣れてきたのか積極的にやりとりするようになったので、供給が二人になった私はちょっと食べ過ぎ感がある。



 ミツキッス。

 前に住んでたところも奴隷商のところでも、せいぜい濡れ布で身体を拭くか、良くて行水くらいだったので、この浴槽に入るってのには、いまだ慣れないッス。

 入っちゃえば気持ちいんスけどね。


 次回、第一一四話 「残金」

 慣れないといえば、こういうお互い食べさせ合う食事の仕方も慣れないッス。

 いや、嫌いじゃないッスよ?むしろ好きッス。嬉しいッス。

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