戦場2
初めは敵も、雑魚たちから前に出てきていた。
子鬼や、豚のようなヒト型たちの群れ。
奴らは集団で当たればたいした敵ではなかった。
少しずつ、巨人や牛人、狼人間、動く鎧などが混ざりだした。
体力、膂力、防御力、それぞれ子鬼などとは比べ物にならない魔物たちにより、戦況は少しずつ悪化していった。
フルフェイスがつぶやいた。
「頃合いか」
私達は大きな被害こそ出ていないが、体力が大きく削がれ、これ以上の戦いは続けられそうになかった。
私は魔剣の力によって元気そのものだったが。
「どうするの?」
「撤退準備をする。剣士、僧侶、魔法使いをそれぞれ1人の3人パーティをいくつも編成し、余力のあるものが余力のないものの援護をしながら街まで戻り、門を閉める。そこからは籠城戦だ」
「撤退はうまくいく?」
「私が殿を務める」
「私も残るわ」
「助かる」
方針を決めると、フルフェイスの騎士は矢継ぎ早に指示を出し、統制を取り部隊を再編成した。
後退しながら、最前列で指示を出す。
大きな鬼のような魔物がそこを狙って突進してくる。
私は魔剣を突き出し、敵の足を刈った。
ぐらりと倒れる鬼。
「大丈夫!?」
「ああ、大丈夫だ」
言って、視線を魔物から外したのは一瞬だったはずだ。
だが、失敗だった。
目の前には魔物の巨大な棍棒が迫っていた。
近づきすぎていたのだ。
ドンッ
想像していたよりずっと軽い衝撃。
目の前の出来事が、スローモーションで再生される。
フルフェイスの騎士が、魔物の一撃を受けていた。
そこにいたのは私のはずだったのに。
騎士の兜が、赤い糸を引きながら飛んだ。
騎士の胴体の方には、首が乗っていなかった。
状況を把握する。
私は彼に庇われ――彼は、私のかわりに命を落とした。
尻もちを付いている私に、魔物が向かってくる。
立ち上がらないと……だけど、身体がガチガチ震えて動けない。
どうしよう……どうすればいい?
助けて、お母さん!
助けて、お父さん!
助けて――助けて――
――助かりたければ、自分で助かるしかないのだ。