父親side
“解決済み”
その答えに、落胆が隠し切れなかった。
漸く、俺にも父親らしい事が出来ると思ってたのに。
しかも、俺の手を煩わせるまでも無い、なんて言われてしまった。……煩わせるって何だよ?
俺はな、透。必死なんだよ。
どうやったらお前とコミュニケーションが取れるか、どうやったら少しでも長く、多くお前と接して居られるか。
そればっか考えてるんだ。
「何?そんなに数学が好きなわけ?父さんって文系だろ」
半ば呆れたかの様な表情。だから、そういう意味じゃないんだよ。
美味い、二杯目のハヤシライスを今度はヤケになって食らいにはいる。
「……別に良いんだ、勉強なんて見てもらわなくても。父さんなりに、頑張ってるんだろ?無理して仕事切り上げてさ。
結局、書斎に朝まで篭ってるじゃないか」
「!」
知って、いたのか。
いつもお前が寝た後で、書斎に入る様にしていたのに。
……そう言えば、喉が渇いたと思った時。いつも書斎のドアの横に、コーヒーの入った水筒が置いてあった。
俺はそんなの淹れた覚えが無いから、透が置いてくれたことになる。流石にクロには作れないし。
「そういう無理ばっかしてさ、その上僕の勉強まで見てたら、身が持たないと思うけど。だから良いよ、僕には構わなくても」
「そういうわけにはいくかよ。俺の気が済まないんだ、ずっと構ってやれなかったのに」
「それで父さんが倒れたら元も子もないだろ」
義務じゃ無いんだしさ、とスパンと言い切られてしまった言葉に、ぐうの音も出ない。
まるで俺の方が子供みたいだ。なあ透。なんでお前、そんなにあっさりしてるんだよ。
少しぐらい、我儘言ったって良いんだぞ?勉強も見てやれないし、家事全般、お前に任せっきりでさ。
愚痴も言わない、学校の事も相変わらず言ってこない。
お前の父親なんだ、って少しは実感させてくれよ。
「……あのさ。次の休みっていつ?」
不意にそう聞かれて。慌てて手帳を捲ると、丁度一週間後に一日休みが入っていた。
「その日、行きたい所があるんだ。父さんさえ良ければ」
俺さえ良ければ、だって?!
良いに決まってるじゃないか!お前が行きたいと言うなら、何処へでも連れて行くよ。
勿論、と答えれば、その日初めて、嬉しそうに笑ったんだ。
嬉しかった。やっと、お前の我儘を聞いてやれるって事に。と言うか、我儘にもならないけどな。
そうして久々の休みに、透に付き合い出掛けた先は、プラネタリウム。