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ピンポーンと正面きって入るわけには行かなかったが、塀を越えた所で案の定センサーに引っかかるセ⚪ムしてるんですね。すぐに数十人のドスにサバイバルナイフ、金属バット、警棒、スタンガン、バール等々の近接部隊のご登場だ三人とも背中合わせになり「こっちは薙刀同好会とは言え獲物もナシじゃ」徳導先輩が嘆く、ここはあたししか居ない!あたしは小声で”ほーちゃん”と呟くと辺りの木の棒を取り上げ優しく摩るような感覚で失神させていく、力を抑えながら「凄っ技!薙刀同好会あたしとんでもない部活をしてんの?」次々と倒していくあたしに徳導先輩は色めく先に進もうとする揺先輩しかしその前にナイフを持った舎弟が彼女の腕を掴む「離して……(熱気のこもった暖かい声が舎弟に届き腕を掴んだまま一歩引かせる)離せって!(手首を握っていられなくなり離す、恐ろしくなったのかナイフを振りかざしてくる)邪魔しないで!!一閃が間一髪徳導先輩が彼女を引っぱり戻し揺先輩の前髪が数ミリ地面に落ちる程度で済んだ、見ると男は倒れ込んで微かに動いている傍に落ちたナイフが溶けている柄ならまだしも”刃の鉄まで溶けている”「単独はダメだってねっ(優しくも強くその手を引く彼女)ねっ!」わかったと徳導先輩を見つめる揺先輩「よし!これで全部かな」と奥に進もうとするあたし達の前に「庭に迷い込んだという訳では無いみたいだねぇー」グラサンに白髪ネジられた2本のネクタイ腰には特注の黒樺の光沢を輝かせるドス?を突き刺し瓦の上から飛び降りてくる足元は太い一本下駄着地も軽やかに腰を上げる「ほー(辺りを見渡し)素手以上とはいえ、多少コツを教えたんだが……この人数を三人(蹲るさっきのナイフ男をチラリと見て一番奥のアタシを見据え)殆どはお前さんがやったようだな小僧?」気さくな話し方だが低く一言一言重く聞こえるアタシが構えようとすると揺先輩を抑え徳導先輩が前に出る「私達は”友達を探しに来ただけです”一緒に買い物していたら急に友達が黒い車に攫われて」見据えていた視線を徳導先輩に移す「なるほどここへ来たのは攫われた友を助けるためだと、しかしお前さんらの言葉を信じるとして”何故この場所だと”見た所お前らは車の運転が出来る年ではない、確かにウチにも黒い車はあるがそれが”お前さん達の見た黒い車”と同じというのは少し強引かの」男の言葉に一同が黙ってしまう中「どうやらここに車が入る様子は見ていないということか、なら他を探して」後ろを向き帰るよう促す男に「ありますよ、ほら!」とスマートフォンを取り出す徳導先輩「この所人混みや待ち合わせでいちいち確認するの面倒でみんなで同じ位置検索アプリを容れてるんです。だからほら(スマホをスワイプして)ここの家からちゃんと位置が発信されてるでしょ」ピタリと足を止め「やれやれ、一般人の相手をするのは気が引けるのだがな」下駄で一飛び徳導先輩の前に徳導先輩に伸びる腕を掴むアタシに「お前さんは他とは違うか」蹴りが前に飛び思わず手を離す、その直後後方へ跳ぶ白髪下駄「どうじゃお前さんら組員担ってみんか?数年後には我が眺欄組の立派な支え!……おっと」片脚を一歩真横に躱し、そのまま躱した片脚を一歩前に出す「ほうー!(ドスの柄が腹に入る前に殴りかかった方とは反対の手で受け止める)いいね!(そのまま頭がこちらに向かってくる”弁天”呟いた直後三角定規が頭突きを弾く)何だ?何かに当たった?」そのまま両者とも反発するように弾かれる「いかんな……しょうが無いか」何か懐から取り出す武器?身構えるも「えっ?メガネ?」懐から取り出したのは「いゃー悪いお前ら女子だったのか……さすがに歳か、この歳まで度の入った眼鏡はかけたことなくての……すまん、さてじゃあ(下駄の音が消えた瞬間目の前で音がする?もそれに気づいたときは弾かれた後だった)先程の感触とは違うな、お嬢ちゃんさっきは何をした?」壁の手前で何とか地面でブレーキをかけて止まる「どういうことなんだな、感じ取れなかった?」アタシの片側に現れるほーちゃん「あたし達が反応できてない?」もう片側に弁天も現れる。七福神で反応できてないって事は”神約”頭の中で其れを感じるも「それは違うの!」と真上から否定の言葉が聞こえる。真上にはシャーモンさんがいた「あれは、そうだな”戦いの差”といった頑固なシミのようなものだ」頑固なシミですか?「戦ってきたからできたもの、しかも命をかけた状態の戦いばかりのな、普通の人間なら幾ら鍛えたといっても元々の根源が異なっている神には対抗できん対抗するには神約、加護、神器質等”人ならざる者の力”が必要だ”普通の人は殻(人の体)という足枷が中身の力を使えないように邪魔をしている。だが先程述べた神約等の”人ならざる者の力”はその殻の上に力を纏っている感じだ。例えばお前さんが神と対等に渡り合えるのはその黒竜の衣のようにワシら七福神を纏っているが言師の人そのものの力は殻の中に在るままだ(目の前の下駄履きの白髪じいさんを見て)あれはその人の体を極限まで鍛え上げ、研ぎ澄ませた結果だ……ホントにあそこまでなる人は久しぶりに見たよ、今の時代にはとんと見なくなってしまったんだが」死人が使っていた力に似ているんですか?と尋ねると顎髭を触り「”似神非力”か、神世界というのは前に弁天が言っていたように基本”魂の世界”だ。故に死人はその魂の大きさ、強さにより転生までの時間が違うのはこの事が原因だ。似神非力とはその神世界で枷の無い魂を上手く補体(武器、その者にとってかけがえのないモノ)を使い引き出すことにより神力とは似て非なる力を行使出来るものだ(目の前の老いた男を見て)だが目の前のほれ!来るぞ!!」会話に夢中になり下駄の音が目の前まできていることに気づかなかった。黒いドス刀身まで真っ黒に光っている眼前のそれは鋭く其れが一層美しさを引き立たせる「どうじゃワシのこの世に二つと無い一品”枷熊黒”こいつは人から出来ているのさ”共に歩んだ友””命のやり取りをした敵””巻き込んでしまった名も知らぬ他人”等”(数えるかのように手をグーに握り優しく叩くようにし、手を広げ包むように、力強く握りしめる)ワシの人生で触れ合い通ってきた命の集大成”それがコイツさ”良くも悪くも相棒”かな」両手持ちになった押し込まれそうになる枷熊黒を受け止めるアタシの得物を見て「ほう、お前さんの其奴もいい槍?だな」堪らずほーちゃんの力も重ねがけして枷熊黒を弾く人相手に結構本気で弾き飛ばすもクルリと回り受け流される「凄いのぉ、みた感じ体のこなしで力を出しているようには思えんのだが」神力を感じないとはいえほーちゃんの力が軽くいなされている。項垂れ黙り込むアタシの隣に「どうする?わんわん呼びますか?狗牙にはこの広い屋敷の中でなるべくバレないように散策して貰っています。同行する彼女達の手前必要以上の行動は避けるべきだと思い、目的の女子、攫った男は共にまだ見つかっていません。無論此方を先に片づけて……」ジュロさんの言葉を遮るように首を横に、アタシの顔を見たジュロさんは「分かった、では目の前のご老体のお世話をしなくてはな」と髪飾りに戻っていく。「おじいちゃんもやるみたいだけど、アタシもおじいちゃんに比べたら少ないけど色んなホントに色んな出会いや力を借りてここまで来たのだからアタシは”引けをとってるとは思わない!”」額に布の文字が浮かび上がりシャーモン槍と変化している杖を構える。静かな空気の中口火を切ったのは焦っていた揺先輩の言葉だった「このままじゃ!」と自身の右袖を捲ろうとする無言でその袖を抑え「今はまだ」そんなやり取りの対極線でアタシとおじいちゃんはぶつかり合う相変わらず下駄の音はするが姿は捉えられない反応が追いつかない、焦りが体の動きを悪くするそんな動作の隙を老獪が見逃す訳も無く、容赦ない一撃が加わる”重い”単純な感覚鋭い痛みではなく鈍いとても鈍いまるで体全体で殴られたようだ。その場に蹲るほんの一瞬「ほれ、真上ががら空きだぞ」反応でき!おじいちゃんの攻撃はクリーンヒットしたかに思えたが「ほう、器用だな」真下を向いたアタシの意識とは別に片腕が背中越しに叩き込まれた一撃をシャーモン槍が防いでいる。すみませんシャーモンさんいつの間にか表に出て来ている彼にお礼を述べると「中の様子だがいささか雲行きが怪しくなってきたこのまま狗牙に助けて貰う方が楽か……言師頼みがある、ここはワシにやらせてくれんか……不本意なのはよく分かるだが(近くにいる彼女達を見て)彼女達の手前狗牙も動けんとなるとこの場を早く切り抜けるためには現状目の前のご老体を倒すことが最善の一手に他ならんそうなると」アタシは静かに頷くと共に意識を沈める。動かなくなるアタシを見て「どうした?瞑想出来るほどワシは軽い相手では」言葉を続けようとするご老体が目の前に居るアタシが全く別の次元の相手に代わったことをいち早く察し一歩後ろに飛ぶ「何、何で後ろに余裕しゃくしゃくだったのに?」ご老体から冷や汗が出る静かに瞳を開けるアタシじゃないアタシというかシャーモンさんこと毘沙門天、戦いにおいて敬われる神、目の前のご老体は現代の数少ない”達人”と呼ばれる領域の人間だ神の力七福神の力を借りても所詮アタシはただの人だ。先程までの戦いはその一言に尽きるだが今は違うアタシは今この体の中には入るが主権は有していない今この体の主はシャーモンさんなのだ。ただそれだけ、ホントに笑っちゃうぐらい其れだけなのだ……だがそれは”神と人”という決定的な差を生む要因となってしまった「グクック……ハッハハ……いい、いいぞ、この際、原因や理由はどうでもいい、自分が生きていて、いくつもの戦場ですら出会うこと適わないほどの者……いや”何か”に人生の尽きる前に出会えたそのことが大事なのだから……さてと」愛刀の枷熊黒を汗ばむ手で握る深く呼吸を奏でながら「領域を超えて見せる!」風を斬る音だけが聞こえそのあとに視界の外には黒い光る粉が綺麗に舞っているそんなアタシの横を通り抜けていたご老体の手には握られていたはずの枷熊黒はなく「領域の外は何と遠く……何と静かな……まるで神の」倒れ込むご老体はっとテレビを見ている感覚からテレビの中の主人公に立ち戻り動く体、還ってきた?であろう自らの体の感覚を感じていると「ここまでたどり着く者もあと幾人かの……さてじゃあ先に行くかの」そう言うと髪飾りに戻るシャーモンさん改めて倒れ込むご老体を見て息が在ることにほっとする体はアタシだったシャーモン槍も同じように使わせて貰っていた……でもこうも違う屋敷の奥へと進む中で”神と人”には超えられない壁というのが存在しているのだと、全く別のものなのだと今さら持って今アタシが関わっている世界と力が異様であることに気付く「ウヒャヒャーヒャー」奇声?喜声?ともとれない声にはたと現状に引き戻される部屋の奥から聞こえる変な声その咆哮にも似た声を追うように「取り敢えずあっちかな」と徳導先輩を先頭に向かうあと一部屋のところで襖の前に門番のように立ちはだかる看護士の格好の男女退いてと進もうとする揺先輩に女性の看護士が「オペの最中ですのでお静かに」と遮るオペ?奇声?と悲鳴、苦痛を伴ったそれに「あいつ!あの男!彼女は?彼女は?」詰め寄る揺先輩の声に襖の奥から「あと5分!”中に入れるなよ!”」と強い口調の群れを嫌う女医のような声がする「「御意!!」」ハミングする看護士の服が黒く染まる戦闘モードといったところだ首からは碧い雀の小物をかけている。状況は飲み込めないけど、右手に力を込めほーちゃんの力を使い軽ーくほんのちょっとでも人なら軽く吹き飛ぶぐらいの力で殴り飛ばす……アタシはそのつもりだったが上半身は傾くも下半身はぶれることなくその場を離れない「何あれ?」その言葉の示すとおりブリッチになったまま動かない其れを凝視していると片方の男の看護士が上半身を戻しカイロの矯正のごとく戻していくボキバキ後ろの悲鳴と合いまればホラー映画も真っ青な立体3Dだ。そんな3D鑑賞している数秒で元に戻る女の看護士何もなかったように門番として立っている……片方を攻撃しても片方が直すなんてことを繰り返す戦闘モード故か戦闘もそこそこ熟しアタシ以外では奥へは恐らく通れない……何かよく分からないが本気で通る気も無さそうなので、そんな膠着の中あっという間に5分経ち襖が開く中から「お疲れ!」と声の主が姿を現す「バイタルの確認と脱出準備何だ?あの達人じーさんやられちゃったのか?」この人もあの碧い雀の小物をしている、それを見た徳導先輩は顔を顰める知り合い?なのか「それであんた達は患者に何のよう?」はちみつシロップを一気に流し込んだあと聞いてくる「この奥の多分貴方の患者はあたし達の捜している人物です彼が攫った女の子を捜しています」単刀直入に話を切り出す徳導先輩「あいにく意識レベルは戻ってなくてね、今は無理かな」その言葉に辺りの温度が上昇する「じゃあ仕方ないですねどうやら(後ろを気にしながら)我慢もそろそろ限界、これ以上抑えるのは無理っぽいので、あまり怨まないでくださいね」その言葉がきっかけとなり真夏も真っ青の気温上昇が起こるも女医さんは真横に指を突き出し「でもここに来る途中あっちの蔵でそれらしいの見たけど、信じられなかったら」その言葉を止めるように「彼女の言っているのは間違いないです」アタシは元々わんわんさんの情報をジュロさんを通して聞かされていたので彼女の言葉が真実であることを知っている三人ともそのまま蔵へと向かう。アタシたちに女医さんが手を振りながら「頑張っ」と見送っているそんな彼女の胸元、終始あの”碧い雀”を伺う徳導さん看護士達のときも苦い顔だった。気にはなるけど今はこっちが先かと救出に向かうそのあと警察に通報囚われていた女の子を含め数人は無事解放されたがあの女医さん一行を含め攫った張本人を含め舎弟一人の行方はわからなかった「今日はありがとう、付き合ってくれてあの人数をたった一人で私や揺はただ見てただけだったし特にあのじいさんとの一騎打ちは凄かったよね揺」その言葉を聞いて「うん、そうだね」と素っ気なく応える「じゃ、あたし達はこの辺で警察に通報はしたけど関わるのは遠慮したいし」とそのまま帰っていく「儂らのことは”感じていなかったな”」こちらを向き手を振る徳導先輩先程の会話中もジュロさんは隣にいた彼女達からも神力は感じ得ない「でも神器質は発動時のみ神力を感じますよね」頭の脳裏に揺先輩の顔が浮かぶ、そこに「今は考えても仕方ない、ここにいた者達からも神力や神器質に関わる者はいなかった。厄介ごとに関わる前にオレ達もここを離れよう」わんわんさんの背中に跨がりサイレンの響きわたるその場が今は遠く感じている………「それでわざわざ連絡を」プロキシアスの社長室スマホ片手に腰掛ける社長かたや家で家事をしながらスピーカーで話す徳導先輩こと苗「まぁママを介してもよかったけど少し気になることもあったし(洗濯物を干しながら)”碧い雀の小物”これに心当たりは?」告げてくる娘に対して「そうか、監視は続けていた、可能な限り潰しもしてきたグラフトならまだしも”思想の完全な根絶”というのはどうやら簡単ではないらしい潰されかければ深くそうだな森の奥へと入り込んで此方の監視からは逃れやすくしかし着実に思想は浸透していく」会話を止めるように洗濯物を広げながら「どうするかは聞かない聞いてもアタシは何も出来ない必要な情報だけ頂戴、あとはママ秘書にでも愚痴ってそれと揺の神器質が覚醒したわ。まだ不完全だけど」そうかと返す社長に対して「以上で報告終わり」といって通話を終える。言師のことは言わなかった何故か言う気は無かった「疲れた、自炊疲れんのー全く」そう言って部屋の明かりを消した。




