四十四ページ目
不鎖お姉さんの足が止まる壁に手を当て片手で胸をぎゅっと握る「あたしは何やってんだか!」壁を一撃八つ当たりして呼吸を整え「行きましょう急がないとあの子が心配だから(お姉さんが手を伸ばす)背に腹はかえられない」次に目の前に先程まであった本や本棚は消え去りそこにはあの鎖チビっ子がいた「こーんなことで縮めるんだ」鎖チビっ子の言葉を聞かず走り出す「急ぐよ!言師!」慌ててあたしも鎖チビっ子の横を通り抜け後を追うそんなあたし達を振り返りながら「物好きねぇー、一時の事とはいえ(虚ろに前をむき直し)今さら何も(高いて暗く見えない天井を見ながら)深入りすれば(眩しい太陽でも見るように)長い方が哀しかろうに……ねぇ……“お姉ちゃん“」ふっと消え去る……「何で何で何で……」気付いたら目の前の猫メイドがいない追い詰められていた確実に猫パンチが私を捉えていた覚悟もしてた「戻したくはないですか?」奥から黒いボックスを持った先程まで擱坐が追っていた「どの……どの口が……奪ったのは(睨みつけ)お前らの仲間だろーが」卯人は太陽核を起動しようとするも「確かに我々の仲間があなたの弟君を“神戻し“させたのは事実です。神戻しは人の死や死人の転生等と異なりこの神世界の一部へと戻る事です。元来“神戻し“した神は二度と同じ塊にはならないというのが、この神世界のルールです」分かってると「だから自分達のせいではないと!間違っていると!」込めようのない怒り守れなかった自分守って貰った自分どうしようもない憤りにふっと心地よい声が聞こえてくる「“この神世界のルール“ではここ以外の神の力ならどうでしょう“矛盾なる神“かの神はこの神世界の神とは違う(一際大きな声で)ならばここのルールなど軽く超えるほどのひっくり返すほどの力があると思いませんか、君の弟君はこの神世界のルールでは“還っては来ない“誰のせいにしろ私たちを撃ってもならばあなたがノゾムモノハナンデスカ?」まるでドロドロとした真っ黒な腕が暗闇から這い出てあたしの目の前に手の平を翳してくる明らかに異質なその手は“掴んではならない“直感がそう言っている触れればもう堕ちていくだけだ。ならばそこの箱がいうように“他の選択肢“があるのか、そんなことをない?ない!ない、考えても思い浮かばない黒いドロドロとしたそれはアタシの体を包み込まれることにアタシは、アタシは……トリモドシタイ……広い空間へ出た今まであった本や本棚は進む道の部分のみ無くなっていた、まるで消えて無くなったみたいだった。不鎖お姉さんの後を追いかけると立ち尽くす不鎖お姉さんが目の前にはケースを持った女の子薄くないので死人ではない、神約を交わした人だ。その傍らにはネコ耳姿のメイド服然し薄い“死人“だと思ったがそのネコ耳メイドからは神力を感じる「不鎖さん、これって」呼びかける声よりも大きな声で「さっきまでここから擱坐の神力を感じていたわ(猫メイドを見ながら)あなたがやったのかしら」冷静を装いながら話す「あの双子の弟君なら先程光になられましたが」ちょーっと不味いですよとスーツケース片手に慌てる女の子どうやら本当に死人であるメイド服の女の子が神である擱坐くんをでもそれなら「不鎖さんちょっと待って!」そんな制止も聞かず鎖が髪の間から猫メイドめがけ飛んでいく「ニャーいきなり物騒にゃー」猫パンチで鎖を弾くこれには驚くさっきまで肉球的な手だったがあの銀色のグローブ?みたいなのはナンだろう?取り出したというよりは腕に填めていた銀色のアクセサリーが変化して腕についたといった感じだ彼女から感じる神力の正体がこのアクセサリーから強く感じる、この死人のメイドさんと一体化したそんな感じだ。先ほどのは神力に似た感じだったが今は違う擱坐くんと遣り合えたというのは納得がいく、不鎖お姉さんの体中から周りに鎖が展開される先が丸くトゲのような形をしている。一気に猫メイドめがけ「無駄ニャー、見切れる(鎖を横目に)見切れる(体幹を逸らし)見切れるニヤッと、これが貴方達、神々が見ている世界(微笑みながら)実際さっきの双子姉のほうと戦っていても感じていたけど、やっぱ″人と神″ってのはここまで違うとはね」残念ですにゃーとノドを鳴らしながら躍るように躱すそのすがたは猫がじゃれているようにしか見えない、擦りはするものの一向に当たる気配のない鎖だ「如何しますかニャーそろそろこちらから、ニャンニャン先程もそうだったけど(躱しつつ不鎖お姉さんに近づく)追いつめられるより(くるくると立ち直り反射で目の前に)追いつめる方が(肉球から銀色の爪を出し)これで終わり??」腕が動かない?目の前の爪は不鎖お姉さんの顔面ギリギリで動かない、よく見ると「鎖?」猫パンチ用のグローブは雁字搦めに鎖が巻きつくまるで蜘蛛の巣それだけじゃ無く周りには体中鎖で身動き取れなくなっている「バカにゃ?ちゃんと躱したし、それにこんなに多数の鎖はどこから?」其れを聞いて「どこから?躱すのに夢中になりすぎて気づかなかっただけ」手を広げる不鎖お姉さんから出る鎖はせいぜい七本、然し猫メイドと不鎖お姉さんを取り囲む鎖はその三倍から四倍の数だ!不鎖お姉さんから出た鎖を辿っていくとその理由が分かる「鎖の先端に注目!何か気付かないかな?」促された猫メイドが「分かれてる?それに分かれた鎖がまた分かれる?」すると鎖お姉さんが猫メイドの目の前にサンプルの鎖を取り出す「この二つの鎖何か違わない?分かるかな~(鎖をユラユラ揺らしながら)ニャー太郎ホ~レホ~レ」鎖で身動き取れないが首を傾けつつ!目を見開き自分の周りの鎖を確認する「大きさニャー!アタシに絡んでる方が二回りくらい小さい!げどそれって?」どういうことと呻る猫メイドに猫じゃらしならぬ鎖じゃらしが種明かししていく「さてトリイデマシタル何の変哲も無いこの鎖しかし(不鎖お姉さんが先端の丸い珠に触れると)なーんということでしょう(触れた部分を避けるように左右に先端が丸い鎖に分かれた)触れる場所、さっきあなたは躱すと言いつつも完全に躱し切れていなかった。最も少し当たるようにギリギリわざと擦らせたりした。そうやって少しずつ角度を変えて触れさせることにより″鎖の巣″とでもいいワナに猫をおびよせたってわけさ」こんなものと藻搔くが「コイツは成りは小さな鎖だけど強度自体は変わらないよつまり″小さくなればなるほど隅々まで入り込み、身動き取れなくなるのさ蜘蛛の巣みたいにね、あなたが言うように″人と神″この差は埋まらないだからといって″神力を得たから神様″ってのはムシがよすぎる神は努力も何もしない訳じゃない、だからこうやって一本調子にならないようにしてるの……そっかあなたと戦ってたのは理母の方が……それでスイッチを使って……擱坐らしいわね(猫メイドの腕の銀色のグローブを見つめ)どうやら神溜鋼から出来た神器質が彼女達死人に力を与えたみたいね」動けない彼女から近くのスーツケースの女の子に視線を移す「君は死人では無いわね、生きた人みたいだけどどうやってここへ?」不鎖お姉さんからの質問にスーツケースをガッチリ抱え込んだまま喋ろうとしない「力づくってのはあまり好きじゃないんだけど」と今度は先端の鋭い鎖を取り出す女の子は臆しながらもスーツケースをよりいっそうガッチリ抱えて離さない………どうしよう目の前で双子の女の子の方を追い詰めたと思うといきなり双子の弟君が現れて光の粒に成っていた。直の事を知りたくて時閒って変な奴についていって帰りに卯人ちゃんにあって″直が戻ってくる″そんな言葉を信じてここまできた頭がグルグルとしてくる全くあり得ない話を真に受けてここまで来た後には(ケースを強く握り)引く気はない!そんなあたしを見たのか「この程度ニャー」鎖が軋む引きちぎろうと必死に藻搔く卯人ちゃんに鎖お姉さんの根元が揺れる「言師悪いけどアタシはこの″にゃんこ″からもう少し話し聞きたいから」そんな鎖お姉さんの横を通り抜けアタシの正面に立ちはだかったのは白い衣に黒い龍の模様が入っている。頭には髪を束ねる?菱形のキレイな宝石を囲むように三日月がついた神々しい髪飾り、鼻のところに黒い小さな鼻メガネを付けている。その先程までの横にいた女の子から鎖お姉さんの横を通り終えアタシの前に出てきたその表情は背の高さが同じくらいなせいか目線がキッチリアタシを捉えている″闘う″その目線を通し彼女の目に映るアタシが彼女を見据えている姿がアタシの中にあるのが分かる戦えないのに力が入る、受け止める事しか出来ないのに″負けたくない″そんな身の程知らずな言葉が浮かんでくる「あなたは何者?あなたは″神じゃない″人なんだよね?」つい言葉が出て来る。相手が誰であれ、アタシはママの為にいや″あたし自身の為に″取り戻すんだ(歯を食いしばりながら)そんな覚悟を持ったアタシに「あたしは言師(髪留めから一冊の本を取り出す)この神約聖書を持って言葉を交わしながら解決していきたい(にこやかに)そんな人なんです」馬鹿げた事だと一蹴する者も居るが目の前の彼女はそんな馬鹿げた事を笑いながら胸を張って言えるあたし以上の身の程知らずだった「だったら″話し合いましょう″」急な提案アタシは握り絞めていたケースを離し両手を前に下げながら「あたし達は、ここに″時閒の片腕を探しにやって来ました″(頸だけを下を向き床に視線を移す)ここに入ってきた当初″この中で最も大きかった一番底の方から感じる神力は(前をむき直し目の前の言師を見ながら)今はそこからは感じない、この事はあたし達の″目的の達成″を物語っていますつまりあなたたちと争う必要はもう無いかと」身勝手な言い分そんなことは分かっているけど彼女、言師は″言葉を交わす″そう言っただったら意外に分かり合えるかも?等と自分でも都合のいいことを考えてしまう。そのとなりで「クニャーァァーーッ!!」悲鳴にも似た歯を食いしばりながら、小さな鎖をぎゅうぎゅうと締め付けられる猫メイドさんがいる「″話し合いを″か言師やわんわんは甘いから、もしかしたら今回の事″逃がしてくれる?″なーんて調子のいいことを考えてる?だったら(鎖が紡ぎ出す猫メイドの音階は更に高さを増していく)この死人が苦しい思いする事になるわよ、あくまで″対等″だなんて考えは持たない方が身の丈に合うという者」すかさず「あまり手荒なのは!」という言師に「あんたの考え方までちゃちゃ入れる気は無いけど、この状況下で″この子たちを逃がす″なんて選択肢は無いんだからね、それは絶対に無い」やっぱり猫メイドの拘束は解けないかしょうが無い「分かりました、それでは彼女への拷問は止めてください、彼女達はアタシ達が雇った死人です。今回の事情は彼女は何も知らないです。いくら拷問しても無駄だと思います」キッパリと断言する彼女の目に「分かったわ、ただし最低限の拘束はさせて貰うそれに(猫メイドが緩んだのを確認し神力の発動しようとするも緩んだ鎖が締まり苦悶の表情を浮かべる)″お痛の素振り″には(人差し指を口元に運びながら)躾ちゃうから(目の前の猫メイドを見終わった後にそのまま見下すような目線を此方に投げかける)そのつもりで」其れを聞いて「大人しくしてくださいカトハカさん、お願いですから」少し強めにお願いすると、わかったと抗う事を辞める彼女「あたしとしてもその方が助かります夢神国ではお世話になったので」どうやら言師と猫メイドは面識あるみたいだ「じゃあ、あなたが話してくれるのよね?」そう聞いてくる言師に「答えれる範囲なら」そう返す「あなた達がここに来た目的はさっき″時閒の片腕の勧誘″だったしかも上手く勧誘出来たみたいだし、選ばれた神を集めているの?」アタシは識っていることを話す「アタシもよくは理解してないけど神だけじゃないみたい(鎖に繋がれた彼女を見て)カトハカさんも適合したので」なるほどと「あの銀色のグローブというかアクセサリーみたいな物が神溜鋼から創られた神器質なのか、ではこの神器質……銀色のアクセサリーを作ったのは誰ですか?」アタシは手にしていたケースを見つめ「多分あの社長さんかな、えっーとプロキシアスったかな」その言葉に反応する言師と鎖のお姉さん「それでそのプロキシアスの社長は今どこに?」厳しい顔で迫る「何でも自分は動けないってそれであたしや卯人ちゃんが代わりに」その卯人ちゃんはあれ?さっきまで一緒だったはずの時閒の片腕さんの神力しか感じない……これっておいていかれた……激しく動揺した。壁を突き抜ける音と共に「ここまで上に上ったのは初めてか」動揺を消し去るほどの登場、首を傾けつつ周りを見渡すその者は「時閒の片腕!」ふと口に出てしまった事からも自分のテンパり具合が分かる「ケースというのはそれか他の者は(言師の方を向き)神約聖書なるほどお前さんが″ゲンシ″じゃったか(そのまま目線を鎖お姉さんに)その姿……そうか(視線をその先の鎖に巻かれる者へ)後は死人か(再びアタシに標準があい)お前さんが″揺″でいいのか?」アタシがゆっくり頷く「黒い箱……社長だったか、その者から指示があっての」黒い箱?よく分からなかったが社長ってことは、あれ?こっちへは来れないはずではとも思ったが今は現状を話す「卯人ちゃんは一緒だったはず?ですよね?そのあなたに会いに来たでしょ?」それならと「その黒い箱が連れて行った何やらまだ″適合者″が集まらんそうでな」そっか確か全部で八つ今適合しているのは、卯人ちゃんと鎖に繋がれている猫メイド死人のカトハカさん、そして自分の右手に力が籠もるまだ力は発現していないけどあたしも加えると三つあと五つ適合者探しはまだまだかかるんだ、そうだ!「あなたも適合の為に」そう言いケースを開こうとしたとき鎖が軋み「そこのオミャーあの妖精っ子の知り合いということはあたしらの味方ですにゃー?」時閒の片腕にそう尋ねる「妖精っ子?あぁ彼奴か、そうだな味方だ!」はっきりと応えるその声を聞き「ニャラバー、そこの彼女を連れて行ってもらいたいニャー、今この通りあちしでは、その子を連れてこの場を切り抜けるのはこの状態では不可能だが(神力を込める当然鎖はよりしまり苦痛の時間が再現される)ニヤーッ!!(激痛が全身を襲う)あちーーーシィが必ャーらじゅーーー(痛みは感覚の鈍化どころか、そのものすら失わせ)足ゅーわぁーととめーりゅー(気を抜けば間違いなく″持っていかれる″そんなはっきりと分かる感覚)かりゃーぁー!」そんな彼女の答えに「だそうだがどうする?」あたしは自分の持つケースを時閒の片腕に差し出すと「これは?」アタシが「ここで適合を見たかったけどそいつも不可能なようです。なのでこれお願いします。卯人ちゃんへ(あたしは自分の右手のアクセサリーを見ながら)あとこれも……」置いていけない猫メイドさんが″適合者になったから″その理由が無いとはいえないでも、家族を取り戻す以前に″居なくなるツラさ″それが分かるから、猫メイドさんはこれは仕事だって割り切っているでもこのままこの時閒の片腕と上手く逃げられてそのあと(鎖に埋もれ苦しむ猫メイドの押し殺す声を聞き流しながら)この後カトハカさんはどうなるんだろう、頭の中で恐ろしいイメージは浮かばなかったその理由は言師の言葉だ。それにどうしても無慈悲な者には見えなかったからそれになんて言えばいいあたしにはマナノ侍さんにあった時の事がとても怖い″助かるために切り捨てました″かどう取り繕っても同じようなニュアンスになるだろう。彼女達は仕事と割り切り″そうか、シカタナイ″と済ませるかもいや今までだってそう言う場面は多かったんじゃないだろうか、なのでこれ以上″失って壊れるのは嫌なんだ″矛盾していた取り戻したいどんなことをしてもそんなことを思う一方で壊れるのに加担するのが嫌だなんて、ホントにアタシは……!受け取られたと思われたスーツケースはまだアタシの腕の中重みは軽くならないそれどころかアタシの進路をすっぽりと覆ってしまう影「其れを預け君はどうやって彼女を助ける?」そんなものはない「お願いします」出来ることはそれしかない影はさらに「あのゲンシはそれでも考えるかもな、だがあの鎖の持ち主たるアレはそう安くはないさ本来のアレならまだ識らぬが、少なからず自分の識っている今のアレでは、キミの期待しているモノは淡いモノと言わざる得ない」そして次に鎖の彼女の方へ「キミも甘い、キミは死人だ″この場は何とかするか″死人は本来、神力は持たないはずだ。神器質の作用によってキミは今神に等しい力を得ている″この場をなんとかする″という根拠はそこにあるんだろう(苦しみながらも話は聞こえている)だが現にキミはまだ喋れているのは何故だとそれはキミの神器質の力?とんでもないそれは(指を立て鎖のコントローラーたる者を指差して)彼女が調整しているからに他ならない今は此方への警戒も有り先程よりも少し弱いはずだ故にキミは辛うじて喋れるのさ、だから!」鎖毎、腹に当たりに響く念い一撃が入る「キミらはもう少し自分を大事にすることを考えてもいいんだよ」鎖を砕くと直ぐさま肩にあたしも背負われていた反対の肩には気を失ったカトハカさんを積んで言師の横を通るとき「見ての通り獸神ではない、答えは龍神だキミらの敵になってしまうがわんわんくんに……″済まない″と伝えておいてくれ」そう言い残してその場を去っていく。




