これからの予定
「ごちそうさまでした」
このラーメンもどき、何かが違う気もするが、中々美味かったな。出来れば、また来たい所だ。
「あぁ、美味しかったけど、お子様…」
「どうだ、此処の料理は中々イケるだろ?」
今度は何を食べてみようか。だが、その前に文字を憶えないと、何が何だか全く分からない。
「そうそう、此処の話をしていなかったな。此処は、総合斡旋所ってんだ」
総合斡旋所?変わった名前の飯屋だな。
「おい小僧、この店の名前って訳じゃねぇからな」
「あ、あぁ」
そんなに分かりやすい顔をしているんだろうか?
「直継、充分分かりやすいからね。はぁ…」
「そういうことだ。ていうか嬢ちゃん、もう気にすんなよ」
この堕天使、まだ気にしてたのか…
「話を戻すぜ。それで、この総合斡旋所だが、1階にはこのレストランと、商売斡旋所がある。で、2階には店がある。大抵の物は此処で揃うな。そして、3階には冒険斡旋所がある」
「その、斡旋所とやらは何なんだ?」
「商売斡旋所はな、まぁ商売に関係するものが集められた場所だ。様々な商売ギルドと繋がりがあって、色々なことが出来る。だが、此処を通さずして商売していると、捕まるから気を付けな。でも小僧には関係無さそうだがな」
成る程、商売のルールみたいな所か。確かに、異世界に来て商売する気もない。
「で、冒険斡旋所ってのはな、所謂冒険者達の職場だな。簡単に言うと此処で貼られた依頼を受け、こなし、報告するって感じだな」
異世界モノにはよくある、冒険者ギルドみたいな所か。なら、此処でやることは…
「俺達の身分証明証でも発行するのか?」
「身分証明証?まぁそんなものなのかもな。その通り、其処でマイカードを登録してもらう。これが有るのと無いのとでは、まるで違うからな」
やっぱり、何処でも身分証明は必要なんだな。そりゃ確かに、不審者なんて相手に出来ないか。人間だし。
「其処で、小僧と嬢ちゃん2人に話があるんだ」
「僕たちに話って、何だい?」
話って何だろうか。まぁ恐らく、これからの事についてだろう。
「このまま行くあてが無いなら、俺達のギルドに入らねぇか?勿論、強制はしない」
ギルド、か…
確かに、今の俺には必要かもしれないな。後ろ盾的な意味で。
だが、果たしてそのギルドでやっていけるのだろうか?正直、此処まで人と話したのは両親が生きていた時以来だろう。正直言って、奇跡に近いと思う。
今はまだ2人しか居ないが、ギルドとなると数十人、下手をすると数百人規模かもしれない。そんな中、俺が入っていっても、まともに過ごせる気がしない。前の世界のお陰で集団は苦手なんだ。
だが、こんな世界で1人で生きていけるのだろうか…?
「心配しなくてもいいよ、直継」
「……え?」
「例え独りの道を選んでも、僕がついているから。元々この世界に呼んだのは僕だからね、責任くらい取るよ」
…なんだろうな。此処までストレートな優しさを受けたのは久し振りな気がする。例えそれが責任から来るものでも、優しさが伝わってくる。
「悪い、折角の誘いだが、断らさせて貰う。俺が集団に入ると、迷惑を掛けると思うからな」
「…そうか、それが小僧の選択なんだな。だったら俺が言えることは何もねぇ。だがな、事実としてお前は人間で、何も知らねぇ初心者だ。だからな、一端の冒険者になるまで多少、手伝ってやるよ」
「…ありがとう」
「なぁに、いいってことよ。乗りかかった船だからな。沈没されたりしたら、こっちが困るってもんだ」
本当にいい奴だな、このー……リザードマンは。
やはり人間というものは浅慮なものなのかもしれないな。自分の利益だけを考えて、その相手のことを考えてもいない。考えているのは、如何に自分の行いを正当化するか、それだけだろう。
そんな奴らより、この亜人達の方が何倍、何十倍いや、何百倍もいい奴らだろう。
「取り敢えず今日はもう遅い。マイカードの登録手続きだけ終わらせて詳しい事は明日だな」
「はい、本日のご予定は何でしょうか…ってライゴさんじゃないですか!」
このリザードマン、ライゴって名前だったか。あ、いや、決して忘れてた訳じゃ無いぞ。確認だ、確認。
にしても、中々顔が広そうだな。俺の街、と言っていたが、あながち間違いじゃないのかもしれない。
「おう、今日はちょっと野暮用でな」
「というのは…まぁどう考えても後ろの方についてですよね〜 。いやあ全くお優しいですよねホント」
「誰かの助けを必要としてんなら、誰かが助けてやらないといけないってだけだ。それが偶々俺に回って来てるだけだ」
「ホント格好いいですよねぇ、その生き様。はぁ……これで鈍感属性も無くなればいいのに、いつか後ろから刺されますよ……」
「ん?何て言ったんだ?もう1度言ってくれ、聞こえなかった」
「はいはい、何でも無いですよ、っと」
こいつ、男女関係無しにこんな事を何回もやってんのかよ。そりゃあ、惚れる奴がいるに決まってんだろ。本当に後ろから刺されるかもな。
「はいじゃあ其処の変わった服を着てる方から始めますよー。まずお名前と種族を教えて下さいな」
「あ、ああ、俺は天野直継、人間だ」
この人、中々ハイテンションなのか適当なのか、勢いが凄い。ちょっと相手にし辛いな。
「はいはいアマノ=ナオツグ、っと。変わった名前ねー。で、種族は人間っと。随分と珍しい…わね……って」
珍しいって事は何人かはいるのかも知れないな。って事は、其処まで怯える必要が無かったのか?
「ニンゲンだってぇぇぇええーーーー!!!!」




