八十六ページ目
ムツサが囲まれ苦戦させられていた場所へさっと現れ、数人の雨ガッパを蹴散らしてムツサの首を掴み一瞬で二つの家族の中心へ「いきなり何すんのよ!」首を掴まれ暴れるムツサだが掴んだ腕は離れることなく腕はぶれることなくムツサを掴んでいる「うるさい年寄りですね。この状況年の功をかんがみても、あなたに単独行動されるのは不利です黙ってここにいてください。戦いづらい!」少女ははっきりとした口調でムツサを嗜める。そのまま母親である雌鳥がいる男の子の方へ声をかける「母さん、それで助かるの?」と聞くが「綱渡りと言えばいいかな、でも周りの状況が続くと不安だわ、この子供の魂は不安定になりやすい」男の子の上で羽根を組み合わせ思案している。そんな母鳥に「取りあえず近づけない、それでいいよね」投げ掛けてくる言葉に無言でうなずく母鳥。そんな神の会話に入るムツサ「あの子の崩壊を止めてくれたのはいいけどこれからどうするの!!(おでこにデコピン)いっーーたいわね」起きようとするムツサをデコピン一発で抑え込む。「座っててください。さてあの死人がボスね。転生させるのが早いんだけど」間髪を入れず″ダメ!″と母鳥に叱られる。「じゃあ、端から無料化していくか。メンドイ」そう言いながら雨ガッパを家族に近づけないよう無力化していく。唖然とするムツサだがそんな彼女の後ろに雨ガッパが首を絞められ持ち上げられる。足をばたつかせるムツサ。「これでこの首輪ともおさらば…………!!!!」傘王の唇が上がる。ムツサを絞めていた腕は外れその場に倒れ痙攣する。周りの雨ガッパの動きが止まる。傘をクルクル回して「やっぱりダメ!それに無傷で捉えろってあれ程言ったじゃない。言うこと聞かなきゃダーーメ!(首輪を掻き毟り藻掻く雨ガッパ)フッフッハッハッアーーさぁ取り囲みなさい。ゆっくりとそれ以外は選択できませんよね」雨ガッパ達の取れる行動は一つだった。「くそっ、あんたあの男の子だけでも連れてここから離れられない。さっきの戦い見てたら、その程度は出来るわよね」ムツサは隣で戦う女の子に戦闘離脱を促すが「そこの尼傘ほんとに面倒ですね」とムツサの横を通り抜け一瞬で傘王の前に移動する。目の前の傘王に「ねぇ、どうしてこんな事するの?楽しいの?つまんないの?こんな事続けたところでいつか転生するのよ。あなた死人でしょ?よくわかんないけどさぁ~黙ってその時を待てない?何を創った所で、何かを成したところで、そんなもの″吹けば飛ぶ程度のモノでしかない″其れがこの世界でしょ?それはあなたも分かっているのに(はぁ~と一息つき)ほら殴るよ?!」ドンと女の子から放たれる一撃を傘王は似神非力を発動する。「″鉄華開傘″!!!」頑丈な傘が展開して女の子の一撃を止められる「ふーんほら、それじゃあ″潰れるよ″」一度は勢いを止められた拳に再び圧が加わる。頑丈だと思われた鉄の傘にヒビが入る「なら″積列連傘″!!」ヒビの入った鉄の傘が増殖してヒビの入った傘を女の子の拳ごと押し返す「傘!傘!傘!楽しい時も、嬉しい時も、悲しい時も、寂しい時も″アタシにはコレしかなかった」増殖してうねり女の子を飲み込もうとする。飲み込まれる女の子の口からは焦りや慌てた様子はない。自分の状況より男の子の方へ、その上に乗る雌鳥ママを気にしている。「呑まれろ!飲まれろ!神を飲み込ん!?」女の子の視線はママの方を向く………「ふぅ、ヒビも落ち着いたね、こっちは済んだわよ照留ちゃん♪」その言葉に「じゃあもういいですね(急に力が入る)これが貴方の″活きてきた糧なのか………」飲み込まれる傘を見てボソッと言葉が漏れる。傘王が手を離して後ろに下がる。「いい判断だけど(女の子の手にはぺしゃげた傘が握られている)自分の武器を手放すのはどうかな?」壊れた傘を放り投げる「″鍵″だったかな、君たち死人の一部が使う″この力″魂その物を削る力みたいだけど、″鍵″となる物がないと魂の力を引き出せないんだよねつまり(壊れた傘を見ながら)″鍵″を無効化してやれば君はただの死人と変わらない事になる」足踏みをしながら「クソっクソっアタシだけ………また、また苦しい思い…………やだ………イヤだ」その場にいる雨ガッパ全員の首輪が反応、苦しむ雨ガッパ達叫び声が辺りに響く「アッハハハ、アタシだけなんて許さない、クルシメ苦しめ、皆″同じになるの″アタシの世界で私以外のモノが立つ姿なんてだから………怖くないモノ」目を瞑る傘王、首輪の音は一層大きくクライマックスへと鳴り響く。だが首輪の音を掻き消すかのように、女の子が雌鳥に向かい声をかける「どう?落ち着いたの?死人をほうっておけない。その考え方は神として間違ってないないんだけど、あたし達は本来生きてる人の助けになるべき何じゃないかな?まぁアタシはそんな気持ちさらさらないんだけど、この傘の死人みたいに投げやりプライド大盛な奴は、始末が悪い。一部の死人排除派の神様たちの気持ち分かるんだよね」そんな娘の言葉に「全て分かってあげなさい………とは言わないわ。人としてどんな生き方をしてきたのか、例え満ち足りた人生だったとしても″最後が納得に足るものではない死だったとしてら″それは受け入れられないモノなのよ」いつもの説教だと聞き流す女の子。ボソッと「やれやれ、またか」その場にいる全員の首輪が壊れている「こんなやり方、ただの繰り返しよ………」女の子の声に連動するように首輪が壊れていく。「何で、何で?!(女の子に手を伸ばしながら)やめて………(両手で顔をくしゃくしゃに握りながら)また」……………雨が降り続いている。いつからかドアを叩くのを辞めた。ボロボロな一昔前の魔法少女のキャラクターがついている傘穴が空いてニコやかに笑う魔法少女の顔の半分が無くなっているその間から見える女の子の髪はボサボサで濡れて震えている。屋根がかろうじてあるので、風が吹かないと雨に濡れないが寒さは防げない。救急車の音がする。ママの声も大人とお話しをしている。ママの声を聞くだけでうれしくてうれしくて………買って貰った大事な大事な傘を握り締めている。血がべっとりとついている。ボロボロな傘は壊れていない。アタシは間違ってない!間違ってない!?そうだ自分を守っただけ…………カジョウボウエイ?!最初は優しかったのに何で殴るの蹴るのやめてよ………何でいうこと聞かないの?大きな声を荒げる。あれ立場が違う?鏡を見ているようだった。泣き叫ぶ姿は、かつての自分を彷彿とさせて持っていた傘はこれで何度………穴の空いたヒロインの顔を新しい赤色と古くなった黒色が重なり合うように着いている。どんな状況になっても微笑むヒロインはアタシに勇気をくれる。くるくるく?くるずっと繰り返し………石が顔に当たり我に返る。視線の先には女の子が傘王を睨みつけている。足元には壊れた首輪がある。回りには同じように石を持った雨ガッパ達が周りを囲んでいる。項垂れる傘王当然だろう。独裁者なんてモノの末路はこんなものだ。力で押さえ付けていたモノが解き放たれる。傘王に注がれる視線は憎しみ恨み悔しさ等々負の感情で溢れている。終わった。少し離れた壊れた傘を見て憂っ臥せる。立ち上がる気力等………とうに無かったから石が投げられる傘王という的をめがけて………だが的には当たらなかった。「あの、バカ!」ムツサの声が漏れる。「何で?やめてよ!………アタシはそんなことされる………される」云いたいことがのどの奥で詰まる「辛いのはずっとじゃないはずだよ………きっと、きっとこの辛さも終わる時がくるから………」倒れ落ちる白翁………目を覚ます白翁に「やっとお目覚め、さてオタクサ帰るわよ」あーはいはいと怪しげな実験器具を回収するオタクサ「あの子達は?」あの子とは誰の事を刺しているのか計らないが「あの傘王と雨ガッパ達なら国に戻ったわよ」何で?と聞き返す白翁に「さぁ、普通あんだけいいように使われたなら、戻んないもんだと思うんだけど?」回りには二つの家族がいる。「どうやら目は覚めたみたいね。魂も安定してる。転生はまだ当分先だと思うわよ」照留の頭からひょっこりと現れる雌鳥ママ。そんな母に「それじゃお大事に、転生してください」と振り返りその場を去ろうとする照留にムツサが「ありがとう……助けてくれて……アタシは″ムツサ″覚えていろ!」聞いてないのかと無視されるムツサにまぁまぁというオタクサ「照留よ…………覚えてなくていいから」そういい残してその場を去る。白翁は二つの家族の前に「一緒に行こう…………じゃなかった″帰ろうか″」そう言いながら手を差し伸べた………ベタリ、ベタリ大きな音が部屋の中に木霊する。夢か、遠い遠い昔の夢、家族になった時か………大きな部屋に独り椅子に座るオオキミ廻りには誰もいない。そう言えばムツサが侵入者がいると部屋の外の警備を増やすとか言っていたな。「それで………君が侵入者君なのかな音もれするくらいだ。隠すつもりはないんだろう。」暗い部屋の奥に木霊させた声に野太い山彦となり帰ってくる。『隠れる?そうだな、表のでは″オードブル″にすらならなかったよ』すっと奥の暗闇から姿を現す。大きさはオオキミの数十倍。その大きな口は一呑みでオオキミを平らげてしまう。そんな圧倒的強弱の前でも、外に居る門番達を気にして「まさか!食べたのか?!」と尋ねるオオキミに『″オードブルにすらならない″そう言っただろうまぁ、一昔前の俺なら間違いなく″喰っている″だろう。お前さんも楽しい会話の後にいただいだろう。だが″今は違う何せここの中には″卍燈籠″がある!(舌舐めずりをしながら)その中にはいるのは鳥神しかも上物だ!俺は見上げるだけだった高嶺の花雄々しく羽ばたかせる姿は見るモノを圧巻した!』冗舌に喋る大きな神そんな神に「ここには卍燈籠は」というオオキミに尻尾を振りながら『あぁ、分かっている″ここに卍燈籠はない″そんなことは承知だよ。″卍燈籠の在り場所″も理解している。後は死人の少年何だったか……そうそう″太市くん″が取ってきてくれるのを待ち合わせの部屋に居ればいい、いいんだがワクワクが抑えられなくてねどうにもこの昂ぶる想いを誰ぞに話したかった。まぁ偶々それが君だったという訳だ』太市という名前に声色が変わる「太市何であの子が関わっている。あの子にあの子に何をした!」めずらしく声を荒げるオオキミに『そうだったね、君がオオキミかなら話は簡単″君がそうさせた″』大きな体で威圧的に述べる神に其れを見上げ唖然とするオオキミ「私が……私がそうさせた?どういう事だ?」と見上げながら聞き返すオオキミに『″卍燈籠″を持って来なければキミを食べると言ったんだよ。彼にとってキミは其程の存在だということだ。ここまで来るまでに太市くんは私の元を離れるチャンスはいくらでもあった。だが其れをしなかった。何故か?其れは″キミに代わりはいない″という事を示している。ここに来る途中無駄な戦闘は避けるため隠れながら移動したが、ここの死人はキミを中心に廻っている。今回の卍燈籠の一件もそうだろう?死人が弱っているとはいえ神を捉え、あまつ取引を持ち掛ける。神の恐さを知らないなんてことは無いはずだ。然しここにいる死人の一団は其れをやってのけた。そうその全ての行動理由がキミなのさ。それがどんなものか見てみたい。最も見たら戻るつもりだったのだ。ここまで話すとは私が空腹をわすれる程満たされていた。それでは私は行こう太市くんが持ってくるであろうメインディッシュを部屋で待つとしよう』そう言ってオオキミに背を向け暗闇に戻っていく大きな神に「待て!私が卍燈籠を持ってくる!だから太市あの子にはもう会わないでくれ」然し足を止めても振り返ることはせずに『駄目だ!墜ちたとはいえ私は神だ死人の少年との約束は保護にはしない!』然しというオオキミに念を押すように『クドい!太市との約束を保護にしてオマエを喰ろうてもいいんだぞ!!』剥き出しの歯はひとかみでオオキミの魂を砕いてしまいそうだった。だがオオキミも引かない腕の輪っかが光ジグソーパズルのように部屋の景色を一変させる先ほどまで入り口だった場所には何もなくドアが消失した「この部屋の権限は私が持っています。皮肉にも神対策にオタクサに創ってもらった防壁囲がこんな形で役に立つとは驚きですよ」尻尾で壁となった入り口を切り裂く大きな神。壁には大きな切り傷が出来るものの破壊するまでには至らない。数回その行為を繰り返すも壁は破壊出来そうに無かった。「壁を破壊して突破ですか、似神非力ですら傷一つ着かないのに、やっぱり神は違いますね」オオキミの方へ振り返る大きな神『閉じ込めたつもりか?太市を守ったつもりか?お前を喰らってここから出るというのは想像通りか?何故そこまでする?あの太市という死人の子もそうだが、自らの危険を犯してまで助ける理由は何だ?』閉じ込められた四角い部屋で向かい合う。オオキミは玉座から立ち上がり「今はこれが精一杯少なからず″これで無用な犠牲は出さなくて済む″」確信したのか安堵したのかオオキミから不安の色がなくなる。そんなオオキミに『犠牲か?今のお前の発言を言葉通りにとると、お前は″無用な犠牲″ではなく″必要な犠牲″だということになるが、其れは今まで会ってきた。ここの死人が最も望まぬ結果なのではないか?』首を傾げる大きな神にオオキミは「次の世代も育っている。私がおらずともこの死都は機能している。今私が成すべきことはこの空間で貴方の足を一時でも多く止めること。この死都を守ることだ」そんな年老いた死人の目は諦めた者の目ではない『その瞳には輝きが残っている。やけっぱちの特攻というわけではないか。いいだろう、その足止め付き合ってやるよ』尻尾の斬撃がオオキミを襲う。然しオオキミは慌てず右腕に填めてある。鍵がパズルのように動くと、四方から壁の一部が突出してくる。林のように障子がオオキミを覆い隠していく『逃げの一点か、まぁ無難だなぁ(障子が草木のように出鱈目に部屋の中にジャングルのように入り組んでオオキミの姿を隠している)部屋の構造の変化か上下左右だけじゃない踏み締めている床すらも変化の対象(腹を摩りながら)どうやらこの仕掛けを創った者は相当な″捻くれ者″のようだ』そんな大きな神の姿を障子の隙間から覗き込み考えこむオオキミ(何故動かない……いや動かないことは此方としては構わない……別に″戦う″ことが目的じゃない。それに戦えたとして勝てる見込みは皆無だ)………「それにしてもオタクサこの城カラクリが多すぎよ。解除するのにどれだけかかるか」オタクサにムツサが注文を付けている。「やれやれ、またケンカかよ」と二人の死人が現れる。「二人だけかい、他のみんなは?」という白翁に「ガキ達は死都街の方に遊びに行ってる。俺らは見廻りの報告をムツサ様にするために帰ってきたばっか」オタクサとムツサの言い合いを見ながら「廻りの様子はどうだった?神に手を出している者はまだいるのかい?」白翁が哀しそうに尋ねる「迷信だと伝えてはいるが、止めるには至っていない。″神が転生させてくれる″なんてなまじ嘘では無い分、説明が難しくてさ、兄貴と一緒に無謀な行動は止めてはいるけど、焼け石に水かな」やれやれと溜息をつく弟に「其れでも踏みとどまってくれる死人も沢山います。神と死人の棲み分けと新たな死人の受け入れを行っている所もちらほらあるみたい。昔のように奴隷のような扱いは確実に減っていますよ」弟をフォローするように兄が報告する。空を仰ぎながら白翁が口を開く「ゆったりのんびり過ごしたいもんだね。ここにいるいや………この″神世界に至った死人″を包み見守れる場所をつくっていきたいね」笑顔を見せる白翁に「では象徴が必要デスよね例えば″死人の神″なんてどうでしょう?」冗談交じりに話すオタクサにムツサも「″神への抑止力″この観点からもやはり象徴が必要よ」兄弟も其れには同意する。皆の視線は白翁に注がれる。その視線に白翁は「ちょっと待ってワシか?いやいやワシよりムツサが適任だろう?ワシは似神非力も持ってない………行き当たりばったりとムツサに毎回怒られとる。つまらん奴には不向きですよ」そんな白翁に物静かな兄が口を開く「似神非力は神世界に至った死人の一部、約五百人に一人の割合で扱える力ですよね」確認するようにオタクサに尋ねる。「そうですね………だいたいそんな感じですね。とはいえ貴方達のように家族全員が似神非力を使える場合もあります。遺伝子が関与というよりは″生前の大事な想いの強さ″が関係しているとも言われています」にこやかに返すオタクサ「つまり、この神世界には″死んだ後に無力なまま投げ出された死人が多くいる″という事。そんな無力な死人からすると自分にない特殊な力を持つ死人は神と変わらない。弱いものにとってはどちらも同じ事だと思います。相手にただただ弄ばれるだけの存在それがこの世界にいるほとんどの死人なんです」長い間、この神世界を巡った結果を語る兄に弟も同意する。其れは彼らの数十倍この神世界を駆け回った白翁の胸に刺さる言葉だった。そんな白翁見て確信したように話を進める兄「だから白翁貴方以外いないんです。適任者が」後ろから押されている引くことが出来ないそう感じていた…………「ハァーハァー」廻りにあった障子は全て切り崩されている………甘かったとは思わない。よく持った方だと思う。目の前の大きな神は余裕の笑みを崩していない『さて、入り組んでいてお喋りには不向きだったんでね、片づけさせてもらった』スッキリとした部屋を見渡す大きな神。驚いたのはオオキミだった其れは大きな神の行動が的確だったからだ。初見ではない?そんなはずは無い。ここはオタクサが創った渾身の一部屋だ。彼女が創ったモノは神にも匹敵するはず。大きな神は面白い事を話し始める。『不思議かい?私がどうやってこの短期間で″この部屋の仕掛けを把握できたか?″神とはいえそんなことは不可能だとキミは思っている。おやおやその顔は図星のようだね。まぁいいか答えは至極簡単…………″では象徴が必要ですよね″』歯を噛み締めるオオキミ大きな神が最後に言い放った一言を聞き睨みつけながら「食べたってことか……………″オタクサを!!″」憎しみの籠もったその瞳を見ながら『とてもうまかった………とはいえないかな、だが神に匹敵する美味さだ。くっくっいい目だ。人は死んでもその感情は独り歩きをやめない。何処までも誰かのため自分のため何かのため思いくるくると身勝手に突き進む…………だが其れがいい、いや其れでいいのさ………さて″喰おうかな″』オオキミに歩み寄る大きな足床を踏み締める音はせず近付いてくる。やれるべきことはやったここまで………オオキミが目を伏せる。然し自身が引きちぎられ食べられる感覚はなかった。おそるおそる目を開けると大きな口を開いたまま動かない神が佇んでいる。まるで剥製のように触れてみるとその場に倒れ込む。………死んでる?神の寿命だって言うの?こんなところで?判らないことばかりが頭を巡った。だが現に目の前の神いや神だった者はその動きを永遠に止めている。部屋の中は一瞬で静まり返っていた。……………囲折合に穴を開け空から落ちてきた死人の一行。其れを見つめる惨支「手荒いですね。合図が遅かったら置いてけぼり食らうところでしたよ?」乗ってきたであろう小屋は地面にぶつけられた際崩れ去ってしまった。言師は目の前にいる死人の女性に目を向ける。白衣に長い黒髪の女性がぽつんと立っている。これだけの騒ぎにも関わらず死浪はおろか死人すらいない。「あのー?」と話そうとするも一対の短刀?包丁?ナイフ?とも取れないモノを出現させる。短刀?で長い黒髪を肩幅で切り揃える。白衣を脱ぎ捨てると2本の短刀?を持ち戦闘態勢になる。徐に「貴方達はここへ何しにきたの?」静かだが和やかではない雰囲気、あたふたする言師の左右の横に頭を下げる二人の死人「死人が死都へ進入が禁忌とされていることは十二分に存じています。然し其れを押してお願いがございます」頭を垂れる二人に握っていた短刀を下げ構えを解く惨支「先程この囲折合に神が侵入しました。その事と関係しているのですか?」真っ直ぐに伸びる瞳の奥からは悲しみが漏れる。「間違いなく其れは我々が探し求める神堕ちだと思われます」その言葉を聞いて少し考えこむ惨支「分かりました。ではご協力をお願いします。そちらの方はゲンシ様ですよね。その本が神約聖書ですか?死人の中で一際体が薄くない人物。勿論二人程そばに薄くない人物がいるが、白い衣に黒い竜が泳いでいる。其れは神が纏う衣、髪飾りは月と星、これから推測出来るものは神でも死人でも無いと言うこと。神なら協力なんて真似はプライドが許さないと思いますし死人単独ならここへの進入は困難です。ここが死人達にとって神聖な場所と判っていますから。なので貴女は″神の力を持った人である″という結論に至ったので刃を納めた次第です」なるほどと分かったような分からんような顔で惨支を見る言師。その脇のリニャンの父であるオウシキが「言師殿とはオオキミの転生について話がついています」その言葉に惨支が「本当に………本当なのですかオオキミはこのまま」その言葉にイシドセの父であるシヲジが立ち上がりながら「そうでもなけれは言師を連れてきたりしませんよ」と念を押す「分かりました。では目下の心配事は侵入したその神堕ちというわけですか」頷く面々「卍燈籠は今何処に?神堕ちの狙いは照留様だと思います」と話す言師に「なるほど卍燈籠を持ちだした″目的はそういうことか″」納得する惨支。




