Reach out a hand
「おおおお!!!」
振りおろされる斧をギリギリでよける
だが、爆風のような衝撃で吹き飛ばされる
最初は本当に爆発しているのだと思っていたがそうではない
力技だけ
ただの衝撃でこれなのだ
「なんつう怪力だよ、ちくしょう」
逃げるにも、岸谷を引き連れて南のところに行くわけにはいかない
しかし公園の出口は奴が陣取っている
「どうする!?」
繰り返し振るわれる斧を避ける
逃げるので精一杯だ
だが何度も見て来たおかげで岸谷の能力が何なのか見えてきた
「ぬうん!!!」
「!」
斧が振り下ろされる
衝撃を予想して大きく距離をとる
とてつもない衝撃をうけるが、おかげで吹き飛ばされずにすむ
やっぱりか
心の中で納得する
実は岸谷の攻撃の全てが馬鹿力ではない
振り下ろしのみ
尋常ではない火力なのだ
それに怪力では、投擲であの威力は出せない
となると
おそらく、奴の能力は筋力強化ではなく重力操作、もしくは重力負荷の類だ
振り下ろしの瞬間に斧にかかる重力を上げることで、威力を高めているのだろう
だとすれば、振り下ろしは強くても振り上げは強化できない
振り下ろしの後に隙ができるはず
「•••やれるか?」
不思議とそんな気がしてくる
案外自分は、好戦的な奴だったのかもしれない
どちらにしよ逃げ続けるのも限界がある
こちらの動きを見切られるのも時間の問題だろう
「よし、一か八か」
岸谷の攻撃をかわしながら機会を伺う
狙うは振り下ろしのあと
それは思ったよりも早く訪れた
「ここだ!」
振るわれる斧
それをすんでのところでかわし懐に入る
決まった!
完全にイメージ通り
あとは動きの止まった岸谷に、二、三発いいのを食らわせるだけだった
だが
「甘いな」
「え?」
いいのを食らったのは自分の方だった
ザン
と不快な音が聞こえた
遅れてが激痛はしる
「が、ああああ!!」
右肩が痛い
まるで燃えているようだ
斬られたのか
血が出ているのか
わからないが、とにかく押さえつけようとして気づいた
「嘘だろ!?」
肩から下には何もなかった
そのかわり
少し離れたところに
人の腕のようなものが落ちているのが見えた
「うっ」
不快感に襲われ、思わず口を抑える
これは喪失感というものなのか
自分の体の一部が無いというのは、とてつもなく気持ち悪い
痛みよりもそっちのほうがキツイくらいだ
こんなにも耐え難いものだとは思わなかった
「動きはいいが甘すぎだな。こんな罠に引っかかるなんざ、三流以下だぜ」
岸谷が斧を向けてくる
まずい
このままでは殺される
「なんで、こんな、平然と」
「なんでだって? そんなの、数が少なければ少ないほど、ジョーカーとの遭遇率が高くなるからに決まってるだろ」
「ジョーカー? あの、願いを叶えるとかいう」
岸谷はどうやらボーナス狙いの参加者のようだ
それにこの言い方、他に何人も殺してきたように聞こえる
「お前も、そうまでして生き返りたいのか?」
「ああもちろんだとも。幽霊なら当然だろ。俺は何としても生き返る。いや、生き返らなければならない」
生き返らなければならない?
どういうことだ
まるで使命じみた言い方だ
この男に人殺しに値する理由でもあるというのか
「おっと、俺としたことが話しすぎたか」
熱くなりかけていたことに気付いたのか
ここまでと岸谷は話を打ち切る
斧が持ち直される
自分はというと、なんとか立とうとするが、腕が無いせいでバランスを崩して倒れてしまう
「じゃあな、大人しく死ね」
やばいやばいやばい
動け動け動け
死にたくない
このまま、わけのわからないまま消えるなんてごめんだ
だがどう足掻いて見ても逃げられそうにない
血を失いすぎたせいか、視界も狭くなっいる
ーここまでか
ここで死んだらどうなるのだろう
天国とやらに行くのだろうか
それとも地獄だろうか
岸谷はどうするのだろう
これからも殺し続けるのだろうか
そしてジョーカーを手にいれて生き返るのだろうか
ああ、そういえば
南はまだあのベンチで待っているのだろうか
だとすれば
岸谷が次に狙うのは
「っ、はは」
「ぬ!?」
立ち上がる
残った四肢に力を込める
立つのに精一杯で一歩も動けない
上等だ
どの道逃げる気はさらさらない
「不思議だな。悪くない気分だ」
「頭でもおかしくなったか」
「どうなんだろうな。記憶喪失だから、あながち間違ってないかもな」
顔を上げる
目の前には斧を持った大男
対して自分は武器はなく、右腕をぶった切られ瀕死の状態
「でも、ほんの少し前に出会った他人のためなら頑張れるなんて、我ながら嬉しいんだ。どうやら俺は、少なくともあんたよりはマシな人間らしい」
「•••ほう、言うじゃねえか」
斧が持ち上げられる
数秒後に振り下ろされ、自分の頭はスイカみたいに割られるのだろう
「死ね!!」
だが逃げない
その必要はない
何故なら俺は
「っ!!!」
無意識のうちに手を伸ばしていた
振り下ろされる斧を掴むように
その手が斬られたはずの右腕だということを
自分では気付いていなかった




