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You are dead

ー 死んだ方がマシなどとは言わない

死よりも恐ろしいものなど、少なくともこの世にはないのだから ー




目を覚ます、と言うのだろうか

ふと焦点があったような感覚とともに、景色が目に飛び込んでくる


ー ここはどこだろう


通り過ぎて行く人

巨大な木のようにそびえ立つビル

灰色で覆われた空

どれも見たことのない景色だ


うまく頭が回らない

自分は誰だろうか

名前はー

だめだ、思い出せない

何かをするためにここにきたはずなのだが


「やっと見つけたわ」


声が聞こえる

振り向くと、そこには赤い髪の少女が立っていた


「ここまでよ。大人しく殺されてもらえるかしら」



第1章


これはどういう状況なのだろう

目の前の少女は「殺されて」と言った

しかし、自分にはその理由がわからない

それどころか、自分のこともわからないのだ

しかし、目の前の少女は明確な敵意を持ってこちらをみている。


「でもまさかこんな簡単に見つかるとは思わなかったわ」


「ちょっ、ちょっとまってくれ」


早すぎる展開に思わず声がでる

自分のことはてんで思い出せないが、人違いだということだけはわかる


「またないわ。あなたをこれ以上野放しにはできない」


眩い光が一瞬少女を包む

次に目を開けた時、彼女は炎を纏っていた


「あなたは、私が殺す」


目の前が真っ赤に染まる

絶対絶命な状況にあって、不思議と恐怖はなかった

それどころか、炎を振りかざす彼女を


オレは美しいとー






目を覚ます

今度は明確な睡眠の終わり

何度も体験した、あの体に染み付いた感覚だ


「仕方ないでしょ。あんなタイミング、どうぞ間違ってくださいって言ってるような物よ」


「仕方なくないよ。無関係な人にあれはさすがにない。間違ってました、ですむレベルじゃあないな」


誰かが話している

片方の声は、聞いたことがある気がする


「あ、ほら起きた。本人が無事なら何も問題ないじゃない」


「そういう問題じゃ、ってキミ!?」


グイッと顔が近づく

整った顔立ちの少女だ

目を惹く赤い髪は、腰辺りまで伸びている

茶色のボーイッシュな格好にもかかわらず、女性らしい魅力がにじみ出ており、思わず緊張してしまう。

少女の少し強気の瞳に、自分の呆然とした顔が写っている。


「あなた怪我はない? ないわね? ならとっとと出て行きなさい。別にもう殺そうなんて思ってないから」


こちらの意見など聞く気もないようだ

シッシと手を動かしている

自分はというと、やっと眠気が取れてきたところだ


「おいおい、それはないだろう。すまないねキミ。まだ体が痛むなら休んで行けばいい。どうせ行くところもないだろうしね。そういえば名前は?」


メガネをクイッとあげながら、部屋の奥にいる男が言う

歳は三十辺りだろうか

決して良い体つきではないが身長は高そうだ

落ち着いた雰囲気で、これぞ大人という印象だ


名前

聞かれて、自分が記憶喪失だということを思い出した


「えっと、その、•••わからない」


「わからない?」


反応したのは少女だ

帰ってきた返事が気にくわないのか、怪訝な様子だ


「その、なんと言えばいかのか。どうも記憶喪失、みたいなんです」


「え?」


「はぁ?」


これには二人とも驚いたようだ

それはそうだ

自分でさえ信じられないくらいだ

彼らが驚き、疑うのも無理はないだろう


ー しかし少女は、さらに信じられない言葉を投げつけてきた ー


「何言ってんの。死んでるのに、記憶喪失なんてあるわけないじゃない」


「•••死んでる?」


何かへんなフレーズが飛び出してこなかっただろうか

死んでいる

理解できない

彼女は何を言っている?

死んでるから記憶喪失なんてない?

それはそうだ

だが自分の言葉に対する応答で、このセリフはおかしくないだろうか


「まさかわかってないの、あんた?」


「•••何、を?」


心臓が妙に早まる

さっきまでの眠気はどこへ行ってしまったのだろう

冷や汗が肌をつたう

呼吸がひとりでに早まる

少女の口が開き、言葉が発せられる

それはスローモーションのように


「あなた、死んでるわよ」


はっきりと、ユウトの耳にこだました。


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