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神様! お願いしますニヤ!!  作者: 風速健二
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6.猫娘怪しむ

 バイトそのものは美弥にとっては楽な事だった。猫娘本来の気持ちになれば、自ずとそうなってしまうのだった。特に言葉に関して全くストレスフリーなのが良く、それだけでも気が楽になった。

 翠に関して言えば多少時間が掛かったが、慣れると巧みに言葉や仕草を猫娘らしく操った。それ以上に彼女が気になったのが出萌の事っだった。

 翠は半妖怪なので、人や物の怪や動物の気を感じる事が出来るし、それを操る事も出来るのだが、出萌から感じる気配が今まで感じた事の無い気配だったので、とても気になったのだ。

「ねえ、アイミ何か感じない?」

 アイミとはこの店での美弥のキャットネームだ。ちなみにルミナは翠の事なのだ。

「え? 何を? 特別に何も感じないニャ」

「休憩中はその言葉止めなさいよ」

「それは無理ニャ! 猫耳を出してる間はこの言葉に自然となってしまうニャ」

「そうか、じゃあいいけど、変て言うのは常連の出萌さんよ。何かおかしな感じがするのよねえ」

「別に出萌さんから変な匂いはしないニャ」

「匂いじゃ無いわよ。気が変なのよ。何か人間離れしてると言うか……アイミあんた、一番最初に『何処かで会った気がする』とか言って無かった?」

 翠にそう言われて最初に自己紹介した時の事を思い出していた。そうだった、かなり前に会った気がしたのだ。その後勘違いと思ってしまったのだが……

「ルミナちゃん。そう言えばそうだったニャ。忘れていたニヤン」

「もう、そんなに忘れぽかったっけ?」

 翠は、そう言いながら美弥の黒い艶やかな猫耳を引っ張った。

「痛いニャン! 私のは自前だから神経が通ってるニャ」

 慌てて耳を押さえながら目に一杯の涙を貯めて言った。その姿を見て翠は

『あら、思ったより美弥ちゃん可愛いじゃん! ちょくちょく遊んであげましょう』

 などと思っていた。

 そんな事は知らない美弥は

「大体、猫耳を出してる時は半分は猫になってるニヤ。だからそのつもりで接して欲しいニヤ」

「じゃあ、お客さんがマタタビなんか持って来たらどうなの? 猫耳メイド喫茶なんだから、持って来る人もいるかもよ」

「その時は、ありがたく受け取るニャ! 匂いを嗅ぐとトランス出来るニャ」

 翠は、どのようにトランスするのか、一度試してみたいと思った。

「さ、休憩は終わりニャン」

 翠に促されて、美弥も店内に戻って行った。


「いらっしゃませニャン!」

 美弥ことアイミが猫娘らしくお客を迎えると先ほどまで噂していた出萌だった。これは良い所に来てくれたと翠ことルミナは密かにほくそ笑んだ。もしかしたら出萌の正体が掴めるかも知れないと思ったのだ。

「出萌さん今日は何を頼みますかニャ?」

 アイミこと美弥が嬉しそうに応対をしている、傍から見ていると、まるでじゃれつく子猫だとルミナこと翠は思った。

「そうだね。今日はホットケーキを頼もうかな。メイプルシロップを沢山掛けて欲しいな。それと上等のバターもね」

「飲み物は何にしますかニャン」

「アイスレモンティーがいいな。ガムシロは要らないよ。メイプルシロップの甘さでいいからね」

「判りましたニャン」

 アイミこと美弥が注文を受けてカウンターに通すと翠ことルミナが

「どう? 変な感じはした?」

 そう尋ねると、アイミこと美弥は

「え? 何のことニャン?」

「何の事じゃ無くて、さっき休憩中に話した事よ?」

「ゴメン! 忘れていたニャン」

「どうして忘れるの!」

「だってネコ耳を出してる時は五分しか記憶を覚えている事が出来ないニャン」

「あなた、頭まで猫並みになってしまうのねえ……」

「でも、今度は大丈夫ニャ、探って見るニャ」

 そう言ってアイミこと美弥は焼き上がったホットケーキを出萌の所に持って行った。続けて出来たアイスレモンティーをルミナこと翠が運んで行く。彼女としては美弥のお目付けのつもりだった。

「はい、こちらがアイスレモンティーですニャン」

 ルミナこと翠が丁寧に出萌の前に置くと、隣に立っていたアイミこと美弥が小声でそっと

「やはり、かなり前に会った事があるニャン。それが何処でだかは判らないニャン」

 それを聞いて、ルミナこと翠は出萌に

「出萌さんは大学生ですかニャ?」

 そう尋ねて見た。これを口実に出身を聞き出そうと考えたのだ。

「僕は大学には行っていないよ。今は仕事も休んでるんだ。つまり無職もしくは休暇中と言う事かな」

「休暇中ですか、それは羨ましいニャン」

 アイミこと美弥がそう答えると、今度はルミナこと翠が

「でも、前は何のお仕事だったのですかニャ?」

 食い下がって聴き出すと出萌は

「そうだね~、色々あったけど、一番は人と人の縁を結ぶことかな」

 そう言って遠い目をした。

 その時、先輩のロロが二人を呼びに来た。

「ほら、アイミちゃんにルミナちゃん。あちらでお客様がご指名よ」

「あ、はい、判りましたニャン」

 思わぬ邪魔が入ったと見て見るとこれも常連の客が二人の方を見ながら嬉しそうにしていた。客商売だからこれも無碍に出来ない。

「あら、いらっしゃいませニャン!」

 ルミナこと翠は特別の笑顔で接するのだった。

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