表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/24

その7

 うーん、これからどうすればいいんだろぉ?

by美流九


作者より

 今回より書き方がを変更し、行詰めを行なっていきたいと思います。読みづらい、またはこうしたほうが見やすいという意見があれば、どんどんお寄せ下さい。

 また、今回は勉強の合間を縫って執筆したので普段より短めですが、そこはまあ、目を瞑って下さい。


      ✚


科学ゾーン:ステーション265:タワー:高度二百メートル付近――


「全く、どうしてこうなったんだよ……」

 俺は溜息を吐きながら眼下の街並みを見つめた。遥か下では俺達を探す人々が起こす喧騒で、嘸かし賑やかなことだろう。

「半分くらいちぃーちゃんの所為だと、私は思うんだけどねぇ」

 美流九の責めるような物言いに、思わずむっとする。

「おいおい、これが俺の所為だって言うのは筋違いだろ? 俺はむしろ巻き込まれた被害者側だぞ?」

 俺の弁解に、南嶺が俺よりもむっとした顔で睨みつけてきた。

「そもそも、ちぃーちゃんがあんな変な能力を選ばなきゃよかったのよ」

「…………」

 全くその通りなので、思わず黙りこんでしまった。

 しかし――

「それはそれとしても、やっぱり不自然じゃねえか?」

「なにがぁ?」

「ムジカが人質を取ろうとした事だよ」

 うん、どう考えても不自然な事だらけだ。

 第一に、俺は相手の要求を呑んだのに、人質を全く解放しようとしなかった事。第二に、これはただのゲームだ。いくらアカウントが削除されそうだから、生き残るために仕方なく――と言ったって、別に人質を取るほど切迫してもいなさそうだし、別に俺を引き入れなくたって色々方法はあるだろう。あそこまで無理強いして俺を引き入れようとするのは、あまりにも不自然だ。

 第三に、何故かアイツは俺の名前を知っていた事だ。――が、これはある程度納得できる。俺のニックネームは「タタラ」になっているし、あの二人が俺の事を「ちぃーちゃん」と呼んでいる事は周知の事実で、このゲームの中でも二人はそう呼んでいたので、俺とあの二人とある程度既知の間柄の人物なら、俺を特定できてもおかしくない。

 という事は、やはり近辺の人間か、学校の同級生辺りが怪しいのだが――う~ん、あそこまで恨まれるほど中の悪い女子はいない筈なんだけどな――

「ちぃーちゃん、一人で考え込まない」

 ガツン!!

「いだっ! 南嶺、いきなり頭を殴るのはどうかと――」

「……幼馴染でしょう、一人で抱え込まないで」

 南嶺の言い分に、俺は思わず笑みを浮かべてしまった。

「ああ、そうだな……。しかし、ムジカの事はよく考えたら何も情報がないから、分かりようもないし、第一、俺達が今考えるべきはこんなことじゃないな」

 今、考えるべきは、

「これからどうするか、でしょう?」

 さすがは南嶺だ。俺の言いたい事が伝わっている。

「言いたい事はわかるんだけどさぁ――」

 しかし、すかさず美流九が横槍、というか懸念を示す。

「南嶺ちゃんもちぃーちゃんも分かってると思うけど、もうここには間違っても居られないよ?」

「分かってるさ。拠点を移さなきゃいけないことぐらい」

 幾らなんでもここを拠点にするのはまずい――それぐらい、俺だって理解していた。仲間に引き入れようとするために人質など使おうとする所に、信頼なんて置けない。

「でも、どうやって別のステーションに移るんだ?」

「また説明を聞いてなかったようねちぃーちゃん。その耳は何のためにあるの?補聴器でも付けましょうか、馬鹿でかくて、何か言った途端に鼓膜が破れそうなやつ」

 キュ、クルクル、タァン!!

「すみませんごめんなさい。ボクガワルカッタデス」

 南嶺は俺の謝罪に何の反応も示さなかった。

 酷い! 折角二回転を空中で行い、そのまま着地の勢いで土下座までしたのに!!

「――ステーションを移るには、まずあそこに行く必要があるわ」

 ビシ、と南嶺が指さした先には、今いるタワーにも勝るとも劣らない高い建造物があり、一見してみると、まるで煙突のようにも思える円柱状の建物だった。ただし、その胴回りは煙突ほど細くは無かったが。

「あれは、転移用のアンテナみたいなものよ」

「アンテナ?」

「そう、アンテナ。電波みたいに、人を他のアンテナに送り出すから。あそこの一階では転移用のポッドがあって、そこに乗り込んで行きたいステーションの番号を入力すると、そのステーションに移動できるの。転移の際に多少Sを使っちゃうけど、さっきの戦いで荒稼ぎできたから、そこで困ることは無いでしょう」

「ようはあそこに行けばいいんだな?」

 俺は南嶺が指さした方向をじっと見つめ、南嶺に再確認を取った。南嶺も頷いて、そちらを見据える。

「そうか、あそこか。思い立ったが吉日と言うし、早速――」

 行こうか、と言おうとした俺の腕を、美流九が掴んできた。

「そう簡単には、上手くは行かないと思うよぉ」

 いつものぶりっ子口調なのに、その声色はいつになく真剣だった。

「私だったらぁ、あそこに行くって事前に予想してぇ、見張りを置くと思う」

 確かに、美流九の言う通りだ。ただでさえ俺を引き入れるために人質をとってきたのだ。それぐらいやってきてもおかしくはない。

「だとしても、行く以外に方法は無いと思うわよ」

 南嶺はそれでも行くつもりのようだ。

「それ以外に方法があると思えないし、いざというときは、私達にはちぃーちゃんがいるのよ」

 南嶺は俺の肩にポンと手を置いて、俺に向かって微笑んだ。

「そうだね」

 美流九も笑みを浮かべて、俺の肩をぎゅっと抱く。

 うわ、ちょい何してんの? と俺がドギマギしていると、もう片方の腕に同じように南嶺が抱きついてきた。

「お、おいお前ら」

「ちぃーちゃん、すっごく顔赤くなってるよぉ」

「さすがね、ここまで感情表現が豊かだなんて」

 ――なんていちゃついていたら、

 ピキューン、と目の前の鉄骨に鉛玉がめり込んでいた。

 まるで、「こんな所でいちゃつきやがって、この男子の裏切り者がぁぁぁあああああ!!」という狙撃手スナイパーの怒りがこもっているように思えて、

「や、やべえ。南嶺、美流九、しっかり掴まれ!!」

 慌てて俺達は離陸体制に入る。

「行くぞ!!」

 焦るように思いっきり三人で身を空に投げ出した――

 さあ、次は街中を失踪するわよ。背後から追手に追われるスリリング感。まさにリアル逃走中ね。(これはゲームです)

by南嶺

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング  ←面白いと思ったら、是非ワンクリックを。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ