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神様! お願いしますニヤ!!  作者: 風速健二
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7.猫娘推理する

 バイトが終わり寮への帰り道、翠は美弥に問いかけた。

「ねえ美弥、猫娘になってる時は猫みたいに鼻が利いたりするの?」

「そうだニャン。猫は犬と同じくらい鼻が利くニャ」

「あなた、もう猫娘じゃ無いんだから言葉直したら」

「忘れていたニャ。こっちの方が実は楽だニャン」

「また!」

「判った! 判ったわ。直すから……で、匂いって何の事?」

「出萌さんよ。彼の匂いを嗅いでみたでしょう? 何か感じなかった?」

 翠に言われて美弥は先程の事を思い出していた。確かホッとケーキのお皿を下げる時に体を接するほど傍に近づいたのだった。

「そう言えば……普通は男の人の体臭を感じるんだけど。何も感じなかった気がする……」

「やっぱり? 私も出萌さんが発する気が人間のとは違っているから不思議だったのよね?」

「名前が似てるけど、私の探してる出雲の神様だったりしてね」

 冗談半分と言うより全くの想像で言ったのだが、翠は『まさか?』と思い、そして『ありえる』と考えた。

「それ、あるかもよ! 出雲の神様が人の姿に化けて東京で遊んでいるのかも? だって前は縁結びをやっていたって言っていたじゃない!」

 翠の大胆な推理を聞いて美弥は

「まさかと思うけど、あるかも知れない!」

「そうでしょ! 今度来たらもっと色々と尋ねてみる事にするわ」

「うん! それがいいニャ!」

「ほらまた!」

「えへへ]

 こうして二人は出萌が美弥の探してる出雲の神様ではないかと思ったのだった。

 寮に帰ると早速先輩でバイトを紹介した里見由梨香が食堂で遅い夕食を食べようとしている二人に近づいて来て

「おかえり! どう、何か面白い事でもあった?」

「え、先輩どうしてそれが判ったんですか?」

 美弥は不思議だった。翠と色々話していた事をどこかで聞いていたのだろうか?

「だって、あなた達の顔に書いてあるじゃない! 丸分かりよ」

「ねえ美弥、先輩、もしかしたら出萌さんの事を知ってるかも知れないわよ」

「そうか! 知ってるかも知れない! ねえ、先輩、お店の常連で出萌さんて知っていますか?」

 美弥の問い掛けに由梨香はあっさりと

「知ってるわよ。だってウチの『ドッグカフェ』の常連さんだもの」

 それを聞いて二人は、「そう言う事なのか」と妙に納得したのだった。そこで、翠の疑問を直接ぶつけてみる事にした。

「先輩、出萌さんてもしかしたら、人間では無いとか?」

「はあ? 人間じゃ無かったら何なの?」

「さっきも美弥と言っていたのですが、名前からして出雲の神様が擬人化してる可能性もあるかなと……」

「それは無いわ! だってあの人、千葉の大金持ちの息子だから」

 由梨香の言葉に翠と美弥は目を丸くしてしまった。何故ならほぼ間違い無く、その通りだと思い込んでいたのだった。

「人間だったのですか……」

 がっかりする翠に由梨香は

「まあ、人間じゃ無いけどね」

 意味深な言葉を残して由梨香が帰ろうとするので美弥が

「先輩、それってどんな意味ですか?」

 食い下がって尋ねると

「まあ、私とか、あなた達の仲間よ。そう言う事……じゃ、お休み!」

 それだけを言うと由梨香は自室に帰ってしまった。残された二人は夕食を食べながら

「先輩、絶対何か知ってる! 知っていて私達に隠してる感じがする。あるいは出萌さんに頼まれたのかも」

「何を頼まれたの?」

「自分の正体を秘密にすることよ。由梨香先輩は当然私達より出萌さんと付き合いが長いから、それだけ詳しく知ってるのよ。だから出雲の神様が正体を隠して東京に居る秘密も知って協力してると思うのよ」

 美弥は、そこまで推理する翠に感心してしまった。

「凄いニャン!」

「ほら!」

「あ、興奮すると出てしまうニャ……あ」

「まあ良いわ、この続きは部屋に帰ってから相談しましょ」

 相談と言うより殆んど翠の考えを聞くだけなのだと美弥は思った。でも出雲の神様が何か秘密の用があって東京に出て来たのなら、それも知りたいと思う美弥だった。


 それぞれの部屋に帰り、一緒にお風呂に行く約束をしたので、支度をしているとドアがノックされた。開けてみると翠がパジャマ姿でバスタオルとシャンプー等のお風呂のセットを持って立っていた。

「ねえ、お風呂上がったら、由梨香先輩の部屋を訪ねてみない? 部屋の中なら真相を教えてくれるかも知れないわよ」

 翠の考えに美弥も賛成だった。猫娘の感では由梨香は何か隠してる感じがしたからだ。

「賛成ニャン……あ」

「まあ……いいわ、二人だけの時は。さあ行きましょう。汗を流してさっぱりしたいわ」

 二人は連れ立って一階の奥の大浴場に行った。

 大浴場はかなり大きな浴槽があり、しかもジャグジーの機能もあり、高校生の寮としては贅沢に作られていた。

 ざっと体を流して二人は広い浴槽で手足を伸ばす。疲れがとれて行くのが判る。そこに入って来たのが、三年の但馬麗華だった。

「あら、鍋島さんに雨月さん。どう、学校やバイトには慣れた?」

 麗華は大柄なだけあって同性からみても素晴らしい体躯をしていた。美弥はどちらかと言うとスリムな方で翠は中肉中背と言う感じだったからだ。それに一年生の二人から見ると三年生はやはり大人ぽく見えるのだった。

「ありがとうございます。大分慣れて来ました。里見先輩に紹介されたバイトも楽しい職場で良かったです」

 美弥がそう答えると麗華は二人の傍に寄って来て小声で

「里見さん。いい娘なんだけど、バイトを紹介するのは自分の仲間を作る為だからね。それは注意した方が良いわよ」

「自分の仲間って……」

 翠が思わずつぶやくと麗華は

「あの娘は目的があるのよ。その為にバイトしてるのよ」

 ハッキリ言い切った麗華の言葉に二人は興味を示すのだった。

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