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俺Tueeee物語  作者: おおきなダディ
3/13

戦場


 戦闘が始まった。

 フルフェイスの騎士が剣を指示を飛ばし、剣士が突出してきた魔物を狩る。

 魔物を倒したら、後続の足止めを弓と魔法が行い、その隙に剣士がまた陣営に戻ってくる。


 そんな戦場で私はというと、なにもできないでいた。


 フルフェイスが私に気づき、声をかけてくる。


「怖いか」

「……はい」

「そうだろうな。様子を見ればわかる。戦場は初めてだろう?」

「そうです。あの、貴方は怖くないんですか?」

「怖がってるのを隠してるだけだ」


 そう言うと、彼は指揮に戻った。


 彼が私に話しかけてくれたのは、私を気遣ってのことだけではないように感じた。

 彼もまた、怖いのだと。


 私も怖がっているだけではダメなのだ。

 恐怖は誰もが感じている。それでも身体を動かすことが、今ここでは必要なのだ。


 次の剣士のアタックには、私も参加することにした。



 魔物が武器を振るう。

 見てからではとてもじゃないが反応できるものじゃない。

 敵の間合いに入らないこと。

 自分の間合いに入ったら、一撃だけ試してから後退すること。

 まず死なないよう、攻撃を受けないように動くことが大事だ。


 レベル1の勇者にできることなど、多くはないのだ。



 剣が子鬼に突き刺さり、そのまま両断した。

 魔剣のおかげで、私の細腕でも十分な威力があるようだ。

 まず一匹、魔物を殺した。

 私の手で。


 鼻をつく血の匂い。

 剣が赤く光り、血を吸収した。

 何匹も切ると血で滑ったりして刃がダメになりそうなものだが、この剣に関しては心配はないらしい。


 続けて、別の子鬼の腕を切り飛ばした。

 まだ子鬼の命があるが、深追いせずに退く。

 とどめは仲間の剣士が刺してくれた。


 剣なんてものは数回も振り回せば疲れてきそうなもので、実際最初の何度かは疲れた。

 だが、それも敵に当たるようになってからはなくなった。

 魔剣のドレイン効果だろう。

 どうやら、剣が血を吸うと持ち主の私は元気になるようだ。


 何度目かのアタックのあと、陣営に戻って休憩していた。

 毛むくじゃらに髭を生やした剣士が話しかけてきた。


「すげえな、ねえちゃん。まるで疲れが見えてねえ」

「剣のおかげよ」

「魔法剣かい?」

「ええ、そう。斬りつけると回復するの」


 そう、剣のおかげだ。

 斬っても斬っても、刃も使い手も消耗しない。

 もしかしてこれをうまく使えば、万の軍勢を相手にしても負けることはないのではないか――


「頼りにしてるぜ。俺はバズっていうんだ。ねえちゃんの名前は?」

「伊藤キサラギ」


 壮年の男性からねえちゃんってよばれるのは、なんか変な感じね。


「イトー・キサラギか。その名前、覚えておくぜ。俺は傭兵団やってるからよ、今度スカウトさせてもらうかもな」

「この戦闘次第ね。お互いに」

「ああ、死なねえように頑張ろうぜ。お互いによ」



 フルフェイスの騎士が私を見つけ、また話しかけてきた。


「怖くはなくなったか?」


 どうなんだろうか。

 気分が高揚しているのを感じる。

 今の私は、最初に感じていた恐怖が思い出せなくなっていた。


「怖くなくなったわ」

「そうか。そのまま死ぬなよ」

「どういう意味?」

「戦場では恐怖を忘れたものから死ぬ」


 その言葉の冷たさは、まるで冷水を浴びせられたかのようだった。



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