冒険の幕開け・前編
説明回です
「ん、もう朝か」
昨日は散々だったな。話しながら寝るなんて体験、するとは思わなかった。あのリザードマンめ、覚えておけよ。後で何か嫌がらせをしてやる。
そういえば、3日も寝たきりだったから体が凝り固まってるな。ちょっとベットから降りて…
「またか!起きろこの翼付き幼女!」
つい叫んでしまった。後悔はしている、反省はしていない。
こいつめ、また左腕に巻きついていた。確かに可愛い、がそれはまた別の問題である。なんと言っても、締め付けが酷すぎる。全く左腕が動かせ無いとは思わなかった。
「んにゃ、もうたべられないよぅ」
何がもう食べられないだよ、典型的過ぎるんだよ!
「いい加減起きろっ!」
「あいたっ!」
どうだ、この威力!伊達に固定されてるだけないだろう。
「もう、何するのさ。人が気持ち良く寝てたのに」
「寝てても文句は言わない。が、人の左腕を持ってくな!」
これが彼女とかならあぁ可愛いなぁで済むが、そんな甘々してる訳では無い。
「お、おぉ、小僧たち。お盛んだなぁ、じゃあ俺はこれで…」
「逃がすか!」
このリザードマン、空気が読める振りをして思いっきり誤解していきやがった。そんな状態で逃がしてたまるか!
「何がお盛んだなぁ、だ!誤解だ、俺は何もしていない!」
「分かった、分かったから落ち着けって」
はぁ、いい奴かと思ったが馬鹿なだけかもしれない。
「それで、2人とも大丈夫なのか?」
「あぁ、大丈夫だ。痛みもない」
「僕も大丈夫だよ、直継がいるからね」
どういう意味だ?あぁ、話し相手がいないとかかもな。まぁどうでもいいがな。
「じゃあ、マイカードの手続きに行くか」
ということで、朝飯を済ませ、斡旋所に行くのだった。
「この度は、誠に申し訳御座いませんでした」
斡旋所に行くと、前回の受付嬢が開口一番に謝罪して来た。
「あ、ああ、構わない。この通り、誰も死んでないしな」
「…はぁ、まぁいいわ。今後私達は貴方達に危害を加えない事を約束するわ」
何を言っているんだ?そりゃそうだろう。このまま、また殺しますとか言われたら困る。言っちゃ悪いが、当然だろう。
「…安心してくれて何よりよ。それじゃあ手続きを再開するわ。先にはい、これが貴方のマイカードよ」
カードは、日本でも一般的な大きさのものだった。クレジットカードっぽいといえば、理解してもらえると思う。
そこには、ナオツグ・アマノ、種族人間、Eランクと、簡潔に書かれていた。
「これが最後よ、左手の甲を見せて」
言われた通り前に出すと、スタンプを押された。そのスタンプは、幾何学模様の様で何かを読み取る事は出来なさそうだ。
いやいやそうじゃなくて、何なんだよこれ。
「…は?」
「これが冒険者の証よ」
流石にスタンプが冒険者の証は無いだろ。せめて腕輪とかドッグタグとかじゃないのか?それとも、子供だと思って馬鹿にされているのだろうか。
「これ、取れるのか?」
「は?何言ってるのよ、取れる訳無いじゃない。取れたら相当の冒険者が路頭に迷う事になるわよ」
どうやら、大切な物の様だな。でもこれ、何に使うんだよ。
「はぁ、分かって無い様だから説明するわね。まず、これを意識する事で、自分のステータスが参照出来るわ」
ステータスって、あのゲームにある様な奴か?STRとか、AGIとかっていう、あれだろうか。
ともあれ、実際に確認してみよう。確か、スタンプに意識するんだっけか。
「…うおっ!?」
意識したら、一気に目の前に自分のステータスらしきものがオーバーレイ表示されてきた。
やばいな、本当にゲームでよく見る、攻撃力とか防御力とかが書いてあるぞ。
「初めて見た所悪いけど、まだ続きがあるの。今は消してくれないかしら」
「どうやって消すんだ?」
「消えろって念じたら勝手に消えるわ」
本当だ、消えろって念じてみると、スッと消えてった。
「そのスタンプにはまだ効果があるの。それでレアリティのついた物に所有権を付与する事が出来るわ。方法はその物にスタンプをくっつけるだけよ」
「それなら、盗みも簡単になるんじゃないか?」
「確かに、そう思われる事もあるわ。だけど、店側にもそれを防ぐ方法があるし、人と人ではまず無理だわ」
なんだ、大丈夫なのか。なら安心だな。
「登録した物を、持ち主の了承無しに一定範囲離すと、持ち主に警報が出るのよ。でも、警報が出てから24時間経つと、自動的に所有権が解消されちゃうから、気を付けるのよ」
なるほどな、まぁ大丈夫だろう。ここまで厳重なら、取ろうとは思わないだろうしな。
「スタンプについての注意は大体これだけよ。これで登録完了、次はそこの堕天使の番よ」
ということで、俺達の登録は終了した。




