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初遭遇は餌付け作戦で

 腹ごしらえをすると決まれば行くのはキッチンだ。……地下室に食材があるのは知ってるけど、そっちは後で行こう。うん。


 キッチンに回って見てみると、大きな鍋の後ろに置いてあってさっきは気がつかなかったけど、台の上に置いてある籠の中に確かに金色の実が置いてあった。


 これがペットのコッコちゃんの好きな実か~。


 さっきからニワトリの鳴き声がしてるし、コッコちゃんってニワトリだよね。雌だといいなぁ。卵産んでもらえれば、毎日卵が食べれるもん。

 じゃあちょっとこれを1個持って庭に出てみようかな。


 人が食べても安全か分からないので、金色の実を1個だけ取って玄関へと向かう。カチャリと音を立ててドアが開くと、黄色い塊が突進してきた。


「コケーコッコッコッコ!コケー!」

「うわわわわ」


 なんだかもの凄い勢いで突進してきたので、思わずそのままドアを閉めたら、ゴッツンと大きな音がドアの向こうからした。


 これってさ、絶対ペットのコッコちゃんが突撃した音よね。もしもとっさにドアを閉めなかったら、思いっきりくちばしが刺さってたんじゃ……


 もしかして不審者だと思われたとか……?


 コッコちゃんはシンシア・グローリィのこの家で、番犬ならぬ番ニワトリだったのかもしれない。だったら友好的な関係を結ぶためにも、この実をあげるのが一番よね。私はこれからこの家に住まわせてもらうわけだし、先住者には友好的に貢物をしないとね。


 そ~っとドアを開けて、外の様子を窺う。するとまた黄色い塊が突進してくる。


 ひええええええ。

 私は思いっきり遠くに金色の実を投げた。すると黄色い塊はそのままの勢いでUターンして上手に実の下に行く。そして羽を広げてジャンプすると、黄色いクチバシをパカーッと開けて実を丸飲みした。


 違う。なんか違う。

 予想では白い普通のニワトリがコケーと鳴きながら黄色い実をつついて食べて、そして私と友好的な関係を結ぶ予定だったんだけど。

 なんだろう。この肉食的な勢いの生き物は。

 しかもニワトリの鳴き声だけど、黄色いし。どっちかっていうとヒヨコ?三白眼で可愛くないけど……


 可愛くないって心の中で考えたのが伝わったのか、また三白眼のヒヨコがコケーッと獰猛な鳴き声を上げながら向かってきた。


 ひいいいいいい。怖いよぉぉぉ。


 思いっきりまたドアを閉めると、ゴツッっと当たる音がする。今度はそのままコンコンコンコンとドアをクチバシでつついているらしき音が聞こえる。


 思わずそのまま両手でドアを押さえて開かないようにした。でもクチバシでつつく音はなくならない。


 う……うわぁ。これって怒って開けろって言ってる気がする……

 でもこれ開けたら危険だよね?かといって、ずっとこの家から出ていかないっていう訳にもいかないし……


 う~んと悩んだ私は、とりあえずドアの鍵をしっかりかけると、またキッチンに行って今度は籠ごと金色の実を全部持ってきた。

 そしてドアの前で大きく深呼吸をする。


 スーハー。

 よし、いざ参らん!


 鍵を開けてー。隙間から振りかぶってー。

 いっくぞー!

 投げるべし投げるべし投げるべし!


 金色の実を投げると、三白眼のヒヨコはシュタッっとジャンプしてその実をキャッチする。それを何度か繰り返してるうちに、なんだか楽しくなってきた。


「コッコちゃん。私ね、上村真希うえむらまきって言うの。あなたの飼い主のシンシア・グローリィが私を呼んだみたいなの。だから仲良くしてくれると嬉しいな!」


 金色の実が残り4個になった時点で、私は大声でコッコちゃんに自己紹介をした。やっぱりね、自己紹介って大切だと思うの。


 私の自己紹介を聞いたコッコちゃんは、コケーッと鳴いて最後の金色の実を食べた。


 ごくり。

 な……仲良くしてくれるかな。


「コケコケコケー」


 ゆっくり近寄ってきたコッコちゃんは、仕方がないから仲良くしてあげる、とでもいうように、私をその凶器に等しいっぽいクチバシでつつこうとはせずに、開けたドアの隙間から家の中へと入っていった。


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