カミングアウト
「おぉ!漸く目覚めたか小僧!」
あいつが眠りについた所で、ライゴが勢いよく現れた。
「どうしたんだ?そんなに騒いで」
「いやぁ、2日も寝ているなんて、死んじまうかと思ってヒヤヒヤしたぜ」
2日も寝ていたのか、そりゃあ心配される訳だ。それでも、日本人なら当たり前だと思う。日本の中では、あんな事は滅多に起きないからな。
「そういや、堕天使の嬢ちゃんはどこ行ったんだ?ずっと小僧にベッタリだったんだが…」
「…あ、あー!さっきトイレに行った様な気がするなぁー」
「そうなのか?にしても変な喋り方をするなぁ」
…流石に布団の中でぐっすりです、何て言えない。何としても、隠し通さねば!
「凄かったんだぞ、片時も側から離れずに付き添っていたんだからな」
「そうだったのか」
「ああ、しかも全く寝ずにな。目の下なんか酷いクマが出来てたぞ」
「どっかで寝かせてやれよ」
「勿論俺もそのつもりだったんだがなぁ、全く離れようとしないんだ。その時は……」
どうやら、どうしても離れようとしなかったらしい。それで、見兼ねたライゴが何とか寝かせようとしたらしい。が…
『おい、嬢ちゃん!そろそろ寝ないと体がおかしくなるぞ!』
『あぁぁぁ………』
『安心しろ!この小僧も嬢ちゃんも、身の安全は保障する!だから…』
『離してよ!僕を守ってくれるのは、直継だけなんだ…あぁ、僕の所為で……』
…という訳で、全く話を聞かなかったらしい。で、せめて寝ろ、とのお叱りを受けたら、なんと俺のベットに潜り込んで、これでいいでしょ?的な態度を取ったそうだ。
なんだよ、俺のベットの中にコイツがいることバレてんじゃん!
「今回は、済まなかった。全ての責任は俺達にある」
「いや、いいさ。きっと今回の対応が普通だったんだろう」
「本当に、済まなかった…」
「何度もやめてくれ。それに、1つの命を守ることが出来た、それだけで良いじゃないか」
これは本当だ。あそこで守ることが出来なければ、きっと後悔していただろう。
「あーもう分かった、本当に強情だな、小僧は。ま、その強情さに感謝だな」
「そういや、マイカードの件はどうなったんだ?」
「あぁ、小僧が目覚め次第、再開出来る様にしてある。何なら、今から行くか?」
「いや、それは明日にしよう。まだ安静にしていたい」
「そうか。そういえば、お見舞いの品を持ってきたんだ。食べるか?」
そう言いつつ、早速開けていた。どうやら、果物の様だった。まぁ、お見舞いには果物、王道なんだろう。
その果物を例えるならば、縦に引き伸ばした無花果の様な形をしていた。
見ているとギュルルル、と腹が鳴ってしまい、中々恥ずかしかった。
「ははっ、2日も寝てりゃ腹も減るさ。そう気にすんなって」
「お、おう、そうだな」
「ほら、食ってみろ」
そのまま渡されたが、どうやって食べていいのかが分からない。皮を剥くのか、そのままかぶりつくのか。もしここでかぶりつき、歯が折れる、何てことになったら笑いものだろう。
聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥という。ならば、潔く聞いてみよう。
「なぁ、どうやって食うんだ?」
「小僧、そんな事も知らんのか?人間共のところにもあっただろ?」
「あー…いや、ちょっと事情があってな」
「何だよ事情って。まあいい、そいつはそのまま食うんだ。怪我人に面倒な物持ってくる訳ないだろ?」
流石ライゴさんや!どうせその優しさで女を落としてきたんだろう、しかも無意識で。
…それでも、素直に受け取っておこう。
「それもそうか、ありがとな」
「いいってことよ」
では一口…美味いな、この果物。甘さと酸味のバランスが丁度良く、しつこくない。
「美味いな、これ」
「だろ?…それで小僧、事情ってのはどういうもんなんだ?」
まぁ、ここまで来てだんまりも無いだろう。話してもみるか。
「あぁ、俺はな…異世界から来たんだ」
「そうかそうか、異世界か。……異世界!!?」
「そうなんだ、あのつ…堕天使が連れてきてくれたんだ」
翼付き幼女、と言いそうになったのは秘密だ。
「ほぉ…あの嬢ちゃんがねぇ。もう驚きゃしねぇよ」
「そのお陰で、こっちの常識は分からないんだ。だから、ご教授願いたい所なんだがな」
「常識と言っても何を教えりゃいいのかが分からんな。その都度教える、ってことでいいだろ」
「それもそうだな、じゃあそういうことで。これからもよろしくな」
何だか話してたら眠くなってきたな。そろそろ寝ようかな。
と思っていたら、ライゴがこちらをみて妖しい笑みを浮かべていた。そう、まるでおもちゃを見つけた様な…
「おい、何よさげに終わろうとしてんだ?異世界から来たんだろ、土産話、聞かせろよ」
この後、無茶苦茶寝落ちするまで話し続けた。




