目覚めの朝
※砂糖成分を多少含みます。ご注意下さい。
「知らない、天井だ…」
この台詞、1度は言ってみたかったんだ。ちょっと満足。多分、誰もが1度は言ってみたい、そう思っているんじゃ無いだろうか?
(そんな訳、無いか)
にしても、何でこんな所に居るのだろうか?律儀にベットに入れて眠らされている。
…あぁ、思い出した。確かあの堕天使を庇って、それで大怪我をしたんだっけか。無事でいるだろうか?いやまぁ、俺が手厚く介抱されているんだ。大方あの堕天使も無事だろう。
其処で気になった、自分の右手を確認してみる。すると、右腕の肘辺りから石膏の様なもので強制的に固定してあり、動かすのがやっとである。
(うわぁ、これは日常生活が覚束なくなるぞ。どうしようか……ん?)
不意に、何故だか残った左手も気になった。記憶が確かならば、何の怪我もして無かった筈だが、何故か固定されている気がする。
「んっ、んぅ……動かないな」
しかもこの固定具、全く動く気配が無い。俺を逃がさない為に付けているのだろうか?ただ、そんな事をするメリットがある様には思えない。考えられる説を1つ挙げるとするなら、派手に動くと傷が開く、とかそんな感じなのかもしれない。
「ん?ちょっと待て…」
左腕の固定具、動く気配は無いが、何だか柔らかい気がする。しかも、暖かい。そう、例えるなら、人肌位には……
バッ、と右手で何とか布団をめくってみると、其処には翼があった。
(イヤイヤ、翼があるっておかしいだろ。いやそうじゃなくて、どうなってんの?)
寝起きで惚けてる頭を何とか動かしてよく見てみると、他には綺麗な金色の髪があることに気付いた。
(え、これってもしかしなくても…)
「何で此処に居るんだよっ!?」
つい反射で叫びツッコミをしてしまった。
「ぅぁ、なぉつぐ…?」
寝起きだと思われる寝惚け眼の上目遣いでこちらを見ながら、外見年齢と一致した様な舌ったらずさで、可愛過ぎる程の声で名前を呼んできた。
卑怯だ、反則的な可愛さだろっ!思わず、理性がぶっ飛んでしまう所だったぞ!!
「お、おい、どうして、ここに……」
「ないふを向けられたとき、何故か力が出なくて、初めて僕が殺される、って思ったんだぁ…」
「そ、そうか…」
まだ寝惚けているのか、いきなり色々と話しかけてくる。
「とっても恐かったんだぁ…でもね、なぉつぐが助けてくれたんだぁ…」
…確かに、成す術なく殺されるとなれば誰でも恐いと感じるだろう。でも、その時は体が勝手に動いた様なもので、そんなことは全く考えていなかったな。
「だから、助けられたのはとっても嬉しかったんだぁ。だけど、僕の所為でなおつぐが倒れる事になって…」
責任を感じてるのか?それでも、目の前で誰かが殺されるよりは、傷付く程度で済む方がいい。
「だから、ずっと謝りたかったんだ。ごめんね、なおつぐ。ごめんなさい、ひぐっ、直継、ごめんなさい、ぐすっ、ごめんなさい、うぅぅ、ごめんなさい、ごめんなさい……」
えっ、えっ。こんなに思い詰めるものなのか?かなりの勢いで泣き始めたぞ。人と話す事すら少なかったのに、泣いている子供みたいな奴なんて手に負える筈がない。だが、どうにかしないと…
「お、落ち着け、な?こういう時は、えーっと…そう、謝るんじゃない」
「でも…でも……」
「謝るんじゃ無くて、えー、そう、お礼を言うんだ」
「僕の所為で傷付けたんだ。お礼なんて…」
「この傷のお陰で命を1つ守れたんだ。安いもんだろ」
「そう、だね…ありがとう、直継」
終始泣いていたが、最後には涙を浮かべながらも、儚げな笑顔をしていた。どうやら、気持ちの整理がついたみたいだ。
「すぅ…すぅ…」
泣き疲れたのか、安心した所為か、寝てしまった。
どうやら、本当に翼付き幼女みたいな感じになってしまった。ならば、自分が守るしかないだろう。
実際、今回の一件で天使というものはかなり印象が悪い事が分かった。ということは、ほぼ全員が敵なのと同じだろう。自惚れかもしれないが、こんな中では守ってあげられる人は俺しかいないだろう。
周りに味方が居ない苦しみは、俺がよく分かっている。そんな奴を、見捨てられる程薄情ではない。
(守る為には、強くならないとな…)
そう強く、心に決めるのだった。
助ける→惚れる
これぞチョロインの法則
…まぁこれが無かったら、半分くらい異世界モノである意味が無いかもですね。




