六十九ページ目
大きく空いた壁の穴、吹きすさぶ風の強さが、この建物の高さを感じさせる。あっけにとられること数秒、体感に当たる風が今の状況に引き戻してくれる。すぐさま空いた穴の方へ向かう。吹き上げる風にうっすらとしか目を開けられないもののその視線の先にはさっきの黒い獣?恐らく死獸か、あの異形性ぶりは悪性か。死獸もそうだが死人も神世界では魂として存在している物世界のように肉体に縛られてはいない。肉体に縛られた魂は生きている過程でさまざま影響により劣化してしまう。その率が高ければ高いほど死んだ後に肉体から解放され神世界に現れる際の魂の姿は元々の姿とは似ても似つかない異形性を示す。故に魂の劣化が激しい者を”悪性腫”としている。悪性腫は死人にも稀に存在するがほとんどの者は良性である。これに比べ”死獸”と呼ばれる他の生き物達は極端に劣化することは珍しくなく生きている頃とは姿形がまるで違う者が珍しくはなく、あぁやって首から上が(一見すると神にも見えなくはないが)変質しているものもいる。生前に首から上になにがあったかは解らないが頭が無いというのは想像を絶する事があったのは理解できた。去り行く後ろ姿に想いを馳せる一方この高さ、振り返り云兎にひとりで帰ってもらうように諭そうとするもズボンを引っ張って「太市見えなくなるよ?」膝をついてここで扉の外の死人の騎士達と待っていてもらおうとするも「白猫”帆掛け”」そう口にすると見る見るうちにやっこさんだった胴体と下半身の袴が船へと変化していく「乗って!すぐ出る!」言われるがまま彼女の白猫に乗り込む。すると帆が広がりまるで風の海を渡るようにフワッと流れていく……上手くいったと腕の中にある騒ぐ太市と共にある卍燈籠を眺めながら笑みを浮かべ「さてとコロマル今回はちょっとムズかったけど(触れられない顔ではなく頸基を代わりに)もう少し、もう少しでコロマルの顔治せるから……」あたしも一人だった生きてる頃も……死んだ後も毎日のラインのやり取り……楽しみというか義務感が先に出る。バイト以上の仕事量だった。朝起きてはチェックして既読、朝食を食べながらチェック、身支度しながらチェック、登校中、勿論学校でとなりにいながら、友達と呼べる子達と雑談ライン、息がつまる下校中、夕食、もう寝たい、そんな目を濾すって夜遅くまでそして又朝起きて登校……出来なかったスマホ片手に……ツイていない、なぜ?この時間だったんだろう……気づいた時は青空を眺め路上に倒れている。一瞬でも気を抜けば、醒めることのない夢に落ちる。そんな事を鈍い痛みを感じつつ、男の太い声と悲鳴と怒号痛みを感じなくなる………次に瞼を空けると自身を取り囲む頸がブラックホールな顔?なのか?そんな摩訶不思議な生き物が傍にいたスクッと起き上がり「これ?なに?」触らずにはいられない、何が何だか解らないが、頸基より上は無い、だから表情?何てモノは判らなかったけど、すり寄るその仕草は食べようとはしていないとわかる。ここが神世界だと理解するまでしばらく掛かった。追い風と共に帆が擦れる音がする。撫でていた手を触れたままで「コロマル広い場所に降りて、逃げきるのは無理そうだし……ここでやろう」その言葉を聞き広い地面へと降り立つコロマル……「降りちゃった、こっちも降りるね″白猫″」すでに下降を始める白猫コロマルより大股で五歩程度の場所に降り立つ「素直に返して頂けるのかな?盗っ人くん」腰の得物である剣を抜き視線で太市の身の無事を確認、彼が抱える卍燈籠も破損は無さそうだ。そんな視線を片手で遮り「そりゃ無理ねぇオッサンには取り返す事情あるみたいだけどって(卍燈籠をhugっとして睨みつける太市)どっちが目的なのかは分かんないけど(上から着ている黒いコートが銅鐸を模したモノへと変化する)あたしにはどうでもいいけどね握っていた剣が後方へ弾かれる「″空音″は音を消せるだけじゃない、こうやって」そう言うと弾き飛ばした剣に手をかざして?かざして?剣の方に向かう死人の騎士「なるほど″その着物″が盗っ人くんの鍵か、我ら死人は本来″悪性腫″はなり得る者は少ない、其れは本能のみで行動はせず考え理性を保つからだ(コロマルを指さし)盗っ人くんが連れている死獸は元々は物世界にいた動物だ。動物は″理性″で動く者は少ない″本能のみで行動″がほとんどだ(自身の得物を抜きながら)だが″悪性腫″は物世界ではイメージ的には悪いがこちらでは少々意味合いが違う魂の劣化は転生を早める一方で異質な力を生み出す″悪性腫″とはいわないまでも良性腫に近い悪性腫なら力を得てこの神世界に留まる者も少なくない(刀身に力を込める)”似て非なる力”この刀はオレにとっての鍵、盗っ人くんの着物と同じ弾くことも、そのあと破壊を試みることも計算の内だ。さてと話をしても埒はあかない。お互い似神非力の使い手だ。後は力で応えよう」構えるその姿勢を見て動きが止まる……押さえつけられる男の圧倒的な力でねじ伏せられる自由を奪われ”犯される”そんなことは実際はない……ないんだけど後退る足はへっぴり腰を促そうとする。そんなあたしの足に毛のクッションに当たった感覚が震えるあたしの感覚を刺激する「プッくっくっ」笑みと共に小声が不意に漏れる。頭も無いのにすり寄る様は一見すると妙ちくりんでいわゆる”キモカワイイ”というモノだ。鳴き声もなく擦り寄る様はいとおしく……そして勇気をくれる変な気分生きてる間はこんな気持ち感じなかったのに優しく毛並みに触れながら「コロマル”それ”をお願い」そう言って目の前の騎士へと歩み寄る……歩み寄ってくる黒いコートの娘、蹂躙するという明確な圧は与えたんだが怯まないな、彼女の狙いはどちらかは解らない。もし”卍燈籠”照留様なら太市様は置いて逃げると結構本気で思ってたんだが「云兎様どうやら私は彼女の相手をしないといけないようです(死獣を警戒しながら)太市様の手前云兎様を狙ってくることはないと思いますが、白猫様と共にご自身の守りをお任せしてもよろしいですか?」横に立つ云兎は「あれアタシがやらなくてもいいの?」コロマルを片手で指さし騎士を眺める「彼女はわざわざ死獣を置いてこちらに単独で挑もうとしています。先程”蹂躙されるかも?”と心に植え付けたにも関わらず、其れを踏まえて彼女の決意に私は戦いの場にいて向かい合う者として応えてあげたいのです」白猫をぎゅっと抱きしめて「アイツが……好きなの?」という云兎に「えぇ、あの凛とした決意を感じさせる目を持つ者は……好きですね……こんな運命で無ければ嫁に欲しいぐらいですよ」云兎は少し考えて「分かった……野暮な真似しない」と約束してくれた。だいぶ年の離れた禱左様と后左様姉妹と遊ばれているからか年に似合わないその言動は多少大人びている。目の前の足音が止まる数歩で届くか届かないかの微妙な距離で彼女が立っている。構えている訳ではない「失礼ながら何か誰かに習っていますか?」と彼女に問うも「一切ないわ、物世界ではしょうが無く入った文科系の幽霊部員だったし、こっち来てからは、そうね~(自身のコートを見ながら)この力えっーと似神非力だったけ、この力の最低限の説明と使い方は習ったんだけど、文科系を選んだくらいなんだから、まぁ”武”関連の経験はな・し・か・な、あらバージンな女はお嫌いかしら?」なるほど彼女のこの間合いの取り方や話し方から”こっちの戦い”は経験済みか、構えをとらず身に纏う黒いコートは太市様を攫ったときやさっきの銅鐸のような黒い鎧?ではない、あの時は爆発の音と衝撃は吸収されたけど煙は蔓延していた。衝撃の音は彼女の能力で消えていた?ので金属が床を踏みしめる音と彼女の”あたしの鎧”の言葉で彼女が鎧を着ていたのだと思った。それに先ほど見せた銅鐸の鎧?なのか、不意をつかれたとはいえ刀を握っていられなかった。彼女の力は音波かあの黒いコートを色々な形に変えて様々な音を奏でている訳か、なら(滑るような足裁きで彼女との距離を詰めながら体重を乗せたまま彼女に斬りつける)こちらから仕掛ける(手が痺れそうになり咄嗟に離すが)「くっツ!」骨が軋む、見ると先ほどまで黒いコートを着ていた其れは細長い縦状の鼓で女子高生の制服を着た彼女はその鼓の中にいる。その一部が開き「どうかな”山音鼓”はコレ受けたダメージをそのまま返すんじゃなくて深部に伝えるんだ。だから防御は絶対出来ないんだよね~」悪いことは言わないからやめとけば~という顔で騎士を見るも「成る程、今度は弾かずに私自身を狙ってきましたか貴女は(コロマルの方を眺め)その死獸とずっと戦ってきたんですねこちらの世界で」彼女もチラリとコロマルに視線を送り「えぇだから”あの子の悪性腫”を何とかして………顔を見たい、声を聞きたい……何とかしてあげたいの」その表情はどこか哀しそうで吸い込まれそうな目をしていた……気持ちを戻し「何とかすることと太市様いや”照留様つまり卍燈籠を奪うこと”がどういう風に繋がるのか教えて頂きたい」真面目な顔で話す騎士に「ヒューヒュー」と感情の薄い言葉で冷やかしのつもりなのだろう云兎様は愉しそうだ。「何、ナンパしてんの?」ナンパ?という言葉が分からなかったが状況から誘ってるのかと言われたので「そう言う気もある」と答えると笑われた。でもその表情は先程までの哀しそうなものではなかった。「雇われたのよ、あたし達はこの死都一帯で何でも屋をやってるの、ご依頼一つでお悩み解決ってね、まぁこの世界では腹減らないし、稼がなくてもいいんだけど(まわりの鼓をコツコツとノックしながら)でもこうやった力の使い方ってのは識ってる奴は結構いてね、まぁレベルアップとか資格取得みたいな感じ…でもね(自身の手を握りながら)欲しい力ってのはなかなか辿り着かなくて、あたしの似神非力じゃ無理かなって、そうなると他の死浪の似神非力、もしくはその力を持つ死浪の居場所を知る情報なんかを探してるの、そこでオッサンはどうよオッサンの似神非力は今んとこアタシが探してる”力”とは違うけど他に力隠してないの?」懇願するように尋ねる彼女に「悪いが私の力は戦闘に特化したものばかりだ。君が探している力とは?」その問いに「さっきもチラッと話したけど、コロマルあたしの友で有り仲間、ねぇやっぱり悪性腫ってのはその良性腫には変えられないのかな?」確認するように尋ねるもその目の奥は濁って見える。その問いに「ムリね!」とキッパリ答える云兎様の言葉慌てて付け加えるように「さっきもいったように人以外の生き物はその多くが自然の中で生きている、無論買われる等の例外はある。人にも虐待、傷害、障害など劣化する要因はあるけど、それらは非日常であり全ての人からするとほんの一部にしか過ぎないしかも短期間か一過性のものも多いので魂の劣化というのは起こりにくい。だが自然というそのもので生きている他の生き物は死が常にとなりにある”日常”がそこにある。其れは常に魂を磨り減らし続けやすいことを意味するんだ」死獸を眺めながら「獣としては大きなその体つき、恐らく君になつく様を見るに犬か狼に近いものだったのだろう。だが良性腫の犬か狼の死獸なら大きくてもその死獸のほぼ二回りほど小さいはずだ。その体形はおそらく”浮魂腫”魂の一部が自律的に拡大したものだ。だけどそのこと自体はそこまでの異形性とまでは言い難い……問題はその頸から上か」彼女は小さく頷き「あたしの得てきた力、色々試してはみたんだけどうまくいかなくって、色々な所で様々な死人に聞いたり死浪に力を見せてもらっても無理で……」死都はかなり広い神世界の上方そこを彼女たちは必死に探し尽くしたのだろう……その労力は相当のモノだ……だが見つからなかった。力になれない頸から上この死獸にはそれがないという”捻れている”原形を留めないほどに最初の衝撃の吸収は一つの範囲を指定してそこだけの衝撃を吸収しているじゃないとあの時部屋の外に居た門番たちのちょっとした衝撃も吸収してしまう床に踵を突くときの何気ない衝撃も彼等は死浪だほんのはずかな違和感すら気づきそれが”似神非力”による異変だと感知出来るくらいの知識と経験は持っている。その彼等を持ってしても気づかなかったこと、死獸としては高いランクの力を有している。だが其れは同時に異型性の大きいことも意味しており、あの捻れてた頭部が物語っている「悪いが私では力に……」こちらに取引する材料がない以上”戦う”という選択肢しかない卍燈籠もそうだが太市様の身の安全は最優先だ。意を決して交渉は決裂、再び得物に力を込め「あるぞ!」そう言葉を発したのは太市様だった「やめろってこしょまい!」じゃれるように死獸は太市に毛を擦りつけてくる。其れを離しながら「オオキミに頼みゃいいのさ!」その発想はなかっ……「て、出来る分けないでしょう!そんなこと!!」その言葉に「大丈夫、なんたってオオキミ何だぜなっ云兎」間髪入れず「のーぷろぶれむ」いや”ぷろぶれむ”ですよ。そうなのかと彼女が食いつくそんな一同に「待って下さい仮にオオキミが、いえオオキミなら弱く困っている者をほっておけないその性質はここに居る誰より私がよく知っています。そこの死獸も直す力もお持ちでしょうですが、どうやって頼むのです?オオキミがやたらめったらいうことを叶えていては死人神の権威に関りますし、其れに一番の問題は、あのご気性のムツサ様……王妃様が許されるはずは絶対に無い、其れはお二人もご存知のはずです」困った顔の太市様の抱える卍燈籠を見ながら、そうだ照留様の処遇とて王妃様の一声で危うかった。処分とまではいかないものの王妃様の顔の傷から見て因縁ある間柄(照留様が覚えておられるかは分からない)”羽をもいでしまえ寝心地は良さそうだしの”程度のことはやってのけそうで怖い「とにかく、出来もしない約束は!」いつの間にか死獸の傍を離れ私の前に進み出る太市様「何とかする……」だからと得物を地面に刺し、しゃがみ込んで彼の顔を見ようとする「何とかする……だってこのままじゃ胸が苦しいよ……(ギュッと黒装束の胸の部分をぐしゃぐしゃとつかみながら)だから(涙をぬぐいながら)何とか絶対」立ち上がり得物を取る「言葉は責任を持って言うべきです。いずれオオキミになられる太市様は其れをどうやって成すつもりですか?(それはと言葉が続かない)私には」一瞬で死獸の足元に移動する「その助けるすべが思い浮かびません!」間髪入れず「コロマル迎撃……」が騎士の得物の柄を使った一撃がコロマルの急所を打ち抜くその場で痙攣するコロマルに得物を返し刀身を振り上げ「だったらいっそ”行動不能にしてやる”方が彼女にとっても諦めがついていい」振り下ろす刀身に「后姉様が治せるかも?」刀身をシラハドリで止めるやっこさんこと白猫に尚も力を込め「治せるかも?そんな分かりもしないことで后左様まで巻き込むのですか?それが迷惑だとは」その言葉に真横に立ち「でも、まだコロマル君には刀は届いて無いつまり”まだ何も決まってない”(頸をひねり太市様に対して)これでいい?」と尋ねる。その場にへたれる彼女と太市様その様子を見つつその場にしゃがみ込んですっとコロマル君に指圧を一撃しながら「わざとですか?」という真横への小声の問いかけに「必要悪……」と彼方の方を向いて答える。見透かされていたか、本当なら応えは未来のオオキミに出して欲しかったけど「さっきの口からデマカセじゃないですよね?」と言う私に「あれぇ?禱姉様だったっけ?」どちらかは持っておられるようだ。「では慈鎮区に戻っ!て」コロマル君の爪が放たれる直前、脇の云兎様を抱え離脱、彼女の方を向くもショックで倒れている。駆け寄る太市様に「意識はありますか?」とコロマル君の攻撃を避けながら尋ねるも「ダメだよ!起きない!」さっきのショックか我ながら少々遊びが過ぎたか「どうする?」と言う脇の云兎様に「そうですね、取り敢えず!太市様!」といきなり呼ばれた太市が騎士の方を向くと自身に向かって飛んでくる云兎を抱きしめる「ストラーイキ」と発する云兎に、本当割に合わない仕事ですよと心で思いながらもコロマル君は執拗に私を狙ってくる”迎撃”という言葉とコロマル君自身への攻撃をしたのが私だけだったので云兎様や太市様には手を出さないみたいだ。全く良くしつけられている。ここに居ては太市様に危険!コロマル君は忠実に彼女の命令を守っている「一旦ここを離れます!太市様達は慈鎮区へお戻りを必ず戻りますから!」そう言い終えこの場を離れる案の定コロマル君は追ってくる……「行っちゃった……どうする?アイフ」と白猫を抱きしめながら聞く云兎の問いに「取り敢えず戻って禱姉?それとも后姉?(どっちと聴くも頸を傾げる云兎にため息をつくも)いいやどっちにしても慈鎮区には戻らないと」そう言って云兎の帆掛けで戻りはじめる……一方その数キロ離れた平民街の屋敷広くはないが庭付き一戸建てだ言師の家より少し広い感じだそんな家の庭にポツンとある犬小屋大きさ的には言師の家にあるものと同じ程度”こるふ”と書かれている前の犬小屋の主の名なのだろう「モフモフだ、コルフも……光になっちゃって」泣き出しそうな顔になり「この家には君たち親子だけなのか?」と話を変えて聞いてみると「えっ……うんトオサマと二人だよ……カアサマのことはよくしらない」そっかと応え「でそのトオサマは先程から見当たらないが何処かへ出かけたのか」というグーガに「トオサマたまにどっかに行っちゃうんだよね、そんなに長くないから別に何とも思わないんだけどさ、ほーんと何処に行ってるんだろ?」………「遅い……」街の外れにある寄合所のような場所で数人の死人が集まっている。落ち着きなく部屋の中を歩く者、椅子に腰掛け片脚のつま先をイライラと叩く者、壁に余垂れかかり静かに待つ者そこに「遅れたすまん」とトオサマが入室するも、皆の態度に変化はない「その様子では、失敗か!」そう言いながら椅子に腰掛けトオサマに「いや、まだ約束の刻まで少しある、焦らなくても」そう言う壁の男だが「まさかオオキミに捕らえられて、僕たちの事まで、どうしよう、やっぱり無理だったんだよ、平民である僕らがこんなこと」皆に同意を求めるように話す歩いていた死人、そんな死人の胸ぐらを掴み「オオキミは俺達の神、唯一の神だ!神世界がなんだ!俺らの信じる、使える、ついて行く!その神は死人神”オオキミ”だけだろ!そのオオキミが他の神と取り引きなど、していいはずなどない!(掴む腕に力が入り)寧ろするべきではない!そうだ!オオキミの真意はそんなこと望んでいない!俺達”死臣”こそが理解しているのだから!」皆一様に頷くトオサマも同意している。その様子を黒いボックスの片割れが覗いている。その様子をもう半分の黒いボックスのセガレが狗牙に目と耳として伝達している……今風に言えば”身勝手な原理主義者”自身の理想(もちろんそうなるように死人神の一族や廻りの者が行ってきた事が原因)を追い求める死都に住む死人の平民、こういう思想に辿り着くのは仕方の無いことか、先程のトオサマの神に対する疑念と態度も何となく理解できた。




