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第一○五話 「パパ洗い」


 ミツキの身体を洗い終わった頃には、当然治まって…などということは無く、未だ元気なままだ。


 サナの身体は女性らしいとも、こどもらしいともいえるような独特なシルエットが、エロさよりも美しさを感じてしまう。といった感じだが、ミツキの身体は、より女性らしい身体のラインと健康的で生命力に溢れている感じが同居した美しさだ。

 それゆえに、ちょっとした仕草で女を感じてしまう方向に天秤が傾いてしまう。


 要するにエロいのだ。

 本人にあまり自覚がないようなので尚更。


 「それじゃ、今度はいよいよパパを洗うッスよー。」

 ミツキの方はというと、緊張が解けてしまえばコミュニケーション自体は嫌いじゃない様子で、身体の触れ合いもその内に入るらしく、楽しそうにペタペタと触ってくる。


 「お手柔らかに頼むよ。」



▽▽▽▽▽



 「サナ姉さん!パパ洗い、無事完了したッス!」

 やりとげた顔でサナになぜか敬礼をしながら報告しているミツキ。


 いや、パパの方はあまり無事ではないのだ。

 ミツキのエロい身体を前にパパのパパを散々観察されたり、弄り回されたりで、さすがに結構いっぱいいっぱいだ。


 ミツキの方はというと、サナの耳に口を寄せ、なにか別の報告をしたかと思うと、料理を並べるのを手伝いに行っている。

 ちなみに服は私と同じく淫魔法【淫具召喚】で出した丈の長いバスローブだ。


 「お父さんもお疲れさまです。」

 「サナもいつも御飯ありがとうね。」

 座っている椅子の前にあるテーブルにおかずを並べにきたサナにそう声をかけ、黒髪の間から覗く桜色の二本の角それぞれにキスをする。


 「えへへ。あの、お父さん?」

 「ん?」

 「あたしも後で甘えさせてくださいね?」

 「もちろん。」

 満面の笑顔になったサナが頬にキスをして帰っていく。


 今回は風呂場をミツキと私が占領していたので、窓際の少し広くなったスペースをメインに調理をしているようだ。


▽▽▽▽▽


 目玉焼きには醤油だとか、塩と胡椒に醤油だとか、ガーリックパウダーかけるのも美味しいッスよ?みたいな話をしながら朝食を済ませた後、身支度を整え、軽く今後の打合せをした。


 娼館の部屋でミツキが一人でいる時は、ラブホテルの部屋での記憶が一時的に無くなること。

 そのため、向こうの部屋に戻った時、『淫魔の契り』の指輪の効果のうち、念話が出来ることを再説明するのと、もう一度念話を試すことになるが、ミツキは初めて聞く話だと思って説明を受け取ることを確認事項として念を押す。


 「奴隷への命令とかで無理やり聞かれることはまず無いとは思うけど、抜け落ちた記憶の齟齬とを埋めるためと、何かあった時に私に連絡ができるようにするための大事な作業だからそのつもりで聞いてね。」

 「わかったッス。」

 「えーと、じゃあ、この部屋で話したことを連想させるような事も、戻ったら言っちゃ駄目なんですね。」

 「そうだね。」


 打合せが終わり、娼館の部屋に戻って来た。

 さっそく念話ができる魔法の指輪をミツキに贈ったていで、念話機能の説明をした後、念話の練習もしてもらう。


 その後は今後の予定の確認だ。

 今日の予定としては、ミサラによるミツキの『進捗状況チェック』を済ませた後、ミツキは留守番、サナと私は迷宮で身請け金稼ぎだ。

 夕食までには戻ってくる予定だが、そこまでの間になるべく稼いでおきたいところ。

 ちなみに昼ご飯はミツキの分も含めてサナがつくってくれている。


 昼食の時に一回様子見に戻ってきてもいいな。


 あと、口には出さないが娼館の近くで出入りしても大丈夫なドアを探して、淫魔法【ラブホテル】によるショートカットを作っておきたいと思ってる。

 歓楽街内にある小さな公園に公衆トイレがあるので、そこを使わせてもらおう。


 この部屋でミツキに身体を洗われたことになっているので、アリバイとして浴場スペースの大きな水瓶から水を汲み出して減らしながらそんな事を考えていると娼館の部屋をノックする音が聞こえる。


 「起きてーますかー?入りーますよー。」

 この間が抜けた声はミサラだろう。

 思ったより来るの早かったな。


 「どうぞッス。」

 「おはようーございますー。」

 ミサラが挨拶をしてきたので、それぞれ挨拶を返す。


 「でー、水揚げはー終わりましたーかー?」

 「まだ身体を洗わせる練習と触りまでですね。まずは男の身体に慣れるところからかと思いまして。」

 身構えているミツキの代わりに答える。


 「なるほどー、好事家の人の中にはー最初にー手間をかける人もーいるとー聞いてますー。それじゃー、今日はー下のチェックはーしなくてもーいいですねー。」

 げ、そこまでチェックするつもりだったのか。

 下手に嘘つかなくて良かった。


 「とはいえー、あまりー時間をーかけないほうがーいいですよー。

 ミツキさんはー布類の取り替えとー洗い水のー補充をーしておいてーくださいねー。ではー。」

 そういってミサラはまたフラフラと帰って行った。


 「思ったよりガッツリとチェックするつもりだったんだな。」

 「サナちーに言われたとおりパパ洗いしておいて良かったかもッス。」

 「役に立ったのなら良かったです。ってミツキちゃん、それ言ったり思ったりしちゃ駄目。」

 三者三様の感想を漏らした後、予定どおり娼館を出て、歓楽街の公園のトイレのドア経由で再度ラブホテルに戻って来た。


 娼館を出てからというものの、ミツキの前では必要以上に甘えるのを我慢していたのかサナは私にべったりだ。

 皆で甘え方を覚えて行こうという話をミツキとした事を話したせいもあるのかもしれない。


 公園の公衆トイレの扉経由でラブホテルの部屋に戻ってきた後、戦闘用の着替えをしようと思っていたところに、サナがまたピトっとくっついて来た。

 もうちょっと甘えたいのかな?と思って抱き寄せたが、どうやら違うらしい。


 「パパ洗い?の話、ミツキちゃんから聞きましたけど

 …あの、お父さん辛くないですか?あの、いっぱい触られたみたいだけど。その、最後までしてないから…」

 鋭い。

 風呂上りにいっぱいいっぱいだったのを見抜かれていたようだ。


『甘えるといえば、パパも、もうちょっと欲望に正直になった方がいいと思うッス。サナちーもパパから求めてくれないのは自分の魅力がないせいかと悩んでいたッスよ?』

 思わず風呂場でのミツキの言葉が思い浮かぶ。



 サナです。

 なんか二人ともお風呂の後に距離が縮まった感じがして嬉しいです。

 でもお父さん、なんかちょっとえっちな雰囲気してる。


 次回、第一○六話 「嘘と失格」

 あたしも頑張ります!

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