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瞬間、眩い光が視界を白く染め上げた
それと同時に、いや僅かに先に後方へ飛んで距離を稼ぐ
あの女は切り札を使った
このタイミングということは、反撃の隙を与える間も無く勝負を決める魂胆だろう
「おもしれぇ。そうこなくちゃな」
徐々に目が慣れてくる
そして、目に飛び込んできた映像は信じがたい物だった
「おいおい、なんだこりゃあ!?」
周囲が空が、炎で閉ざされている
見渡す限りの赤赤
息が苦しくなるほどの熱量
まるで火炎地獄のようだ
「お気にめしてくれたかしら?」
前方ではあの女が涼しい顔をして立っている
手には棒状の炎が握られており、その熱量は今までの比でないことが目にとってわかる
「これが私のポルターガイスト、『薪を焚べる者』。周囲を超火力の炎で塞ぎ、そして徐々に狭めていく。お前は逃げることも許されず、ここで灰になるのよ」
炎の壁は内側へと燃え移っていく
それがコンクリートだろうと鉄だろうと関係ない
炎に飲み込まれるように、その身を灰と化していく
まるで薪のように
「なるほど。だから薪を焚べる者、か」
熱量
規模
どちらも能力を解放する前とは比べ物にならない
解放後に真価を発揮するタイプか
侮っていたな
ここまでの相手はゲームが始まって以来だ
「いいぞ、それでいい。いや、そうこなくちゃあな!」
両手にナイフを構える
俺の武装では炎の壁を突破することは不可能
ならば狙いは女しかいない
ヤツを殺せばこの炎の壁も消滅するはず
炎の侵食スピードからみてタイムリミットは約5分
それまでに仕留められなければこちらの敗北
上等
歯ごたえのある相手だ
ああ、久しく忘れていた
これこそが俺の求めていた物、命で遊ぶ感覚!!
「ハハハハハッ!!」
そこからは壮絶の一言に尽きる戦いだった
無数のナイフを投げつける雁夜
それを炎の剣で叩き落していく赤髪の女
2人を照らす炎が、複数の影を映し出す
幻想的に見えるそれは、ステージで踊る役者のようにさえ思えた
勢いは雁夜にあった
しかし攻めきれない
守りだけでなく、要所要所でしっかりと切り返してくるおかげで、充分に攻め込まない
そうしている間にも、炎の壁は迫ってくる
壁が約10メートルに狭まり、いよいよ勝負が決するという時だった
赤髪の少女の背後の炎がうねったかと思うと、大きな塊が飛び出してきた
「なっ!?」
最も驚いたのは少女だった
破られるはずのない切り札が、突如として現れた何かにこうもあっさりと破られたのだ
塊は少女の姿を捉えると激しく燃えながらも少女へと疾走する
「なによ、このっ」
突進してくる塊から身を守ろうと剣を盾にする
いくつものナイフを叩き落してきた剣は、しかし塊の一撃で跡形もなく打ち消された
「くっ!!」
軽く吹き飛ばされた少女は離れた地面に叩きつけられる
息がつまりそうになりながらも、燃えているソレを凝視する
「一体誰、が•••!」
その正体をみて愕然とした
それは人間ではなかった
黒い毛
木の幹ほどの手足
巨大な体躯
赤い眼光
そして、刃物もりも鋭い牙
「⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️⬛️!!!!!」
咆哮が辺りを震わす
そこにいたのは一頭の黒い大狼だった




