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When Will the sound is clean?

私の家はそこそこ裕福な家庭だった

父親と母親と、まだ言葉も話せない妹

4人家族だ

私立の小学校に入り、それなりに真面目な生活を送っていた

私自身はそんなつもりはないのだが、生真面目だの融通がきかないだのと言われていた

今の思い返すと、小学生にしては大人びていたかもしれない

かわいくない子供だったな、と思う




普通と違うのは、父親と母親がそれぞれ不倫していたということだ

しかも、お互い決して口には出さないがそれを知っている

私の家庭では、そのことに触れず、仲のい家庭を演じることが暗黙の了解になっていた

私もふくめて



家の前に車が止まったとき

リビングから話し声が聞こえたとき

その声が

父親なのか別の男なのか

母親なのか別の女なのか

話し声で判断しなくてはならなかった

その時々により、反応を変える

何も知らない無垢な小学生を、演じなければならなかったからだ

だから私は耳をすませる

状況を知るために

その場にあった役割を演じるために

そうしなければ

私の家はきっとなくなってしまうから



そんなある日の夜だった

家に強盗が入った

気付いたのは私だけ

足音で、それは悪意のある者だとわかった

知らせなくてはならない

だが体が動かない

私は布団に包まるようにして震えていた

人数は2人

その内1人が父親の部屋に入った

わずかに呻き声が聞こえた

それだけでわかった

強盗は迷わず父親を殺したのだ

母親に知らせなくてはならない

だが怖くて体が動かない

しかしそれだけではない


もしここで母親が死ねばどうなるのだろう


そんな考えが浮かんでいたのだ

そうなればもう演じなくていい

聞きたくない音に耳をすませなくていい

ならばいっそ



私は母親を見殺しにした

数メートル先

母親が生き絶える音が聞こえた

あと数分後、自分も同じ運命を辿るだろう

だがこれで良い

これでもう演じなくていい

聞きたくない音はもう聞こえない

それがほんの数分でも良かった

これから何十年と、そんな日々が続くよりは

こっちのほうが良い



結局、私は布団にくるまったまま最期をむかえた

あの日聞いた

死が近づいてくる音と

人の死の音は

死んでも忘れないだろう

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