戦場5
敵を倒しながら、少しずつ後退していく。
何時間そうしていただろうか。
パーティは皆、疲労が顔に出ている。
限界が近かった。
ようやく、街が見えてきた。
堅牢な城壁に囲まれ、中の様子は伺うことができない。
「頼もしいわね、壁」
「そうだな。昨日までは税金の無駄遣いだなんて思っていたもんだが」
順次味方がその中に入り込む。
魔物は最後尾の私達が食い止める。
そうして、門が見えても焦らず、少しずつ撤退を完了していった。
ついに最後のパーティが門の中に入った。
私達だ。
「門を閉めて!」
「閉門! 閉門!」
「魔物たちを中に入れるな!」
巨大な門が、軋む音を響かせながら閉まっていく。
だが、わずかに間に合わなかった。
3メートルはあろうかという巨人が一匹、門の中に入り込んだ。
そして、同時に門が完全に閉まった。
「まずいぜ。ヒルギガースだ」
「なにがまずいの?」
「単純に強い。あいつに内側から暴れられたら、門が壊されかねない。魔法使いたちを使おうにも、ああも門が近くては門ごと破壊しちまう」
「私が行くわ」
「言うと思ったぜ」
魔物の足元に駆け出す。
実際に相対すると、ひどく巨大に見える。
剣を届かせるには間合いが遠すぎる。だが、これ以上近づけば、巨人に攻撃されひとたまりもないだろう。
さて、どうするか。
巨人が足元の私に気付いた。
覚悟を決める。
一歩、あえて敵の間合いへ踏み込んだ。
予想通り、巨人はその巨大な腕を振るい私を殺そうとしてくる。
だが、死んでやる訳にはいかない。
剣を相手の腕に刺さるように突き出しながら、後ろに全力で飛んだ。
剣と拳がぶつかり合う。
私の手にはたいした衝撃はなく、巨人の拳が切り裂かれた。
これは賭けだった。
この魔剣はどれだけ強いのか。それを信じた。
普通の剣なら、たとえ巨人の拳を切り裂いたとしても、剣は殴られた衝撃で私の手元から飛んでいったことだろう。
だが、そうなることはなく、魔剣はやすやすと巨人の皮膚を、骨を切り裂いていた。
自分の腕を抱える巨人。
その隙を逃さない。
「魔物でも痛みは感じるのかしらね」
おもいっきり近づいて剣を横薙ぎに一閃。
それだけで、巨人の胴体は上と下に別れた。
私はまだ生きている。
私の勝ちだ。