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「あぁなるべく早く食べるよ一円五銭の味わいながら」なんて声が奥の更衣室から聞こえてくる間一髪だった、どうやら領主様が部屋に戻られたようだ「でもよく分かりましたね、領主様が入られたと」電車ごっこの紐をつけながら「領主は何処から入っても殆ど同じ時間で部屋につく、日が完全に沈む前決まってる」紐に繋がれ再び闇の中を走って行く。さっき扉越しに感じたヒンヤリ感は日が沈んだからか「少し寄り道はしたけど、領主は一度自分の部屋に入ると朝の日の出まで出て来ない、さっきの続きあたしが行けない場所は領主の部屋が一つそしてもう一つはこの城の地下だ」そういえば不思議に思ってる事があった「愚弄さんここってホントに地下なんて在るんですか?」どうして?と聞く先頭の愚弄さんに「表向き地下への階段が無かったので、そう考えると地下には一般の兵士は入れない、今いる闇の細道は特定の人しか通り方を知らない道順を知らないと永遠に出られないので、そう考えるとこの城の牢屋は地下では無く地上にあることになりません」少し黙り込む愚弄さん「少し違う、ここの城に牢屋はない」牢屋がない?じゃあ拘束なり監禁なりはしないということか、だが次の愚弄さんの言葉で大きく違っていた事に気付く「ここがそのかわり時折バキボキと進むたびに音がするでしょ」予想していないわけではない「さっきあたしは助けたっていったでも″みんなじゃない″あたしが連れ出したのは領主に命令された者だけ……他の者は″今もここに居る″」足を止めるそれに引っ張られ前後も止まる「じゃあ私達の捜している者も………」碧雀はこの暗闇のどこか然し愚弄さんは「何とも言えないけど違うと思う、あの時領主は貴方達を利用可能な者達と見ていた、その利用可能な者への交換物彼に対して″価値のある物″領主絶対に無碍にしない、だからあなたたちの捜している者ここにはいない」断言する愚弄さん不思議と信じてしまう「では如何するどこかアテでも、その領主様に聞くという手も在るが、日が上るまで部屋から出て来ずその部屋も分からん」一番後ろから行き先を聞く櫻咫車掌に「一つ心辺り在る、貴方達と同じように扱いの部屋あるけど、そこ守る奴強いでも」そこから階段上り下りを二回程行いハシゴを降りる「ハッハッ(少し急ぎ足で目的の場所の前に立つ)ここっ(前にドアノブがあるのか握るが)何で、開かない(その場にへたり込み)ゴメンホントは開いてると思ってたでも多分領主に鍵かけられてる」落ち込む彼女に「鍵がかかってるってことは″大事な何か″があるってことだよね」後ろの私からの声に「た、多分居る可能性高いかも」中から神力はやはり遮断されてるか、壁一枚私か櫻咫なら破れないことはないが、もしいなかった時が問題か、考える私に櫻咫車掌が「ここ以外に扉はさっきの部屋のように表から入れないか?」という車掌に愚弄運転手が「あることはあるけど、さっきもいったように″護ってる奴″がいる」そういえばさっきそんな事を裏口がダメなら表からか、しょうが無い「取りあえずいってみるだけいってみましょう」この部屋の近くで誰もいない部屋に出るホコリっぽいどうやら倉庫のようだ肩の蜘蛛の巣を取りながら「そこの扉を出ると左に曲がって突き当たりの部屋がさっきの部屋」倉庫の部屋を出ると長い廻廊まちまちとあるランプの点灯は廻廊を一定間隔で夜の闇を照らす窓の外は月明かりが雲から漏れている程度かなり薄暗い右側が何処までも長い闇の中にランプが点々と永遠と続く音もなく続くその廻廊は少し不気味さが漂う扉から廻りに気配がしないことを確認し左側の方へ愚弄さんの言うとおりすぐ先には左に曲がる角がある角から奥を覗き込むと白い衣装はボロボロ所々に返り血の痕なのか少し赤く染まった部分もあるソレは立っていた「やっぱりいた、正面からは!」彼女の言葉より先に私の体はソレの前に立っていた、すぐに押し倒される顔の横の床を剔る、それを見ていたたまれないのか出て行こうとする愚弄さんを櫻咫が止める「何遣ってるの!このまま放っておくの?!あたしは聞いて……」愚弄さんはバツが悪そうに目を逸らすも「大丈夫、大丈夫だから見ていましょう」真っ直ぐに愚弄さんの腕を掴み止め奥を見つめる。顔の横の床が剔れている「あぁこんなにも腕力が低下している」と、近くで見るソレに「あぁこんなにも私を近づけてしまうのか?」さっきも角で姿が見えなかった時も「あぁこんなにも分からなくなってしまったのか?」あれからもう数百年が経とうとしている、子供の頃に作ったものは今どうなっているかな?図工の時間の工作、夏休みの絵画、自由研究など作った本人は大人になりとうに忘れてしまっているモノたちは、今如何しているだろう学校の隅に置かれているか?はたまた自家の奥底に眠っているか、だが私のソレはまだ辛うじて原形を留めている、ただ昔のような力は無く、反応も悪く劣化している。私のソレは親しみを込めたわけじゃない、多く作ったその中の一つでしかない。その中の一つであろうそれがその際足る力を失ってもなお動き続ける(唇を噛みながら)生き続けている私の手を離れて、すぅーっとソレの頰に手が触れる「ゴメン…ごめん…ほっておいて……気づかなくて伝達″化学伝達の遮断″」ソレが急に膝が折れ、動かなくなる。その横を通り扉の前にドアノブに手をかけ開くと部屋の中央に椅子が項垂れる片腕の少女がいる部屋を進もうとするとその椅子の奥の暗闇から拍手と共に「素晴らしいさすがです、いやぁお恥ずかしい実際にこの眼で見るまでは如何とも信じられませんでしたが、いやはやこれは信じるしかないでしょう」領主は上機嫌だ、1冊の本を取り出すパンパンと叩き「これは、我が家に伝わるまぁ日記のようなものです。ここには面白い記述が載っていまして(ページをパラパラとめくりながら)私の先祖は医者でした戦場を駆けながら兵士達を治していました、そんな時にこんな記述があるんです(ページを止め人差し指でなぞりながら″戦場を回りながら自分の非力を感じ今ここに居る、あれは何だ、戦場に突如現れた白い衣装を着ている刀を持っている瞬く間に死体の山が出来ている、聞いたことがある″白い閻魔″がいるとカネで雇われて勝利に導く傭兵がその頭目は白い閻魔略して″シロエン″と呼ばれていると″ね、そして医者という職業の性か判りませんがホラ(私に向けてその本の一部を見せるとそこには自分と瓜二つな顔が見える、その本を自らに向け私と並び見比べながら)ここにもっと面白い記述があるんですよ」領主は意気揚々と読み上げる「こほん″その者は驚くことに年を取らず姿形変わらず、とても奇異なりまるで『神』の如くなり″(本を閉じつつ)そこのソレは手に入れるまですごく時間と金を費やした、でも神というものが存在するという確たる証拠も無かった(舐め回すように私を見渡す)どうやって止めたのかな?薬物、暗示それらを使い調査したところ″ソレは一定の原理に伴って動いている事が分かった」とサロリ傭兵が片手に注射を持ち跪くソレに打ち込むと復活する「貴方は伝達を止めたんですよね、なら伝達物質を打ち込めば」今にも近くにいるサロリ傭兵を襲い?襲わない「範囲ですよね、調査の結果″ある一定以内の者しか襲わないその範囲を越えていれば襲われることは無いんですよ、しかもその範囲は始めの調査以降だんだんと狭まっている、腕力、動き、判断その全てが私が手に入れた頃よりも″劣化している″」涎を垂らし血管が脈打つのが分かるほど浮き上がり太くなっている。表情は白い布に覆われ伺えないが、その布から漏れ出る声は正気な者の声には聞こえず″無理矢理動かしている″感が伺えた「私達″人″では劣化したのを戻すことも止めることも出来ず″壊して使う″という選択肢しかなくて、だからこそ″あなたのやった方法が知りたい″と言うわけです。急かせるような形になったのは謝りますがどうでしょう教えていただけないでしょうか?」無理矢理動いているソレを見て「仮に貴方に教えたとして″ソレ″をどうする気?」両手を広げ「無論世の中の人が平等に暮らせる世界を築くつもりですよ(一呼吸入れて)私という新たな神の元でね」前半で終了していればええ話だったのに「貴男には協力出来ません、あなたの野望にケチをつける気はないが、野望はあなたの力だけで行うべきでしょう、なので答えはノーです」ハッキリ断られ口をへの字に曲げる「話が違うが?」横に居るサビだ鎧に問い掛ける「絶対に上手くいくとは言っていませんが、交渉は必要だと申し上げたまでです」それを聞き「こう言う青臭い交渉は性に合わんのでなここからはいつも通り」錆びた鎧の剣が椅子に座る片腕の少女の頸元に「お前さんが助けたいのはこの子だろ、強情でな、痛みに耐え抜きこうして息も絶え絶え何とか生きている、だがそれもお前さんの返答次第で、その灯火は消える、まさかここまできたんだ見捨てるなんて選択はしないよね」確かに息も絶え絶えでその剣が致命的なダメージを与えることは分かった「取りあえず部屋の外の彼には邪魔されたくないですね、サロリさん」分かったと部屋を出て扉を閉める「悪いね、これも雇われ者の悲しい性だ、取りあえず部屋への立ち入りはご遠慮願いたい」そんな彼に「聞いてない!聞かされてない!!ここに連れて来れば!」先程の迷いもなく大きな声で部屋の中にも聞こえる愚弄さんの切実な叫びが「領主!!聞こえているんだろう!あたしは自由?約束は連れてくる事だろ?取りあえず連れてきたぞ!これであたしは」自分のせいと分かっているのでバツが悪い答え約束の″自由″が欲しい額に汗を掻きながら、然し中からは「少しうるさいので″それも一緒に片付けて下さい″」彼女の顔から血の気が失われる「約束…約束約束…約束…約束」糸が切れた凧のように、今まで緊張していたんだろう。そんな状態でここまで見下ろす櫻咫は彼女の前に立ちながら「だそうだ、こちらはどうする?すぐに其方に向かうか?」大きな声と共に部屋の中に聞こえる声に「いえ、まだ必要無いですよ、真意も分かりません″彼だけ″なら何とかなります」にこやかな笑い方を添えて「なら、立ち入りは遠慮しておこうか」という彼に二丁のマシンガンを携え一斉に発射する、耳を塞ぎたくなる音土煙が消えると!サロリ傭兵の正面の曲がり角の壁一面無数の弾の後が残る、横の壁を横目にずらし左角の奥に向け「咄嗟の判断とはいえ(手に持つ連射式の銃を見ながら)この国ではまだ出回ってるのが少ないから仕留めたと思ったんだがな、何識ってたの?」角に向け構えるサロリ傭兵、反応はない「ちぇっ、あれだけ撃ったから装填の隙で今、攻めてくるかとも思ったのに」と角に弾を数発軽く放つが反応はない「何、弾切れ狙いなら、やめときなよ″多分無駄だから″何で大人しく遣られてくれよ」二つの銃口を向けたまま角に向かって歩いていく……………地面には血が数滴角に向かって続いているソレは避けられなかったこととあいつらの場所を示している。角に隠れる、床の血はトラップの可能性が無いわけじゃない、どちらの血なのか?両方はないな床の血は数滴だ、まともに当たったと考えるより擦ったと考えるなら躱す動作をしたときだ。しかも片方を盾にしたわけじゃなく抱えたまま移動して後方へ飛んだ、俺が装填準備とトリガーを引くまでにそれらのことをやり引いた直後に後方へか、単純に考えれば、あの八烏とかいった奴の方か、あいつの方が前に出ていたんで判断は早いか、あの奴隷のねーちゃんは人だ、最も神というのは俺の中では唯一心に決めている、何でポンポン無数に神がいるそんな事は信じ難いがね、まぁ何にせよこの程度の行為は戦場では珍しくはないし、1、2のバンっていない周りを見渡すも不自然に開いている倉庫の扉とそこに続く滴る血痕、うわっーあの独り言かましながらの乱射はキツいなと思っているも、さてとここまで来ると倉庫の扉を開けると「やっぱりか参ったな」そこには闇の中に向かう扉が大きく口を広げている、闇の細道に逃げ込んだ?このまま後を追うか?口元がそれを否定する無理だなあいつら探すどころかヘタすると迷子のミイラに成りかねない探すのは無しかここで待ち構えるのが得策か、この闇の細道はこの城のいくつもの出口に通じている、逃げるという選択肢ならば彼等はこの時点で逃走に成功しているが、少なからずあの八烏という奴は仲間を助けに来たはず、それに先程からの様子を見てると今あの部屋に居る連れを置いていくような感じではなかった。仮に置いて出たとしてこちらには連れがいるならばやることはあの相棒の始末か後ろを向き部屋へ戻ろうとすると暗闇から後ろに当たる感じ振り返ると弾倉の一部をへっぺがしてガッシリと抱き込む奴隷のねーちゃんの姿油断した装填を終え連射しようとするもそのまま彼女は暗闇に引っ張られる扉が壊されるも放った弾丸は暗闇に消えていく深い水の底に落ちていくように放たれた弾丸の当たる音は聞こえない扉の奥からの奇襲?予期していなかった暗闇からはこちらの位置は手に取るようにわかるが、こちらから暗闇を見るというのは闇に紛れて掴みにくい、ならば後ろ向きに銃を装填準備をしたまま乱射をする、なーに入ってくる場所さえ分かれば暗闇に向かい乱射をする扉さえ封じてしまえば後はこのまま後ずさり廊下に暗闇の扉の横の壁が壊されその反動のまま部屋を一週腰を掴まれ踏ん張りが効かず壁を吹き飛ばしながら八烏はそのまま半周して闇の中へ「クソっ!!」撃ち込むものの前には映画のスクリーン並みの暗闇への入り口を作ってしまっていた。部屋の中には風の音が鳴り響く大きな暗闇からいつ現れるかも分からないそんな敵に額から冷や汗動けない先程のような乱射は使えない、さっきの初動の遅れは痛かった。今度は敢えて撃たず部屋の扉を背にその場の暗闇に向けて視線を奥へ伸ばす………大分静かになった櫻咫は心配ないとして、そんな事を思いつつ顔の真横を拳が擦る先程までうずくまっていた似鳥にこの部屋を出て行ったサロリ傭兵が打った注射、伝達物質の遮断を止める作用かさっきから隙を見て何度か触れているも効果が無い「無駄ですよ、どういう理屈かは知りませんが貴方はソレに触れて命令すると言うことを効かせられるしかも強制的に、でもさっきの注射あれは脳の伝達を過剰に起こし疲労するまで動き続ける!」ギリギリで避けながら無理矢理伝達物質を増加して他の命令というか(涎を垂らし布から見えるその目玉は血走り充血しているそんな姿に)暴走気味というかまぁそんな風に造ったんですけどねっと、部屋の隅に追いやられる「どうですか?私のカスタマイズした″貴方のソレ″は」高らかに笑う領主、まるで昔の自分がいうように「物言わぬ道具はいいですよ……人はすぐに文句を言う、腹が減った、楽がしたい、死にたくない、殺せと言うのに勝手な判断で生かす、勝手に休む(口を苦々しくしながら)金を払ったのは私だ!対価を支払ったのはこの私なのだ!!」部屋の中に響く程の声、少したつと落ち着いたのか荒げた声を元のトーンに戻す「貴方のソレを見たとき、先祖の日記を見つけたとき″心が踊りましたよ″自分の目指すものはこれだ!とね」意気揚々と語る彼を見ると数百年前の自分の姿がダブって見えた、目の前の似鳥を彼のようにただの壊れるまで動く道具、物世界のことなどどうでも良かった、今でも物世界を愛でているのかといえば嘘になるが、彼のような考えは何だかイヤだ私が人のような感情?に染まった結果なのだろう。だが神世界いては分からないこと神世界から物世界への″加護″という形で力を貸すものはいるが、物世界まで来るものはそうそういない神世界に居辛いや新天地を求めて等あるが「気に入りませんね、その顔は″神様の余裕″ですか?」追い詰められるのにこんなことを考える、人だから馬鹿にしている訳でも、ましてや余裕がある、無いわけじゃないが、ただ″楽しいんだと思う″私の手の中ではこの形態の似鳥、私の伝達をさせないように遮断ではなく過剰に行う事で私の命令の阻止、それでは自分達の命令も聞かないが似鳥の特性である周囲パーソナルスペースより出ることによりそれを私のみに敵意を向かさせた、全くおもちゃを与えるとこちらが想定する以上の反応を示してくれる″可能性を魅せてくれる″似鳥の顔に触れるそしてそのまま似鳥を通過する「何で、薬の効き目、イヤ違うこんな短時間では切れるなんて(全く動かなくなったソレに向かい)何をした!」黙ったままの私の奥を見渡す確認「いや実際は少し動いている振動?体がさっきより小さくなってる?筋肉が減ってる?」前にいる私が「神経の枝数の減少させたのさ、一時的だけどね急激に老化させたのさ運動機能を極端にね、いくら刺激量を増やしても道が少ないと渋滞が起こるだけさ」にこやかに投げかけるその言葉に悔しそうな顔が滲む彼はこの瞬間も頭を巡らせ次なる一手を考えている″さぁ私の知らない世界を創ってくれる″という思いが私を今もワクワクさせていた。




