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The Poltergeist

その感触を、俺はきっと忘れないだろう

肉を断つ感触を

血を掬う感触を

命を奪う感触を


「ごぼがっ」


体を引き裂かれた岸谷は力無く崩れ落ちた

口から血が逆流して吐血している

もう助からないのは一目瞭然だ

これを、自分がやったのか

信じられない

何故、こんなことができたのだ


「あ、ああ」


今頃になって冷静さが戻ってくる

さっきまでは変に頭が冴えていた

命の危機にハイだったのかもしれない

恐怖も感じなかったし

痛みもなかった

何より命を奪うことに躊躇がなかった

だが、今ではそれが恐ろしい


「俺が、人を•••」


右腕が視界に入る

人の腕ではない

獣の腕だ

鋭い爪には血がべったりとこびり付いている


「この腕で、人を殺したのか」


もう一度岸谷に目を移すと、彼はただの肉塊になっていた

その体が二度と動くことはない

自分は人を殺したのだ


「う、おえ」


気持ち悪くなり、思わず吐いてしまう

恐ろしい

当たり前だ

人を殺したのだ

たとえそれがもう命の無い幽霊だったとしても、確かにこの手で殺したのだ

これが当然の反応だろう

なのにあの時の自分は当然のように感じていた

命を奪うことを


「•••そうだ。南を待たせてるんだった」


ああ思い出した

自分は何のために岸谷と殺し合ったのか

フラフラと立ち上がる

もうここには居たくなかった

一刻も早く立ち去りたかった

岸谷の遺体から逃げるように、自分は来た道を引き返した





炎がうねる

蛇のように動くそれは、男へと食らいついた


「鈍ぇな。亀かよ!」


軽々とそれをかわした男はノーモーションでナイフを投げつけ返してくる

三本か

うち二本はやや迂回する形での投擲

簡単には避けられない

防御へと誘導する投げ方だ

いかれているように見えて手堅い攻めだ


「亀なのはお前の得物の方でしょ」


今度は炎の壁を作り出す

三本のナイフは全て弾かれ地面に落ちた


「またそれか。炎のくせにナイフを弾きやがる。そうかと思えばすり抜けもする。まるで手品だ、楽しいねぇ」


壁を展開しながら炎の球ばら撒く

しかしそれを器用に避けながらもナイフで反撃してくる

やはりこの男は強い

拮抗しているように見えるが実はそうではない

こいつは能力を使っていないのだ

つまり素でこの戦闘力

正直言って私一人では勝てないだろう


「あらよ」


「ちっ、一体何本持ってるのよ!」


ナイフは無尽蔵

もしかしたらそれが能力なのかもしれない

だが伝説の殺人鬼のポルターガイストがそんな単純なものとは思えない


「さっきから投げナイフばっかり。ナイファーハッピーって呼び名は実に的を射ているわね」


「お褒めいただきどうもありがとう。そういう君は何なんだい? そこいらの人殺しよりもいい手応えだ」


「気になるか? なら教えてあげよう、雁夜」


決めた

出し惜しみは無しだ

向こうが手を抜いている間に一気にケリをつける


「『その怨讐を火種とか化せ

火のない処に煙を立てよ』」


「!! いいね、そう来なくちゃ!」


雁夜は瞬時に距離をとる

当然だ

これは私達幽霊にとっての切り札だ

いくら雁夜が強くても

いや強いからこそ最大限の警戒を見せる


「『我が憎しみは炎のごとく

万象悉くを灰燼に帰す

灰の中にあれど消えることは許されず

消え場を求めまた燃え上がる』」


これは魔法ではない

そんな夢の詰まったものとは正反対のものだ

これは呪文

我らが醜き怨嗟の声


「『我は薪を焚べる者』」


さあ、お見せしよう

これこそが呪いの極致

我らが世界に対する抵抗の証

ポルターガイストだ














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