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「はぁー、二重に掛けておくべきだったか」自分の家に戻ってきたオウシキ。リニャンという名の娘さんが、この場所に居ないことに落胆を隠せない。あれからオウシキさんとシヲジさんの二人の死人と共に死都に入った。死都は二重構造になっており中心にオオキミの住む神疆があり、結界を隔て普通の死人が住む死人街が周りを囲んでいる。オオキミの住む神疆へは力を持つ死浪のみが行き来することが出来る。すぐにでも向かいたかったが、お二人には子供がいるらしく、死人街の家に置いてきている。そのまま神疆へ向かってもよかったけど、心配みたいだったので、皆の意見の総意で立ち寄ることにした。「あの、ちょっと遊びに出かけたなんてことは?」そう言う言師に破れた札を見せるオウシキ「この札、破ったというよりは″何か鋭いもので切った″というのが正しいか………多分リニャンでは無い……とにかくシヲジの帰りを待って」そこに螺馬ちゃん姉妹と一緒に自宅に戻っていたシヲジが項垂れながら帰ってきた。その様子に「イシドセくんも一緒のようだな?」その場に座り込み頭を抱えるシヲジ「ったく、あの馬鹿!今日は″絶対出るなって″あれほど念を押して……」溜池をつく二人の親父に「どうしたの?子どもたちは居なかったの?」そう言いながら裁来と共に情報収集に行っていた花人が現れる。彼等に説明を済ませ「ふーん、迷子の死人ちゃんってこと、神世界ならまだしも、死人街でしょ、まぁここから外にってのは、ここに住んでる者なら危険だって分かってるから出ないでしょう。そう心配しなくても」そう言う花人に「そうだな……アレもついているなら…………大丈夫か、それで死人街″特に神疆との境″の様子はどうだった?」と花人たちに尋ねるも裁来も花人も黙ってしまう。警戒が厳しくなっているのか?と心配になる一同に「違う……警戒は厳しく無い………いつも通りだよ。でも………」口篭もる花人に代わりやれやれと裁来が話しを始める「どうやって神疆に行くのかは知らないが………それがな神疆との境の警備を一通り見回って帰る途中にその何だ………″食い散らかした跡″を見つけちまってな……多分あの神堕ちがやったものだろうけど、魂の残骸が酷く砕けていて破片が彼方此方に飛んでてよ………見るに耐えなかったよ」なるべくなら、その光景を一刻も早く忘れたい二人だったが花人が唾を飲み込みながら「あれは死浪しかも神疆を守る″飼疆″だと思います魂片の一部に彼等が着ている″服岐″呼ばれる加工凝縮された神器質の一部が落ちていましたから………」そんな話にフクローさんが現れ「なら″神堕ち″は(光る球体を見上げながら)中に入ってしまったということか………然し一目散にこの死都を目指さず、そこの彼女を狙った手前、直ぐさま″卍燈籠″をどうにか出来ないかの」黒いボックスを見ながら話すフクローさん。「それでどうやって神疆の中へ行くのですか?」と皆でオウシキさんを見る。ポンと項垂れるシヲジさんの肩を叩き「背に腹はかえられない、リニャンやイシドセくんも………もしかすると神疆にいる可能性が高い」最初は目が泳ぎ躊躇っていたシヲジさんだが息子の名を聞き「分かった、だが俺とお前の一存では決めかねる。一度小屋に向かい″カマチとワエ″に話してからだ」そう言うシヲジさんに分かったと頷き他のメンバーに向かい「ここから死人街の端まで移動する。そこにオレやシヲジの仲間がいる。ある物を使い神疆に入るが元々は似神非力を持たない我等ただの死人が侵入するために用意していた手段だ。故に俺達の独断で、それは使えない………だから仲間の了承を得次第、そのまま神疆に向かう!」そう言って一行は死人街の外れに向かう。死人街の端に建てられた小屋……一刻ほど前、ここで翠の羽織の死浪と大きな死獸を連れた男の子と女の子が対峙した場所だ。嵐の後のように部屋に残った死人の二人は疲れ果てていた。「ワエ起きてるか?」そう言う死人に対し床に臥せりながらも「大丈夫だよ。意識はあるけどしばらく動けないかな……オウシキとシヲジ……帰ってこないね。リニャン達とはすれ違いになったみたいだけど」心配そうに話すワエに「まぁ、あの死獸?に翠の羽織の死浪も一緒だ。イシドセとリニャンの二人の身なら心配無いだろう」静まり返っていた空間にドアが開く大きな音が木霊する。動けないワエを守るように前に出るカマチ……然しその警戒はすぐに解かれ「びっくりさせんなよ、オウシキそれにシヲジえっーと何だ?ぞろぞろと死人?なのか」驚くカマチ、後ろのワエは様子が分かっていない。一時前まで何事も無かったこの部屋で何かが起きた!部屋の様子と倒れる仲間を見て其れを察するオウシキとシヲジ、奥にいるワエを抱え上げながら「どうなってんだよ!?俺たちがここを離れた後何があったんだよ?」尋ねるシヲジにゆっくりとカマチが「まぁ……色々かな……リニャン達もここに居たんだが?会ってないのか?」リニャン達?ここに居た?ここにリニャン達が来たのか………俺たちに会いにか!心の中ですれ違いを悔やむオウシキたち、だがぐっと抑えて「会っていない……だがおそらく″俺たちがいると思った神疆に向かっているはずだ″」その言葉を聞き「そうだな………あの翠の死浪も一緒だったようだしな」翠の死浪………「なるほど、丁寧に立ち回ったつもりだったがオオキミ直属の飼疆には勘付かれていたか………(真っ直ぐと二人の死人を見るオウシキ)アレを使う」その言葉に「″卍燈籠″の場所が特定出来たのか?」然しオウシキは「状況が変わった(言師の方を見ながら)卍燈籠の有無に関わらず″最も重要な確約″が取れている」オウシキの視線の先にいた白い衣に黒い竜の模様が入った服、髪留めには三日月の中に菱形の宝石………目を大きく開きその者が持つ″本″を凝視する。「神約聖書………なら此奴が………こんな女子が″ゲンシ″だというのか………」コクリと頷きカマチを見るオウシキ。沈黙の後「分かった……そうだな、確かに″確約″という直接的なモノが取れるに越したことはない、だがいいのか?そこのゲンシも一緒に連れていくのだろう?オオキミに近づけるのは少し心配なんだが」不安そうに語るカマチに「オオキミ達がいいなら私はいいよ、私は皆ほどオオキミを守りたいって気持ちよりもリニャンちゃんやイシドセくん、この死人街を守っていきたい、この街の中心であるオオキミを守れば、おのずと守られると踏んだからなんだけど」抱き抱えられふぅーっと一息入れながら話すワエそんな彼等に頭を下げるオウシキ「すまん………こんな形で晒すことになった。あんなに準備してきたのに………」そんな頭を上げないオウシキに「リニャンちゃんまってるんだろ?(カマチの方を向いて)イシドセくんも二人の笑顔を見たいのはお前らだけじゃないっての」そうそうと頷くワエ、そんな二人の想いを聞くオウシキの後ろから「必ず馬鹿ガキ共は連れ帰る、行くぞ!オウシキ」と背中を叩く。そんな彼等の意気込みを削ぐように外に一番近かった裁来が窓から外を見る「おいおい、さっきまではあんな軍勢居なかったはずだぜ」小屋を囲むように赤い袴に黒い頭からスッポリ入った服そんな一団が襲う訳でもなくユラユラと揺れている。其れを見た花人は「ちっ!嘘でしょ!″御魂″まで出してくるの?しかも、この数オッサン達ほんとに危険視されてんじゃん」御魂とは本来神疆の最外層を守っているオタクサが作り出した″魂″である。″工魂″と呼ばれる神器質と普通の魂の一部を混ぜ合わせた物に神器質性の袴と衣を羽織った普段は間違っても死人街に持ってきていいものではない。そんな御魂の間から″蒼の羽織″を靡かせながらスラッとした男?女?どちらとも取れない死浪が現れるその時死人の少年のナハ君が「すごい、今日だけで一気に二人の虹晶席に会えるなんて」興奮しながら話すナハ君「あれって″蒼の席″最縮の武器を用いる女性の死浪だって」そんな彼女の評判に対し花人は蒼の羽織を見た瞬間に頭を下げ蹲りながら「冗談でしょ!何でよりによってあいつなのよ!普通は小坊主の管轄なのに!面倒いことはやんないあいつが(確認するように窓からそっと覗くも、眉をしかめ髪を解かす彼女の姿に)あのふてぶてしさちっとも変わらない…」不意に髪を弄りながら窓の方を見る「鬼蜜様?中が気になるのですか?」同行している飼疆が尋ねるが「いいえ、何の問題も無いわ………中にいるのは数名の″死人″何でしょう。さすがに(辺りを見渡し)″御魂″で囲むのは度を過ぎていると思うけど」そう言う鬼蜜だったが、傍らの飼疆は「鬼蜜様も先ほどの″ありさま″をご覧になったはずです。あの仕業を行った者の特定が出来ない以上、我等は全ての者に警戒を続けなくてはならない(小屋を一別して)心配せずとも連れてきた″御魂″は神疆にいる一部だけで他の″御魂″は囲折合の警護に集中させていますので問題ありませんよ」じゃ後はまかせると、そこらの岩に座り髪を弄る鬼蜜バタンと小屋の扉が開き中から白い衣の女の子が現れる。視線がその子に集まる。動かない″御魂″その間から一人の飼疆が歩みでる「私は神疆を守護する死浪が一人、ここに神疆に仇なす死人がいるとの報告があり、この場に現れました」丁寧そうな言葉とは裏腹に見下したような目からは実力行使ありありの態度が見て取れた。ここはフクローさんに交渉を一任する「新疆からわざわざ(頭を下げながら)しかしながらこの中にいる死人は勝手気ままな秘密基地気分で集まった、そんな暇を持て余す者ばかりです。貴方様のような力を持った飼疆ならいざ知らず、何の力も持たない我々がいくら徒党を汲もうと焼け石に水。ただゆっくりと″転生する″その時までを過ごす其れだけなのです・」自分たちには害はないのだと説明するも″御魂″のコントロールを緩めずに「ふむ、そんなことは分かっています分かっているのですがね………ここに来る途中我等の仲間が食い荒らされている現場を通りました。勿論其れを君たちがやった等とは思いません……ですがその小屋の中は改めさせてもらいます」そう言って近づこうとする飼疆に小屋の扉を閉めてそれ以上の侵入を拒むフクローさん。「何のつもりだ!」と御魂を持って迫る飼疆に「いきなり物騒ですね、中には怪我の治療をしている者もいます。それに″御魂″を持ってことに当たるなどこの死人街に長く住みますが初めてですあなたこそ″何のつもり″でしょうか?」何のつもりだと訪ねられ私は飼疆だと繰り返すばかりの男にやれやれと端に寝ていた大きなノッポの女性が起き上がり「そんな言い方じゃ力を持たない方は納得しないでしょう。」腕を伸ばしながら「へぇ、まだ若いじゃんしかも………その服、死んでそのままってわけじゃないみたいだしこっちは長いの?」気さくに話しかけるノッポの女性にあなたは?という視線を送ると「あぁ………自己紹介ね(後ろを振り向き親指を立て羽織を指しながら)″蒼の羽織″って言えば大概察しは付くって………あれ?ほんとに知らないの」羽織を眺めつつハァ~と少しガッカリして羽織を肩に掛ける。同時に頭を掻きながら「虹晶席って言えば有名なんだけど………まぁ今は色んなお守りというか何かの時の用心棒やってるのさ………んでここに来る前この死人街と神疆の間の境で、そこの飼疆のお仲間が″何者かに喰い散らかされてたわけ″その犯人といっても現状から神堕ちの仕業だろうけど、こうやって当てもなく探してるってわけ、あんたらが″神堕ち″何て面白くもないジョークかますわけでも無いんだけどさ、お仕事なわけよ、プライベートなのは重々承知な訳でさ、中を確認だけさせてくんないかな?」お願い出来ないかとしゃがみ込み頼んでくる蒼の羽織に「其方の都合はわかりましたが………中の確認は遠慮したい、神堕ちはここにはいないし喰われた飼疆と面識はない、確かにこの死人街に住んではいますが、あなたがたのように″力″を持っていないのがこの死人街に住む死人です。故に神疆に住むあなた達のようにオオキミへの想いも異なるんです。自分たちのプライベートを晒してまで何もない事を証明するつもりは毛頭ありませんよ」淡々と断る理由を拵えるフクローさんに其れ言われると困ったなという顔をする蒼の羽織だが「もういいです。この所こういう死人は増えてきてます。鬼蜜様はお下がりを!」すると小屋を囲む″御魂″が一体前に出る。その横から「この死人街も死都の一部だ!その小屋を吹き飛ばしてでも中を確認する!」強い意志を示す飼疆の男。彼の言葉に合わせてか黒い服はその形状を変え中から赤い袴に赤い晒しを胸元に巻いている死人……厳密には死浪の女性が姿を現す………目は虚ろで意志を感じられない。これが″御魂″なんだと念いを巡らせてしまう。「これは基は死人何ですよ、″鍵″を持たぬ者にオタクサ様は擬似的に″鍵のかわりになるモノ″を与えたんだ」死人の技術力の進化には驚かされると心の中でフクローさんがつぶやく。愉悦に浸る飼疆の顔を見て「わかりました………しょうがありません。(中を伺いながら)私達はただの死人対抗する手段はありません」そう言いながらドアノブに手をかける。然しドアノブに手を置く言師の背後には慣れ果てた死人の″御魂″が赤い晒してはいつの間にか腕を浸食して絡み付く先端の形状は鋭い鎌のようになり言師の首を捕らえるが……大きな三角形にはじき飛ばされてしまう。ドアノブを握る手に力が入り「これが死人の王のお膝元のマナーですか?」そう言うフクローさんに飼疆は「ここは死人王オオキミの国、オオキミの為ならば″皆喜んで消滅を受け容れるさ″特にただの死人は駒に過ぎないからな」当たり前のように発言するその態度は感情的ではなく、ごく自然に聞こえる″常識″ここでは疑う事など無い。「″骸供魂″くせに我等に意見するだと?!身の程をしれ!」″骸供魂″一部の死浪、特に死都に住む飼疆が好んで使う差別用語。死人には大きく二つに分かれる。″鍵″と呼ばれる魂の力を解放出来使える者と″鍵″を持たず魂の力を解放出来ない者、後者は一般的な死人を指す。魂の力は全ての死人が持つというかそのものの力だだが、その力を使う為には″鍵″と呼ばれる取っ掛かりが必要なのだ。その″鍵″は死人それぞれで異なり生きている間自身の魂のそばを離れなかったモノ。大概のモノは執着していても壊れたり無くなったり離れてしまう。それはそのモノが、その人自身の魂と合わなかったからだ。だが″鍵″となるモノはその人が持ち続けられるモノ。つまり魂に拒絶されなかったモノ其れが″鍵″となる。彼ら飼疆は自身の力の誇示の為、力を持たない死人を蔑んでいる
亡骸、供物=使えない魂、そのように考えてしまった。ドアノブを握りながら哀しげに心に沈む声をただ聞くしか無い言師であった。「″骸供魂″?死浪?何者なんだよ!?」″御魂″の攻撃を受け弾くそんな白い衣の″骸供魂″と思った者が、此方を振り返りながら飼疆を見ている「巫山戯んな!たかがクソのような野良の死浪が!!!」自身の得物となる山登りのツエを地面に突き刺す。ブーツにピック、防寒着……山岳ブーツが踏み出す足元は小さな氷山のようにせり上がる「死浪が全て同じだと思われては困る!オオキミの名の下に本来の死浪の姿を見せてやるよ!」小屋を囲むようにせり上がる雪崖、逃がす気は無いようだ。ピックに力が籠もる。(如何するんですか?小屋ごと潰されそうな勢い何ですけどまぁ小屋の中には螺馬ちゃんと夢神様もいるから何とかはなるでしょうけど……)心配そうに心の中から表に出ている、もう一人の僕じゃなくてフクローさんに言葉を漏らすと、少し黙った後に小さな声で「言師少し″心が痛む″かもしれないけど少しの間我慢してくれ」えっ!えっ?と反応する言師を他所に雪崖が地面から言師を跳ね上げる。然し防御をとらない?弁天の力で防ぐ事もせず跳ね上がった体はそのまま地面に叩きつけられる。(イッターくない?アレ?)表に出ているフクローさんは傷だらけで震えているのだが?神世界ではあるが、言師本人は生身の生きた人だ。死人ではない。魂だけの存在ではない。なら″痛み″というのはあるはずなんだが………″痛みがない″いやそんなはずはない。今までは七福神のみんなに体を貸していても、動けば体の軋みみたいなものは感じていた。感覚は共有しているはずなんだけど………立ち上がるフクローさん。其れを眺めつつ「どうした?口数が減っているぞ。当然だろう。まさか″同じ″だなんて思って無いだろう。野良は所詮″野良でしかない″さぁ自身の魂の器を恨んで」傷つきながらも真っ直ぐ見つめ「そういうあなたは口数が多いんですね(息も絶え絶え言葉を紡ぐ)確かに″魂″の力を″引き出す″という点では″同じではない″ですね。私よりもあなたの方が″より引き出せている。だけど″魂″という観点から見れば″あなたの魂も私の魂も変わらない″つまり″同じだって思ってます″だから″魂の器を恨みなんかしませんよ」淡々と言葉で返すフクローさん。所詮どこまでいっても″人″でしかない飼疆と″神″であるフクローさんの知識は比べるまでもなかった。その言葉にピックを何度も地面に打ちつけ「弱いくせに!野良のくせに!今どきの野良の死浪や死人はまるで自分たちが力を持った強者のような物言いをする。誰かを何かを″力もないくせに!!″都合のいいときだけオオキミ様だの死都を利用しやがる。黙って」「言うことを聞いていればいい″力も持たない弱者だから、そうやって蹂躙してきた結果がこの状況なのでは、そして今からもその態度は………いや関係ないか″力″は変わらない!!」一見すると真っ直ぐに見上げるボロボロな言師と無傷で氷崖の上で見下す飼疆………だが顔の表情は真反対の顔つきだった。そこに「はいはい飼疆様、そんな顔しなくても、しゃーなしですよ(フクローさんを見て)お嬢さん?本当にお嬢さん?………まぁいいや何か……こう卓越してる?悟っている?みたいな~どうよ、こうやって世間話しててもな………そこでどう、知り合い同士で話した方が早い″出てらっしゃいこん~にちは赤ちゃん~♪″」シーンと静まり返る空間に「いーち、にー、さーん!」目を瞑り大きなカウントダウンが迫る。ギーと扉が開くそこには気まずそうな花人が現れる。「花ちゃ~ん元気って窓から覗いちゃって、お姉さん恥ずかしかったんだぞ♪」ヤッホーと手を振って花人さんに笑顔を送る。しかし其れを受ける花人さんの表情は虚ろだ。「全く枯枯と連絡取れなくなってアタシが呼ばれたけど、まさか花ちゃんがそんな所から現れるにゃんて」世間話を続ける鬼蜜に苛立つ飼疆にまぁまぁとなだめながら花人の方を向き「あたしら″虹晶席″は死浪だ!死浪の原点は″死人神を守護して神世界の死人を守る″この意味は?」そう投げ掛ける鬼蜜に静かに揺れる朱い羽織「オオキミ様を守る………其れが………其れが私達の」諦めに満ちたその頭にチョップが落ちる「ハーイ正解♪」えっ~という花人に「固い、硬い、堅い…………ホントに御しがたい」一息おいて「でも″決意は行動も伴う″というわけで!」花人を蹴り飛ばす鬼蜜「手を出してもいいけど………そこの彼女死人じゃ……………いいえ、飼疆様では歯が立たない、下手をするとこっちに連れてきた″御魂″失う事になるわよ。神疆の守りを削ってまで連れてきたのはいいけど、ここの″御魂″を失うと上からどやされない?」判断しかねる飼疆に「自信があるなら飼疆様と二、三の神疆だけ残して後は神疆へ返すことを進言するわ♪」仕方ないと自身と四、五の″御魂″を残して神疆へ帰還させる。あらあら自信なさげと飼疆を見る鬼蜜に蹴り飛ばされていた花人が起き上がりながら「そうね虹晶席としては、今貴方に付くのは道理よね、でもさ、″私ら飼疆じゃない、あいにく先約がある″器用じゃないので一緒には出来ません」さぁやるわよと言師の横に立ち鬼蜜と向かい合う。はぁーと溜息を一度ついて蒼の羽織を靡かせる「花人の相手は私がしますか?飼疆様を裏切る可能性もありますし、それともアタシが白い服の彼女?の相手でも良いですよ。如何しますか?」横にいる飼疆を見ること無く話す鬼蜜。「いえ、信頼はしています。私はそこの″骸供魂″は私がやります。お仲間の相手は貴方に一任します。期待に応えて下さい」(ふん、構わんさどうせ″御魂″と私がいれば一掃できる。だがその前にこの生意気な骸供魂は私が始末する……これだから憂さ晴らしはやめられない)言師と花人さんの間に氷崖が隆起して離ればなれにしかも後ろの小屋が一際高い氷崖で押し上げられた。「心配しなくても″誰にも手を出させん為だ″」言師の前に立ちはだかる登山姿の飼疆その周囲の雪崖の上に囲むように″御魂″が配置され動かない「さて、蹂躙の始まりだ!」黒い羽織が空を覆う一度展開した黒い羽織は三人の御魂をコーディネートしていく。一人は黒い防空頭巾の小さな女の子「お母………さん………お兄………ちゃんどこ?午後?いない…………ここで………待って………何で…………来ないの?独りはやー………やー…………イヤーーーー!!」圧力が氷崖にヒビを入れる。体育座りのおじいさん「もう少し………あと少しだったんだ数ヶ月………いや数週間…………負けてない!負けられない!あれだけの犠牲を出して………″負けましたじゃすまない!″犠牲にしたかった訳じゃない………勝ってる時はあんなに………あんなに………」悔しさに爪を噛む。飼疆の左右に展開する二人の御魂そして飼疆の前に先程の倒れていた女の御魂が飼疆を守るよう立っている。「怖いかな、恐いかな、だが!私を軽んじたこと!を感じながらぐちゃぐちゃにしてやるよ!」ふぅーっと息を吐き「こうやって周りを囲まれれば、まぁいっか!じゃ交代!」そう言う白い服の彼女の真意がわからず余裕をかましているつまり「やれ!形など残してやるものか!」とお怒りだ!四方から襲いくる″御魂″しかしそんなことは気にせず一際高い氷崖の上の小屋を覗く。四方の攻撃が炸裂せず大きな三角形がその全ての攻撃を弾く。目を開ける白い服の女の子「禄寿の読みは確かよ。あたし達の目的は″死人の相手じゃないわ″」女の子が腕を上げると三角形が高速で回転して御魂を怯ませる程度に切りつける「取りあえず………」雰囲気が変わる。御魂全員の腹に衝撃が走る「ここを切り抜けるんだな!」ベロを出して器用に喋る女の子「ん、まだ立つのかな…………」ベロを出したまま哀しげな顔をする。「何をしている!早くたたんか!キサマらは″御魂″我らの道具…………オオキミ様を守るためだけに存在するのだろう!」氷崖を使い無理やり立たせる飼疆。まさに″御魂″は盾や的の扱い、その隙をついて攻撃してくる。″なるべく傷付けたくない″という言師の思い「この氷崖が″ここにある全ての言行を支配している″ということか」辺りを見渡す言師こと寿老が表に出て来ている。(なんだ………彼奴は鬼蜜の言葉ではないがコロコロと性格が変わっている。彼奴の動きを読みずらいのも其れが要因是では、折角の″御魂″もここに残した意味がない)………氷崖の動きが鈍くなった。氷崖の壁を踏み締め上空へ上がる寿老直ぐさま三角定規が山小屋を囲むように展開する「ターゲットを変えるなんて気が多いのねぇ~♪」展開する三角定規を回転させ受けた攻撃を弾く、自身の策が見抜かれた飼疆だが構わず″御魂″「攻撃の手を休めるな!どうやら″ただの骸供魂″でないことは理解した。なら″複数の手を使えばいい″」飼疆の命で″御魂″の小屋への攻撃は止まらない。攻撃は小屋へ届かない。其れでも攻撃が通ることはない弁天が小屋を守り布袋が氷崖を砕く拮抗状態を崩さないこれがフクローさんが提示した方法だ。一方小屋の中は弁天が防いでいるとはいえ衝撃が伝わり揺れが止まらない。勿論一撃でも三角定規を超えて攻撃がヒットすれば小屋が消し楠と化すのは小屋の中にいる誰もが納得している。「おいおい、大丈夫だと言われても″長く持ちこたえる気がしない″んだが、何とかなんねーのかっても無理か、ここから抜け出すことも今は………っておい窓の外を見て落ち着いてる場合かよ」裁来が窓の外を見つめるオウシキに尋ねる「状況は最悪か言師と死浪でもこの状態の維持が精一杯かだが(奥の見える神疆を睨んで)高さもいい塩梅だ。あとはワエそれにカマチ、少し無理をさせるが″このままここで行う″」意を決した低い声だけが小屋の中に反射する。外の騒音を掻き消すように。




