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ポーション鍋

早速庭に出て、丸くて赤い葉っぱを探してみる。ポーションの材料なんだから、草っぽい感じのあれだよね。


 池の近くにある薬草畑らしき所にいってみる。そこには丸くて赤い葉っぱと、丸くて青い葉っぱと、ギザギザで赤い葉っぱとギザギザで青い葉っぱが一畝ごとに植えられている。


「なんていうか、原色の赤と青の葉っぱってシュールだなぁ」


 紅葉したのとはちょっと違うまっかっかの葉っぱと、目の覚めるような青い葉っぱはまるで作り物のようにも見える。


「野菜の葉っぱは同じ緑なのにね」


 ただ、これだけ目立つ色ならば、他の草と間違えなくて済むかもしれない。雑草とか生えてきてもすぐに分かりそう。もっともそれは雑草が緑色だったら、っていう前提だけど。


「むーん。そうすると、このおそらく薬草だと思われる葉っぱも実は雑草の可能性もあるって事なのかな~?」


 しばし腕を組んで考えたけど分からない。諦めた私は、庭を歩き回っているコッコちゃんに頼る事にした。


 気のせいかもしれないけど、コッコちゃんって私の言葉、理解してるような気がするんだもん。


「コッコちゃーん。教えて欲しいんだけど、ポーションの材料の薬草ってこれでいいの~?」


 赤くて丸い葉っぱを指さして聞いてみたら、コッコちゃんは黄色い羽をパタパタさせながら近寄ってきた。そして葉っぱを見て「コケッ」と鳴く。


 うん。これでいいみたい。

 コッコちゃんとも意思の疎通ができて、ちょっと嬉しいなぁ。


「じゃあこれを10枚摘んでっと」


 家に戻って水を入れていた鍋に葉っぱを入れる。蓋をすると沸騰したのが分からなくなりそうなので、今回は蓋をしないで沸騰させてみよう。


 ポーション鍋ができるまでの間に、煮込んでいた野菜スープの味を確かめてみる。お玉でよそって、小皿に取って。まだ熱いからふーふーしないとね。


「ふーふー。さて、おいしくできてますよーに」


 ゴクン。


 お……おいしいいいいいいいい。なんだろう、色はついてないけどうま味成分っぷりのミネストローネみたいな味だー!やっぱり新鮮な野菜なのがいいのかな。それともあの万能調味料の力なんだろうか。


「どっちにしてもウマー!」


 これなら夕飯も楽しみだなぁ。あ、後でパンの実(勝手に命名した。パンだといいなぁ)も、もいでおかなくちゃ。


 いきなり階段から足を滑らせて死んじゃったけど……これも第二の人生とか考えると、そう悪くないんじゃないかな。

 そりゃあ確かにやり残した事とか家族の事とか、心残りはいっぱいあるけど。

 なんていうんだろう。私が住んでいた世界とは離れちゃったからか、そういう悲しい気持ちが少しずつ薄れていっているような気がする。

 ほんと、なんて言ったらいいのかな。私という存在が、どんどんこの世界になじんでるっていうか、うまく言えないけど、そんな感じ。


 だから、せっかくシンシア・グローリィが残してくれたこの家とコッコちゃんを、私も大切にしていこうって思った。

 それにこんなに色々残してくれているシンシア・グローリィが生きていた世界だもん。きっと素敵な世界に決まってる。だからいつか、家の中だけじゃなくて森の中とか、町とかも行ってみたいなぁ。


 その為にはがんばってLVを上げないといけないんだけどね。

 どれどれ、そろそろポーション鍋はどうなったかな~?


 鍋を覗いてみると、不思議な事に赤い葉っぱは溶けてしまったようで、赤いお湯がグツグツと煮え立っていた。


「これで完成かな?」


 火を止めて鍋の中にゴミが入らないように蓋をしておく。


「あとはジョウゴと瓶か~。地下室にそれっぽいのがあったかも」


 地下室に降りると、たくさんの木箱にいっぱい入った瓶と、それからジョウゴも見つかった。これでポーションが完成するね!


 一つの木箱には大体50本くらいの瓶が並んでいた。コルクのような栓もセットになっている。とりあえず20本くらいの瓶だけ木箱に残して、残りの瓶は棚に並べておく。そして木箱を持って1階に戻った。

 カウンターに瓶とジョウゴを並べておけば完成だ。ポーション鍋が冷めたらここに入れればいいもんね。


 さてと。冷めるまでは何をしていようかなぁ。

 ここにはスマホもTVもPCもない。おまけにおしゃべりする相手もいない。暇つぶしができる事が何もないんだよね……


「あ、そうだ。お風呂ってないのかな」


 今まで見た家の中にはお風呂らしきものはなかった。もしかして池で水浴びだけとか!?えー。お風呂大好き日本人の私に、そんな生活は厳しすぎるよ~。


 それらしき入り口はないだろうかと探してみたら、階段の下にも扉があるのに気がついた。もしやここがお風呂パラダイスへの入口かも!?


 ドキドキしながら何の変哲もない木製のドアを開けてみる。倉庫とかじゃありませんよーに!


 でも残念ながら、ドアの向こうには棚が作りつけてある小さな部屋しかありませんでした。棚にはシーツとかタオルがたたんでおいてあります。

 ここも倉庫か~。がっかり。


「なんてこったー!お風呂、お風呂がなーーーーーい!」


 両手で頭を押さえて思わず叫んでしまった。庭にいたコッコちゃんが何事かと家に駆けこんでくる。三白眼が2割増しだ。


「コケッコケ?」


 いやでもちょっと待って。部屋の奥に、もう一つドアがあるじゃない。もしかしたら―――

 ゴクリと唾を飲んでドアを開ける。するとそこには。


「お……お風呂だー!しかもかけ流しの天然温泉だー!」


 そこにはまるで温泉旅館にあるような素晴らしいお風呂が存在していたのだ。歓喜の声を上げずにはいられない。

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