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Light the signal fire in the dead

「ただ唯一心残りなのは妹のことです。あの子は何も知らないから、できることなら普通に生きて欲しかった。私が幽霊になったのはそのことが理由だと思います。はい、話は以上です。意外とあっさりしたものだったでしょ」


南はそう言って微笑む

それが強がりなのが、いやでもわかってしまう


「どうして、こんな話を俺に?」


「うーん、そうですね。多分愚痴ですよ。ゲームが始まってからストレス溜まりまくりでしたから。それに、シドウさんって、なんだか•••」


「ん、なんだよ」


「いえいえ、なんでもないですよ!」


南は両手を振って否定する

気になるが、こんな話を聞いた後だ

今は勘弁しておいてやろう


「じゃあ話を戻しますか。こんなことがあって、私には聴覚強化のポルターガイストが与えられたんです。まさか死んでまで聞き耳をたてることになるとはおもってませんでした」


「そういえば、ポルターガイストが本題だったか」


ついつい忘れていた

ポルターガイストがトラウマに関連するっていう話だった


「そうですよ、しっかりしてください。とにかく、ポルターガイストは生前の自分に深く関係しているんです。シドウさんの場合、生前のことが思い出せないから、ポルターガイストが使えないのかもしれません」


これはまいった

流れからして、このゲームではそのポルターガイストが重要な役割を果たしている

もちろん誰かを殺す気はないが、身を守るためには必要不可欠なものだ

逆に持ってないと、ハンデを抱えることになる

記憶喪失がこんなところで影響してくるとは


「ちょっと間を置こう。一旦頭を整理したい。話し続きで喉も渇いたしな。飲み物何かいるか?」


「おごりですか? なら果汁100%系でお願いします。味はなんでもいいです」


「了解」


ここは公園だ

自動販売機の一つくらい簡単に見つかるだろう




自動販売機はなかなか見つからなかった

結局、公園の入口まで戻っていた


「こんなに広いのに自動販売機の一つもないなんて、不親切な公園だ」


たしか公園にの前にあったはずだ

愚痴をいいなら出口へ向かう

今まで意識していなかったが、夜の公園は意外と気味が悪い

昼のイメージとのギャップのせいだろうか


「結構離れてしまったな。早く買って戻ろう」


やっと自動販売機の光を見つけ駆け寄る

その時

ふと視線を感じた

気のせいかと思ったがそうじゃない

誰が見ている

不思議と確信が持てた


「•••」


こんな時間に一般人が出歩いているとは思えない

何より自分を見ているということは、生きている人間ではない

つまり


「っ!!」


直感だった

前に転がるように跳ぶ

と、同時に衝撃が体を吹き飛ばした


「なんだ!?」


背後を振り返る

それを見て驚愕した

さっきまで立っていたところにクレーターができていた

その中央に手斧が刺さっている

まさかこれを投げたのか?

いや、それだけでこんなことにはならないだろう


「避けられたか。勘のいい奴だ」


暗闇の奥から声が聞こえる

目を凝らすと、木の陰から男が出て来るのが見えた

ガタイのいい大男だ

身長は180ほど

厚手の黒いジャンパーをきているが、服の上からでも筋肉質なのがわかる


「痛みを感じるまもなく殺してやろうと思ったのにな。面倒なことだ」


「お前、ゲームの参加者か」


「参加者なのは兄ちゃんもだろ。だから人殺しを見るような目はやめてくれよ。俺は岸谷航平ってんだ。同類同士、仲良くしようや」





爆音は離れたところまで響いていた

それを聴覚強化の南が聞き逃すはずがなかった


「敵!?」


椅子から飛び上がる

音したのはシドウが向かった方向だ

襲われているのもおそらくシドウ

それだけではない

かすかだが、別でこちらに近づいてくる足音もある


「ど、どうしよう」


逃げるべきだ

幸い自分はまだ気づかれていない

逃げるなら今しかない

それなのに


「そうよ。助けられるわけ、ない。だけど」


ここで逃げたら同じじゃないのか

家族を見捨てたあの頃の自分と

そんな考えが浮かんでしまう


「だけど」


両親のことは後悔していない

今ではあれはあれで良かったとさえ思える

だけど

手遅れになる前に何かできたのではないかと思うことがある


「だけど、やらずに後悔するのだけはもういや!」


結末が変わらなかったとしても

いや、どうせ結末が変わらないなら

自分のやりたいようにやろう


死んでまで後悔するのはごめんだから


物陰から飛び出し、シドウと反対方向に走る

自分に出来るのはもう1人を引き離すことくらいだ

そのためにはあえて見つかり、追わせなければならない


「来た!」


足音が変わる

迷わずこちらへと向かってくる音だ

背筋が凍る

今更になって後悔と恐怖で頭がいっぱいになる

それでも走る

もう引き返せない


「大丈夫。まだ距離はある。公園を出て人通りの多い場所に出れば撒けるは、ず?」


勢いあまったまま地面を転がる

何が起きた?

立たないといけないのに足が動かない

見ると

右足に鈍く光る金属が刺さっていた


「っ!!!」


痛みが遅れてやってくる

ナイフ?

どこから?

敵は何処?

混乱して頭が回らない


「はやく、逃げないと」


地面を這うように動く

街の光がやけに遠い

こんなに遠かっただろうか

まるで届きそうにない


「おやおや、もうギブアップかい」


ゾクリと

気味の悪いこえが頭上から聞こえる


「サポーターのくせに出しゃばるからそうなるんだよ。はぁ、遊び足りないなー」


なんだこの男は?

普通じゃない

今までいろんな幽霊と出会って来たが

この男は何処かが決定的に壊れている


「せめて最期くらい楽しませてくれよ? なぁ」


わかる

ここで私は

殺される


「くっ!!」


この恐怖を知っている

あの日ベッドで味わったそれだ

でも少し違う

あの時と違って後悔はない


嘘だ

後悔はある

なんて馬鹿なことをしたんだろう

なんて無意味なことをしたんだろう

過去の自分を怒鳴りつけてやりたい


「結局後悔するのか」


ふと

シドウのことが気になる

彼は無事だろうか

どうかそうであってほしい

そう思うと

少し後悔が軽くなるから

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