八十三ページ目
負けられない、負けるはず無い、だって食べて食べて食べて、負けるはずが…………”ないんだ!”心はそう叫んでも目の前の憧れだった。それは「悪いな、神力の増大はそのまま力に反映される。だからお前さんが”何故負けたのか”………馴れてないからさ」あっけにとられるコロマル「馴れてない?!どういうことだよ!?必要なのは力だ!圧倒的な!だから」「だから食べたんだろ”無闇やたらに”だが、容量を超えて食べ過ぎれば動きは鈍く力は出せない。簡単に言うと”自身に見合う魂の量なら神力は上がっていく、だけど神にも死人にも死獸にも”魂の器”が存在するんだよ。器がある以上限界は必ずある。多かれ少なかれその限界に達してしまえば、後は”器から漏れる”垂れ流す状態になる。それは例え神力として感じられても”使えていない神力”なんだよ。そんなものいくら膨れ上がっても”神力を感じはすれども脅威では無いのさ”」そういう狗牙はコロマルの一撃一撃を見切るように躱していく「大振りで”持て余す”聞こえる音波ってのは限られている。だけどその領域全てが聞き取れる訳じゃない………それと同じなんだよ。力も持っているから”全部余す事無く使える”なんてのはごく一部だけあらゆるモノは等しく”自身の持つ力の一端のみ”しか使えていない」(最もその使える力を増やすために”経験”ってのが必要なだけだ…………”時閒”としての経験があったおかげってのは言えないのだけどな)ちぃっ!」納得いかないコロマルの神力はどんどん膨れていく。それに伴いその力に呑まれるようにコロマルの体は歪さを極めていく。牙は膨れ、まるでマンモスの牙のように長くなりその頸はキリンの如く長いがコロマルの元の姿である影響が色濃く反映される。長い頸は拗れ歪む、その反動なのだろう片脚は太く大きいが片方の脚は痩せ細り震えている。器以上の神力は膨張の末、行き場を失う、それでも何とか着地点を見つける為に体に神力を押し込める。膨れ上がる旅行前のトランク、ゴチャガチャ何処かを抑えれば何処かが飛び出る。だがコロマルには其れを行う以外”力を行使する方法がない”だってコロマルには神を食べた、つまり”力”を得てからの”経験”が圧倒的に足らない。だから攻撃はもはや当たらない。それどころか手当たり次第に破壊する行為は”攻撃では無かった”一閃ただそれだけをコロマルに浴びせると神力が空気のように抜け落ちていく。神力が抜け落ちたそれは弱々しく立ち上がる。直ぐさま神力を増幅させ歪な化け物に変わる。そんなコロマルに「何度やっても同じだ。そんなことはお前さんが”よく分かっているだろう”」くそっ!と祈琥を狙うコロマルだったが黒いボックスはその攻撃を意図も容易く弾き返す。「いやー我ながら感心するわーこの性能、神世界を変える一品ですよね~」山月は余裕を見せながら試験データを回収している。詰んだな………そう狗牙が確信した矢先………「此奴………まだやる気なのか?!」狗牙を覆うように巨大になるコロマル「幾ら巨大になったとし!!」破裂音と共に綿毛が散乱する………一面綿毛だらけになる。その中から体幹ごと脱出する狗牙「自爆?!違う!おい山月!社長!皆は無事か!」そう叫ぶ狗牙に「ノープロブレムですよ。こんな自爆対応も出来ている……なんて優雅な商品なんでしょう」ルンルン気分な山月を他所に、もう一つの黒いボックスが廻りの異変に気づく「狗牙様!!あの獸神は何処ですか?!跡形もないのは、いくら何でも可笑しいですよ!?」社長ボックスの言うとおりコロマルが自爆?したにしては辺りに散らばっているのは魂の残骸ではなく、綿毛が散乱している。その綿毛を見ながら狙われていた祈琥が口を開く「これって!間違いない!これ”オタクサ様の死獸の一体の毛だよ!確か霊林炉を定期的に巡回してた十二の死獸の一匹”未”とかいったような」その言葉にはしゃいでいた黒いボックスが「ということは”逃げた”と捉えるべきですよね、狗牙様には勝てない、かといって(祈琥を見ながら)彼女を守る”最強無比な発明品”の前では触れる事すら叶わない、ならここは、道草に食った死獸の力を借りて、引いたと考えるべきですね」呑気に話す山月に「狗牙様!!なら直接”卍燈籠”を狙ってるんじゃ!!何をするか分からない!!」急ぎましょうと囲折合へと促す社長ボックス、そんな中、弟が居ない事に胸を痛める祈琥の姿があった。………「くっ………くっ!ハァッ……力を使いすぎた、それで(尻尾にしがみついている死人の少年を見ながら)どうしてついてきた?というかそんな無謀な真似をする。振り落ちれば、ただでは済まないはずだ」そんな問いかけをされて男の子は「だって、コロマルが”オオキミを喰わないとも限らない!”なら一緒について!大丈夫なの?」質問の途中ではあるが倒れ込むコロマルを気にする太市、だがそのまま倒れ込むコロマル…………「しまった!」気づくと建物の中に居るコロマル薄暗い部屋、動こうとすると、足元のメモに気付く『卍燈籠を貰いに云兎の元へ行ってきます。期待はしないで下さい。云兎はあんな性格だからオレにも渡してくれるかどうかわかりません。でも必ず戻ります』信じている。文脈からはソレが伝わってくる。部屋にある大きな柱を眺めつつ(ここは、中央の建物の中か……喰えば神力が上がるのは間違いなかったが………それだけではダメか………狗牙様の言うとおり神力だけが膨れ上がっても意味がない………とはいえ、使いすぎか、腹が減ったな)ゴソリと起き上がるコロマル。今は神力を抑え頸のない死獸の姿をしている。ふらりと部屋を後にする。その足取りは中心部へと向かっている…………猛スピードで霊林炉を抜ける狗牙囲折合に入る手前広い空間に出る。そこには死浪と呼ばれる。疑神非力の使い手たる死人が守っているはずだったが、皆一様に倒れている。『恐らく、先程の獸神の仕業ですね』山月が進言する『魂を揺らしただけです。しばらくすれば起きます。そんなことより早く中へ』”そんなこと”社長にしてみれば死人の安否はどうでも良かった。ただ”卍燈籠こと照留のことだけが心配なだけ”危うい考え、これには”気を許すべきではない”内心そうおもいながらも「まぁ、下手に対立するよりは良かったか……!」中に踏み込もうとするも真横から現れた”ナニカ”の一撃がそれを阻んだ。全員を載せたまま霊林炉の方へ一歩下がる。前を向くと囲折合を背に赤い肌から熱気が上がる大男が独り、背中越しに佇んでいる。その赤い肌と西洋の顔立ちはまるで”赤い鬼”そのものだった。一同が見とれる中、祈琥が男に声をかける。「夏蓮亜様!!貴方がどうしてここに?惨支おばさんの護衛しているって祷珀が……」大男が此方を向きながら、一瞬だけ視線を祈琥へと向ける「先程の太市様が連れていた死獸とは違う………お前は”神”か?」そうだけど違う!という祈琥の口を尻尾で塞ぎながら「そうだ……確か俺はお前さんの言うとおり”神”だが対立するつもりは」無いと言おうとするも「狙いは”オオキミ”か!」辺りを見回たし怒る夏蓮亜恐らく廻りの死浪を倒したのも狗牙のせいにされていることは容易に想像できた。小声で「山月か社長のどちらか、そこの彼女を連れて先に建物の中へ……オレもすぐに追いつく、この人数、狙いはオレだから問題ないが、あの獸神は野放しには出来ない」先に行くよう促す狗牙だったが黒いボックスは動かない「何のつもりだ山月ならいざ知らず、あれほど”卍燈籠”に……お前さんの嫁の安否を気にしていたお前が動かない?気にならないのか?!」促す狗牙に黒いボックスはポツリと「今すぐにでも……向かいたいですよでも………”今の私が向かっても意味がない!”………確かにこの状況を判断すれば狙いは”狗牙様”に間違いなく……中の様子に詳しい彼女を連れて行けば”卍燈籠”……照留に行き着くでしょう。”卍燈籠”の解除方法も山月様ならご存知のはず救い出すことは容易です……ですが十中八九”アレ”と出会うでしょう………そこの彼女を連れ去ろうとしたのも、間違いなく”卍燈籠”を照留が狙いです。ですが今の照留も、其れを守るはずの私も………”力が無い”戦いにすらならないでしょう。間違いなく”卍燈籠”の居場所が分かれば彼女は食べられ、私や山月様は壊されゲームオーバー……例え狗牙様が駆けつけられたとしても、そうなる可能性の方が高い」さっきの見てなかったんですか?!と言う山月をスルーして狗牙に向かいながら「なので”ここを離れない!””行くのなら必ず狗牙様も一緒に向かう”多少時間はかかっても構いません。これだけは譲れません」必要なら手を貸すと言わんばかりに狗牙の横に並ぶ黒いボックスそんな黒いボックスにアイデンティティをクライシスされたもう一方の黒いボックスは「えーえー、分かってますよ。さっきの攻撃だってそこの彼女を連れ去るのが目的だって………だから全力じゃないって………狗牙様の相手しながらの片手間だって………心配しなくてもそこの赤色の死人の攻撃なら何とかふせげんじゃないすか」なまじふて腐れるように狗牙に言い放つ「悪いな………此奴らだけでもついて行けば、あの獸神のスキをついて弟取り返せたかもしれない」そう申し訳なさそうに話す狗牙に「いえ………あの子は自分の意思でついて行ったんです。何か理由があったにしても………」その場に座り込む祈琥「私はここで待ってます………きゃーなんか今のセリフ旦那様を待つ若奥様的な的な………コホンなので」そんな若奥様の隣にドスンと座るリニャン…………「あたしのだから!!あたしのグーガなの!」そこは譲る気はないみたいビリビリと火花散る二人の横に座るイシドセくん「とりあえず僕たちじゃどうしようもないみたいだし、黙って見てます、でも枯枯さんはいいんですか僕やリニャンはただの死人だけど枯枯さんは死浪でしょ」其れを聞くと、うーんと悩んだ末、立ち上がり夏蓮亜の元へ「お前の羽織……虹晶席か?」という夏蓮亜に対して「はい、お会いするのは初めてになります。我等が死浪の”祖”私は虹晶席で翠の色を貰っているものです」丁寧に頭を下げる。そんな枯枯に「それで、お前は死浪としての責務である”オオキミを守る”為に手でも貸してくれるのか?」当然といえば当然か、今までは見極める為に行動を共にしていたにすぎない。元々は彼の立ち位置は向こう側なんだと今になって思い出す。然し翠の羽織は一行に此方を向いたままだ。「確かに我等”死浪”の本分は”オオキミを守る”そのために死人でありながら神と戦う力”似神非力”を与えられた。死都に入った神を野放しに出来ないのも事実、あなたに加勢して目の前の獸神を排除するのが当然の流れ………流れ何ですが………私はここに来るまでに囲折合に入っている”化け物”と会いました。その化け物は同じ神を喰らい、死人や死獸を喰らっている。正真正銘の化け物なんです。あんなモノは一刻も野放しにしてはいけない死人
や神、死獸、全てにおいての害悪なのだと認識しています。勿論それは”オオキミに取っても同じなのです。故に私はあなたではなく獸神に味方します」武器である数珠を向け宣言する枯枯坊主に対して「なるほど………構わんよ、それぞれの信じる正義は違うだがそれが”オオキミの為”になるのなら………何の問題もない!」真っ赤に燃えるような色の肌で宣言する夏蓮亜その二人の間にとって入る狗牙「お前さんの意思は伝わったが、お前さんの似神非力では戦えまい、単純に意識対が強さを決めるお前さんの力では此奴には通じない」苦々しくも一歩引く枯枯坊主「お姫様達を頼む」そう言われた枯枯は「気をつけて下さい……夏蓮亜……我等が祖たる彼はこの死都………いいえ”神世界の反”と言われるほどの使い手です。詳しくは分かりませんが”似神非力”ですが”似神非力”ではないのです」深刻そうに話す枯枯にどうしたもんかと踏み込めない狗牙そんな彼に「どうした獸神………所詮は人でしかない私を畏れるか、なら此方から仕掛けようか?!」そう言って更に赤さを増す夏蓮亜の肌は赤鬼の名前がよく似合う程真っ赤に染まる。赤い肌に長く高い鼻、ヒポクラテスのような堀の深い顔だが眼光は鋭い程よくしまった筋肉はテカリを見せている。金髪をまくし上げながら拳がスルッと抜け出してくる。まるで意志を持ち吸い込まれるように標的に迫る赤い拳まばたきすれば次に開けた瞬間ブラックアウト状態が待っていそうだ。だが狗牙は後ろ足を少しずらし体幹を傾ける拳の軌道は直ぐさまズレを修正しようとするも一歩引く、引いた直後、真上から尻尾の一撃がさっきまで拳のあった場所を通過する。通過した直後。赤鬼の姿はそこにはなく狗牙の顎めがけ一撃が飛ぶクリーンヒットだが顎は上には上がらず拳との押し合いが続く「大概は通じてきたんですが………戦闘に特化した神にはやはり通じませんか」痺れた手を振りながら話す素振りには、不安は感じられない。直ぐに構え治し狗牙の間合いギリギリに陣取る夏蓮亜、両方共に動かない「どうして両方共動かないんだろう?」戦う経験が無いイシドセくんが疑問に思うと、横のリニャンがグーガ遠慮しなくていいのに!と呟くが、黒いボックスの社長が「あれは、遣りにくいですね」と一言こぼす。”遣りにくい”とはなんだろう。と分からないイシドセくん達に、もう一つのボックスが「”獸神の間合い”話ですね」と説明する「獸神つまり私も含めて獣の姿をしている神を大きな括りで”獸神”と定義しています。まぁ龍神は例外ですよ。あれはホントに別物なんですから………話が逸れましたね。獸神の多くは四足歩行です。故に攻撃手段は”牙”か”爪”あと尻尾は皆使える者と使えない者がいるので、やはり前者ふたつが攻撃手段になります。しかも爪はバランスを取ることも考え”前足”だけに限定します。私達のように小柄な獸神ならともかく、体幹が大きくなればなるほど後ろ足は踏ん張りの要なのです」それが分かったからって神には勝てないんじゃないかな、結論から話すイシドセくんに、戻ってきた翠の羽織が横に座りながら「だから重要なんですよ”間合い”が」間合いと首をかしげるイシドセくんとリニャン「基本”死人は神には勝つことはない”私に似神非力の戦い方を教えてくれた師が習うに先立ち言われた言葉です。神に勝てないなら習う意味はない………最初に思った事です。だって非力な死人が神に対抗する唯一無二の方法だと聞いていましたから、まわりで習っていた(羽織を摘まみながら)これを今羽織っている者達もふて腐れたり、話が違うとその場を離れようとしたり、興味が無かったり、何考えてんだかわかんなかったり、ウケると笑う者もいましたね」懐かしそうに話す枯枯「然し、その後に自分たちの似神非行を身につけた私と仲間は一つの団体を作りました”虹晶席”七人の死人で構成された死浪の集団、我々は強い”そんなおごり”は神に挑むという愚かな行為で師匠の言葉を再認識させられました。相手は八百万の神、ある死人街が八百万の神の縄張りまで獲たいと分不相応な願いを持ったことが事の始まり、駆け出しだった私達も”八百万なら”なんて甘い考えでした。八百万の神は数こそ多いが神の中では特出して戦闘に特化している訳ではない………なんて勝手に解釈して………ですが結果は酷いものでした。死人街は跡形もなく無くなり、私達の似神非力はいっさい通じなかった。恐ろしいものです。私たちがひれ伏す地に大きな風車を髪に付けた神が立っていました………それから神とは事を構えないことそれが”我々のルール”になりました。」神と死人との差を改めて聞いたリニャンだったが「やっぱりウチのグーガが一番だってこと?」と結論づけながら戦いを見守る。然し翠の羽織は「死浪………我々のような唯の死浪ならそうでしょうでも夏蓮亜………死人神”オオキミ”を守る彼は違います!神との戦闘経験だけなら、この神世界にいる死浪は少なくないです。多かれ少なかれ”神には挑んでいる”でもその大半は”経験”に過ぎない簡単に言うと”倒したり、勝ったり”が無いんです。神には死人を転生出来うる力がありますが、それは”神が決めること”なんですよ」どっこらせとその場に腰掛ける。激突する二つの閃光を眺めながら戦いを見守る。見ていれば分かる。そんな想いが彼の顔立ちから伝わり、一同は閃光の方へ釘付けになった。数度打ち合ったのちに、お互い一歩下がり「ホントに獸神なんですか?スキをつき顎を狙っても頸を引き、急所を避ける。自然の形態に近いはずの獸神は”避けることは無い”はずなんですが、あなたは違う最初の一撃もそうでしたが、まるでそう……まるでクックッ」笑う夏蓮亜に「戦いの最中に″思い出し笑いか?」投げ掛けられた言葉に「″間合いの取り方″だけです………その昔、この神世界に行き着いて間もなく″ある神″の討伐というのがある死人街からの依頼がありました。詳しくは分かりませんでしたが、その時の社に就いていた″五行神″の肝煎りで全ての神に″討伐の指示″があったそうです。今の連合の前身であった死人街の集まりは、この神を倒し若しくは捕らえれば、神に対する抑止力になるのでは?と考え独自に″ある神″の討伐出来れば捕獲を模索します。勿論そんなこと出来る訳もなく、ある神が神々からの討伐の傍ら軽くあしらわれていました。そんな神に″戦い方がすごく似ているんですよ″♪」嬉々として話す夏蓮亜に、狗牙は笑みを見せながら「それで、その神は今はいないのか?」そんな投げ掛けに嬉々としていた表情は曇り「″獸神″あなたと同じ仲間の神に………倒されてしまいました…………違う!………″あの神″そんなに弱くない!……獸神一概には言えませんが………少なからず貴方程度の力では″あの神には遠く及ばない!″………勿論貴方が全力を出していないことは分かります。あなたにとって私を倒すことに、そこまで出す必要はないと判断している………ですがそれでも″勝てない!″断言してもいいですよ。あの神には遠く及ばない!」余程″ある神″への執着が凄いのか否定するその眼は憎しみに満ちている。夏蓮亜のここに居たるまでの″戦いの経験″は、いずれ″ある神″と戦う為に得てきた力だということは軽く想像がついた。溜池を吐きながら狗牙は「そうかいなら、こっちも″ある神″とやらに本当にオレの実力が通じるのか験してみたくなった!」突っ込む狗牙、夏蓮亜の反応の前に目の前まで「突っ込む気ですか?!!」頭突きが届く寸前体幹のみを自重で後方へずらす、狗牙の頭は空を切る(このまま後ろ足で立ち上がって前の爪で!?体幹ごと倒れ込む気!)然し前足で踏ん張って後ろ足の踵落としが、夏蓮亜の横を通る。不意に夏蓮亜の背中がバッサリ切られる。その時夏蓮亜の頭に同じ場面が思い出される………あの時もそうだった目の前の″あの神″の死角をついた間違いなく気づいてなどいなかった………いなかったはずだった。「何だ?!てっきり獸神達の襲撃と思ったが(真横に座り)すまないな………この所追われているのが、獸神の実力ある神ばかりでなこのくらいやらないとと思って磨いでいたからな(ある神の手が夏蓮亜の背中を擦る)魂の外殻が傷ついて!?ほう~これは噂にはきいていたが″神為らざる力″というやつか、魂と同化して力を発揮するのか、討たれれば致命的だが、神相手にはなかなかどうして」そう言いながら夏蓮亜の魂の外殻に至った傷を閉じていく「さて、これでいいかな!?これに懲りたら危ないマネというのはムリかな、キミの性分はその体の傷を見れば分かる。なら程々に神と戦いをご所望なら(立ち上がり、その場を離れながら)俺~んとこにお・い・で~♪」そう言いながら″ある神″の声は遠ざかっていく………其れから幾度となく″ある神″を狙った数える事を忘れる程に………だが″それがオレを強くした″だから……いつからか襲うのが楽しくて………いや″ある神″に会うのが当たり前に楽しみになっていた…………でも在る時を境に…………″ある神″は居なくなった探した………きっとどこかに隠れて………そうだオレの襲撃が凄くなって…………飽きられたのかな?…………『⚪⚪様が討たれたんだとよ』違う!『最強と謳われた⚪⚪様が冗談だろ?』そうだきっと何かの間違『いや、ホントらしいな、しかも討ったのは″獸神の小僧″らしいぞ』………何で?どうして?……ウソだ嘘だ………嘘じゃなかった……不意に背中の痛みが回想から意識を引き戻した。そのまま倒れ込む夏蓮亜その背中から見えているモノが脈を打つ。ギャラリーも集まり「夏蓮亜様……大丈夫なんですか?」祈琥が狗牙にたずねると「心配無い………前に一度………いや他の者達と同じ致命的なダメージでは無い、しばらくは動けないが時期に動けるさ」………そんな会話だけが微かに聞こえ、そのまま意識が溶け込んでいく…………見慣れた死都の空色に、自身がまだ″この世界にいる″ことを認識される廻りには二つの影、だがそれは先程会話していた者達とは違っていた。起き上がると廻りには先程まで其処らに倒れていた囲折合を守っていた死浪達が座っている「あの獸神の仕業では無かった?ならホントに!」立ち上がろうとする夏蓮亜を支える一つの影「大丈夫ですか?夏蓮亜様?」同じような言葉と声質だ「心配要りません祷珀様。それより惨支様は?一緒では無いのですか?」そう言う夏蓮亜に「惨支おばさんなら云兎ちゃんが心配みたいで、先に目覚めた死浪を連れて囲折合の中へ」そう述べる祷珀に「祈琥様の話が本当なら……」そんな妹の名を口にする夏蓮亜に「えっ?!祈琥が来てるんですか?ここに?!」目を点にして驚く祷珀、彼女にとっては妹が院瀬見から出るなんて選択肢は考えられなかったようで困惑していた。そんな彼女を見て改めながら「えぇ………獸神の一行の中に祈琥様の姿がありました。経緯は分かりかねますが、少なからず″祈琥様自身の意思″で動向されているようでした」そんな夏蓮亜の話を聞きながら「ホントに祈琥が外に出るなんてことは無かったので、少し驚いただけです。」伏し目がちな祷珀に「申し訳ありませんが、このまま囲折合の中へ連れて行っていただけませんか?まだ体が本調子ではなく動きずらいので」分かったと大きな夏蓮亜に肩を貸しながらゆっくりと囲折合の方へ向かっていく…………「惨支様!お待ち下さい!我々が先行しますので!」囲折合の中を駆け向ける惨支、護衛をしている複数の死浪は彼女の速度についていくのがやっとだった。先程まで魂を揺られていた事もあって死浪の皆は本調子では無かったが、それでも娘である云兎を想う母親の気持ちは強く、その気持ちが先走り彼女の足を速める。二階の大広間で立ち尽くす惨支、周りには座り込む死浪の面々がいる。「これで1、2階は全て探したけど、これといって何か異変は無かった。それに云兎も居なかったし」そう悩む惨支に「然し、我等を襲ったあの死獸?は確かに、この囲折合に入っていきました……それに………」言いにくそうな死浪に「″太市くんも一緒にいた″のよね?」頷く死浪の面々(ということは、道中に祷珀ちゃんから話に聞いていた″太市くんが連れていた死獸が、彼らを襲ったということ?でも死獸にそんな力あるかしら、オタクサ様の死獸たちもそこそこ強いし、死浪と戦えるけど、触れもせず一瞬で)考える惨支の脇で、震えながら「俺、あいつとは遣り合いたくはないな……」ボソッと述べる死浪に「惨支様の手前だぞ。この身に代えても」そう得物を握る片方の死浪に「この身に代えて?だって……おまえは感じなかったのかありゃ死獸なんてもんじゃない、むしろ神に近い」震える死浪の腕を見ながら「この先は二手に分かれましょう。貴方達は今の状況を!!皆!端に散って!」天井から凄い勢いで何かが堕ちてきた!惨支の判断によりそこに居た数名の死浪は難を逃れる。煙の中から人影が見える。(死獸?じゃない何だ?死浪の彼等では戦闘は無理か………相手が何であれ、心に植え付けられた恐怖は冷静な判断を鈍らせる。特に戦闘では致命的)煙が消える前に「皆!聞こえるわね!とにかくここは私が何とかします!なので、この事をオオキミ様にお伝え下さい。出来れば云兎にあったら″安全な場所への移動″もお願いします。これは命令です!!行きなさい」活を入れられた死浪たちはすぐに「「「「「「御意!!」」」」」と散ってしまう。ふぅーっと息をすいながら全員が散ったのを確認すると「ただの死人がここまでよく入って来れましたね、それに(指さすながら)そこのあなたとそっちのあなた″普通の人″」煙が晴れると、そこには複数の死人がおり、その中心には黒い竜をあしらった衣に星と月のイヤリング、黒い鼻眼鏡をかけ、大きな本を持った少女が凛と立ち惨支と対峙していた。




