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立ち込めた暗雲

「はぁ、ライゴさんまた何てもの拾って来てるんですか!」

「安心してくれ。この小僧については、俺が保証する」


 おい!人を物呼ばわりしてんじゃねぇよ!俺は捨て猫か何かかよ!


「そういう問題じゃ無いんですよねぇ…まぁ、ライゴさんが保証するって言うのなら、確かに誰も文句は言いませんよ……」

「おい、そりゃどういう意味だ?」

「いいえ、何でもありませんよ。もう皆さんは慣れましたから。ただ、それとなく皆さんに言っておいて下さいよ?」

「はぁ、何でそんな面倒な事しなきゃいけないんだよ」

「あ・の・で・す・ね・!この街に人間が入り込んでいる、って噂が流れ始めたらどうするんですか!?それこそ、面倒な事に成りかねないんですよ…」

「お、おう、分かった。から、その、な?落ち着いてくれよ」


 見ればこの受付嬢、何十個もの呪詛を閉じ込めた様な感じになっている。

(うわぁ…超恐ぇ……これが人に出来る顔かよ………)


「直継、失礼だよ」

「そ、そうだな…」


 この堕天使、本当に鋭過ぎない?心読めないとか嘘じゃね?


「はぁ…何が失礼か知りませんけど、これも仕事ですからね。早く終わらせるわよ、あとは血を少し頂くだけです。さ、このナイフは熱処理済みだから、この皿に数滴こぼすだけでいいわ」

「はぁ……っ!」


 うわっ、結構痛いな。また同時に、少し懐かしい感覚がする。刃物で指を切ったのは、何時振りだろうか。

 一人暮らしを始めてから、流石に毎日お湯を使った料理(3分間待ってやる)現代科学の進歩(合言葉はレンジでチン)だけで済ませる訳にも行かず、仕方なく自炊を覚え始めた。

 自炊し始めた頃は、まだ包丁を上手く使うことが出来ず、よく手を切りまくっていた。初めての野菜炒めは血の味がしたのはいい思い出だろう。


「…はい、登録が終わったわ。マイカードの発行と渡すのはまた明日よ」

「ありがとうございます」

「さあ、次は其処の……」


 不意に、目の前の受付嬢が消えた。と同時に、風が直継の頬を撫でた。

(あ、あれ?どこ行ったんだ?)


「…気配を消してまで此処に来て、何をするつもり?喧嘩売りに来たんなら、刺し違えても殺すわ」

「やだなぁ、そんなに震えちゃって。僕は別に君達に何もするつもりは無いよ」


 後ろから声が聞こえたので振り返ってみると、先程の受付嬢が……この堕天使(フィー…ネ?)の首に何処からか取り出したナイフの刃を震えながらも当てていた。


「見え透いた嘘を吐くな、この天使が!今、此処で殺してやる!!」

「へぇ、君が僕を、ねぇ……あれ?あ、ちょっと待って、落ち着いて、ね?」


 一体何を慌てているんだ?堕天したとか言っても、元は偉かったんだろ?軽くあしらってやれよ。

 とはいえ、目の前で見知った人が殺される様な状況では見てるだけではいられない。


「おい、其処の受付嬢」

「五月蝿いわね、今邪魔しない……っ!?」


 流石に反応が速いな、目の前にあったペンを投げつけたが、ナイフで余裕で弾かれてしまった。だが、それだけで充分だ。これだけの隙があれば……


「本当なら仕返ししてる所だけど、残念な事に構ってる暇は無いわね。さぁ、早く死になさい!」

「ひぅっ!!?」


 受付嬢がナイフを振りかぶる。そしてその切っ先が堕天使の首に吸い込まれるように……


「なにっ!止められた!?」

「ぐゔっっ!!?」

「ぅぅぅぅぅぅ………」


 右手から鮮血が迸り、一瞬間を置いてから直ぐに激しい痛みが襲ってくる。

(あ、これはヤバいかも。なんかフラフラしてきた)

 指を少し切った思い出はあるが、手の平から手首まで切り裂かれた思い出は流石に無い。


「ちっ、殺し損ねたわね。にしても、私の一撃を受け止めるなんてやるじゃない」

「そう、か…ありがとよ」

「え……?」

「よくも邪魔してくれたわね、先に殺してあげるわ」


 実際本当にきつい一撃だった。手で掴もうとして止めていたら、指ごとバッサリいっていたと思う。俺が止められたのは、丁度手の平と垂直にナイフが入り、手首まで切り裂いてから、腕の太い骨に当たったからだ。この一撃で大分血を失った気がする。

(どうしようか、もう倒れそうだ…)


「おい、落ち着けよ!そいつは敵じゃねぇ、味方だ!!」

「例え理由があろうとも、天使なんて此処に居てはいけないものでしょう。何を言っているんですか、ライゴさん?」

「だから、そいつは味方だって言ってんだろ!天使なんかじゃねぇ、翼をよく見てみろよ!」

「あら、少しだけど黒く染まってるわね。だけど、まさか伝説の再来とでも言いたいんですか?」

「ああ、そうだ。しかも、あの教会から来たんだ、信じるしか無いだろう」

「ふうん、まぁいいわ。仮に堕天使じゃ無いとしても、力が出せないらしいから。敵だと分かったなら、殺すわ」

「だ、誰が、殺させるかよ…」


 どうやらこの堕天使は力が出ないらしい。だが、そんな奴を息を吐くように殺すなんて、絶対に間違っている。

 と、ここで意識に限界が来て、地面に倒れこんだ。

(あ、もう駄目だ、限界だな……)


「おい、大丈夫か!?助けてやるからな、安心しろ、こ…ナ、ナオツグ!!」

「はぁ、仕方ないわね、治療院に送る準備をして来ますよ、っと」

「な、直継、しっかりしてよ、ねぇ、直継!」

「嬢ちゃん、離れろ。これ以上は傷に障る」

「ああぁぁぁぁ……」


 ここで、意識が途切れた。

状況描写って、中々難しいですね。違和感があればすみません。

これを乗り越えた先駆者達には本当尊敬しますね。

これからも、どうぞよろしくお願いします。

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