表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

100/979

第九十九話 「お婆ちゃん」(あらすじ回 中編)


 「で、王子様達のお楽しみ会場が、この街の迷宮の正規の入り口以外から新迷宮に繋がる隠し部屋。

 ここは普段から使ってたみたいで、使い終わった玩具おもちゃは迷宮に捨てていた可能性が高いわ。


 ミツキが前に昔の迷宮周辺では女性を攫って犯して迷宮に捨てて食わせてた。って説明してくれたけど、それに近いことを王子様達は今でもやっていたってことね。」


 「それって大スキャンダルじゃないッスか?迷宮の不正利用だけでもかなりの大罪ッスよ?」

 「大スキャンダルね。その話はまた後でするとして、結局王子様の召喚魔法の失敗が原因でその部屋にいた者はベッドに隠れていたサナを残して全員死亡。死体は私が隠蔽していたわ。」


 「どうして隠したんですか?」

 神妙そうな顔をしてサナが質問してきた。

 「その死体を誰かに見られたら犯人は部屋に生き残っている私とサナのどちらかだと判断されると思ったから。

 鑑定系スキルのおかげで王子様と貴族の子息ということは分かったから、死体が発見されると大事件になると思ったし、そうなると二人とも闇から闇に葬られると思ったから。

 それから、死体を見てサナがショックを受けると思ったから。

 この三つが主な理由ね。」

 

 「あたしにそのことを教えてくれなかったのは何故ですか?」

 「その事を知っているだけで危険だからよ。サナの安全を確保するためだったとはいえ内緒にしていてごめんね。」

 「うー、それ言われちゃうと何も言えないじゃないですか…。」

 不満そうなサナの頭を一撫でする。

 

 「部屋に生き残った私たちは部屋を脱出しようとしたんだけど、サナの前の主人が、『その部屋を出るな』という『命令』をしていたので、サナは逃げられない。

 そこで私の魔法で隷属の魔法を上書きしてサナの持ち主を私に書き換えて脱出したのよ。」

 

 「それでサナちーはレインさんを『ご主人様』って呼ぶんスね。

 …ん?それって私も上書き可能なんスか?」

 「たぶん可能だけど、持ち主や管理者がはっきりしている奴隷にそれやると大騒ぎになりそうじゃない?良くても泥棒扱いでしょ?」


 「あー、そうッスね。無許可の隷属魔法も違法ですし、その判断は間違ってないと思うッス。」

 「とはいえ、いざとなったらミツキにも使うことは考えているから、安心してね。」

 「!はいッス。ありがとうございます。」

 

 「部屋を脱出後、私の取り戻した男の身体が義父に似ていることから、サナは私をお父さんと呼んでくれるようになり、私も妻とのこどもが生まれていればサナくらいの歳だったということもあって、今みたいに親子として過ごすようになったわ。」

 

 「男の身体を取り戻すって、えーと、それまでは今の女の身体だったのが、その後、勇者かサキュバスの力に覚醒して取り戻したって感じッスか?」

 「そういえば、ご主人様、不意に今まで使ってなかった魔法とか使いますよね?そうなんですか?」


 「大体あっていると思う。今考えるとサキュバスの能力が勇者の力でブーストされてるのかな?

 なにかのきっかけでいきなり能力が使えるようになるので、自分自身でも使える能力を把握しきれてないのよ。

 ちなみに運搬者ポーターのような力を使えるのも同じ理由ね。」

 

 ミツキはまだなにか考えているような顔をしているが、サナは心当たりがあるらしく納得したようだ。

 

 「あと、レインさん、じゃなくてパパさんの方は、サナちーくらいの歳の娘がいるように見えなかったッス。見た目からすると年齢差はせいぜい兄妹くらいッスよね?」

 ミツキが手を挙げて質問してきた。

 

 「このサキュバス、いや淫魔族の身体も男の身体も、この世界では20歳ね。サキュバスと混じったせいか、それとも食われたのかは未だわからないけど、元々の私の歳は倍の歳なのよ。だからサナどころかミツキくらいの歳の娘がいてもおかしくないのよ?

 あと、ちなみに妻とは死別で今は独り身よ。」

 

 「倍?!そうッスか。パパさん見た目よりもかなり色々と大人びていると思ったら、そういう訳だったんスか。信じがたいことですけど逆に納得したッス。でも…」


 「でも?」

 「なんで親子として過ごすようになったのに、身体の関係もあるんスか?」

 それな。


 「それはこの街に来てすぐに、あたしが初めての発情期を迎えちゃったから…信頼できる人は身近にお父さんしかいなかったし、お父さんは仕方なく助けてくれたの。」

 「あー、発情期絡みッスか。それはしゃーないッス。

 いや、てっきりパパさんが嫌がるサナちーを手籠めにして性奴隷にでもしたのかと。

 でもそれにしては懐いているようだし、イチャイチャしてるし変だなーと思ってたんスよ。」


 なんでそんな発想になる。

 と、一瞬思ったが、ミツキは男性の性に嫌悪感持ってるっぽいんだよな。

  「人聞きの悪い。」


 「いや、だってパパさんが外に晩御飯買に行っている最中、部屋の雰囲気的にサナちーと『そっち方面』の話してたんスけど、あんなに初心うぶだったサナちーが、そんな事までしてるなんて、わりとショックだったッスよ?

 正直、アタシも身の危険を感じてたッス。」


 サナが何をどういう風にミツキに話したか気になるところだが、話を続けよう。


 「それはさておき、勇者召喚について詳しく調べるため、元の世界に戻る方法を探すため、元の身体を取り戻すため、なにより攫われて来たサナを送り届けるために、私たちはサナの故郷に行くことを目的にしているわ。

 今はそのための路銀稼ぎに迷宮に入っているところ。」


 「サナちーを送り届けるためってのは分かるッスけど、故郷で勇者召喚についてなんて分かるんスか?さっきも言ったッスけど勇者召喚は各国の軍事機密扱いッスよ?」


 「あたしの実の父親と祖父は勇者なの。あと、お婆ちゃんも元勇者の仲間だったから、勇者とは縁が深いんだよ?」

 「いや、深すぎッスよね?!

 …元勇者の仲間でサオトメ…。サナちーのお婆ちゃん、もしかしてサビラキ・サオトメだったりするッスか?」

 「うん。」


 「マジッスか?!」

 「有名人なの?」

 「別名『金剛鬼』それぞれ別国出身の勇者3人に仕えたことがあるという有名なプラチナの探索者ッス。下手すると人族と亜人族との歴史の本に載るくらいの人物ッスよ?」


 「サナのお婆ちゃん、凄い人なんだね?」

 「家では隠居もして、のんびり暮らしてますけどね。プラチナの探索者だってのも今知りました。」

 「価値観?!もっと驚いてくださいッスよ!凄いことなんッスよ?」


 血統を考えたらサナの方がよっぽど勇者っぽいな。



 ミツキッス!

 なんか色々ヤバい話がポンポン出て来て身の危険を感じるッス。

 お前は知りすぎた。グサーッ!とか嫌ッスよ?

 あと、上手く言えないッスが、サナちーが羨ましくなってきたッス。


 次回、第百話 「常識」

 あらすじ回の最終回らしいッス。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ