表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/3

父親side 2

「……プラネタリウム?」


「うん。今は冬だからさ、星は綺麗だ。けど寒いし、父さんとは時間が合わない」


「……」


「なら、昼間に見ればいい。そうすりゃ持ち帰ってきた仕事をする時間とも被らない。お金は掛かるけど、それくらいなら小遣いで足りるし」


透は、本当に俺の事を良く見てる。

たまの休みには、仕事を持ち込まない様にしてる事も、実際の天体観測を一緒にするには時間が合わない事も。


「二名様で、二千円になります」


受付嬢の言葉に、ハッとすれば。


ちょうど透が財布から二千円を取り出し、支払うところだった。


「それでは左手階段を上って頂き、中央の部屋へお入り下さい。あと10分で始まりますよ」


「ありがとうございます」


軽く頭を下げ、行こう、と俺に顔を向ける。なんてこった、まさか透に払ってもらうなんて。


結局、俺は車の運転しかやってない。


席に並んで座り、プラネタリウムが上映し。


作り物とは言え、満天の星空に癒やされる。仕事とノルマ漬けの疲労感で溢れかえった心が、穏やかさを取り戻して行くんだ。



***************



「プラネタリウムなんていつ振りだろうな」


「さあ。母さんが居た頃だから、三、四年前くらいだと思うけど」


初めて、透から母親の事を言われて……思わず息が詰まる。でも透は、特に気にしてないようで。


「……何とも思わないのか。俺の所為で、母さんが居なくなったこと」


「思って欲しい?恋しがって欲しいの?父さんは。戻りはしない人の事をさ。僕は再婚するなとは言わないよ。父さんがしたいならすれば良い」


我関せず、みたいに助手席で淡々と告げる。


「あの人は、いつも愚痴ばっかだったからね。家に居たからって、僕に構ってくれる事は余り無かった。そんな人が居なくなったからって、別に大差無いし。

僕は今の方が良い」


会話も増えたしクロも居るし、と口角を上げる。


「……何処か、食いに行くか?」


気付いたら、そう聞いていた。いつも俺を見てくれるお前に、何か少しでも返してやりたくて。


「いや、良いよ。お金掛かるし、下準備までは済ませてあるんだ。帰って十五分もあれば用意出来るから」


まるで主婦みたいな台詞。


俺は家事、特に炊事はからきし出来ないから、卒なくこなす透が凄く誇らしい。


「俺も、手伝うよ」


え、と俺へ視線を投げる透の眼が、僅かに見開いて。


「食材、ダメにしそうで怖いんだけど。奮発して買った肉なんだから」


失礼な!俺にだって少しくらい調理は出来るぞっ。


「お前なぁ……」


俺はどんだけ、信用が無いんだ?でも、こんな会話にも心が弾む自分が居る。


きっと今日のプラネタリウムも、俺のリフレッシュの為に言ってくれたんだろう。勿論、自分が行きたいのもあったんだろうけどさ。



ありがとう、と胸中で呟いて。透との時間を、もっと持ちたいと自欲が膨れるのを感じて。


心に決めたんだ。残業をもう少し減らして、お前と過ごす時間を増やそうって。


その分給料は減るかもしれないけど、きっと代え難い充足感が得られるはずだから。




fin.

この後、彼は透の料理の手際の良さに感服させられます。



結局手伝える事はなく、炊事は息子に任せる事に。


家事全般を任せ切っていたツケですね。頑張れ父さん。


もう父親の威厳も何も無いけど。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ