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その16

 スルトをすっかと爽快に吹っ飛ばす!! きぃもちぃぃ~

by美流九

      ✚


神話ゾーン:北欧神話領域:火の国――


「ま、マジっすか……」

 唖然とした表情のスルトの前方には、悠然とした態度で炎に包まれたタタラが立っている。

 ……内心で冷や汗を掻いていたは内緒だ。

「……どうした? かかってこねえのかよ?」

 少し上から目線の声にスルトは、

「じゃあ、仲間呼んでくるんで」

 回れ右して猛烈な勢いで脱走した。

「なぁぁああああああああああああッッ!? 恥も外聞もなく逃げやがったアイツぅぅううううッッ!!」

 驚愕で開いた口が塞がらないタタラだったが、しかしここで気付く。

「あ……でも、もしかしたら巨人どもを大量に引き連れてくるんじゃねえか? だとしたら、こっちの思惑通りに事が運んでるってことじゃねえか」

 ここに一体何人の巨人がいるか知らないが、さっきのスルトの動きぶりを見ていると、やはり巨人らしく素早い動きは出来ないようだった。一撃の攻撃力が大きいのは目に見えているが、攻撃前のモーションが分かりやすいし、遅すぎる。攻撃自体は当たらなければ問題皆無だった。

 こっちの攻撃は、さっきの怪力と組み合わせれば多少ガードが硬い奴だってガードごと吹き飛ばすことだって出来るだろう。

 つまりは問題無しだった。

「巨人だかなんだか知らねえが、それがどうした!! 巨人なんてナンボのもんじゃ~いッッ!!」

 訳の分からない似非関西弁(筆者は中部地方出身なので、そもそもこれが関西弁かどうかすら知りません)をシャウトして、タタラは少しスカッとした気分になった。

 その後の、スルトが来た時の十倍以上の揺れに恐れをなし始めたのは言うまでもない。

「おわっ、おわわわっ、うっわあああああああああ」

 情けない声を出しつつ、立っていられずに地面に伏せるタタラ。

「ああああああああああ、あ!?」

 揺れが唐突に止み、タタラは不思議がって顔を地面から上げた。

 直後に顔をすぐに伏せたくなったのは言うまでも無い。

「おめえか、ウチのスルトを虐めた奴は」

 まるで頭領のような髭面した巨人が、後ろに二百近くの筋肉の山(即ち巨人)を控えさせ、脇には腕にしがみついて「こわいよぅ、あいつめっちゃ強いんっすよう」と泣いているスルトを置いて、タタラを覗きこむように見てきていた。

「スルトてめえ、そんなキャラじゃなかっただろ!?」

 スルトの腑抜けた様子に思わずツッコミを入れずにいられないタタラだったが、

「ああん!!!! てめえ調子のってんじゃねえぞこらぁああっ!!!!!!」

「ぁ……すんません……」

 頭領の怒声に完敗した。

「スルト!! ここは良いから、造船場の見張りに行ってこい!!!!」

「は……はいっす!!!!」

 頭領はしがみついてくるスルトを腕から引き剥がして、新たに命を下して蹴りだした。蹴りに押された勢いでスルトはそのまま逃げるように向こうへと走っていった。

 最後に一度振り返って、あっかんべーをしてきたが。

「あんにゃろ、演技で逃げ出したな……」

 沸々と怒りが込み上げてくるタタラだったが、その怒りの矛先は、まず目の前の巨人軍団に向けることにした。

「……おい、このうすのろ共!! 何突っ立っていやがる!! その足地面に引っ付いてんのか!! それとも重すぎて沈んで嵌っちまってんのか!!」

 挑発のつもりでタタラは怒鳴ったが、返ってきたのは馬鹿にしたような嘲笑だった。

「ぷっははは!!!! おもしれぇ、俺達に喧嘩売ってっぞこのチビッ子!!!!」

「あひゃひゃひゃひゃっ!!!! こいつは傑作だ。ビデオに撮ろうぜ!!!! タイトルは「子供の反抗期」ってな!!!! あははははははッッ」

 流石はAIだ。どこがツボか良く分からない洒落っぽい事を言っている。かなり人間らしいものの、完全ではないらしい。とはいえ、流石にこう嘲笑に晒され続けるのも我慢ならないので、

「うるせえなあぁぁああああああッッッ!!!!」

 怪力を込めて拳を地面に叩きつけた。

 すると、地面にピシっと細かくヒビが入り、次の瞬間ヒビが割れて爆発したように破片となってあたり一面に吹き飛んだ。

 大きく吹き飛ばされた破片は四方八方に散らばり、周りを囲んでいた巨人たちにもろ直撃した。大抵は吹っ飛び、運の悪いものは鋭い破片によって体を貫かれて、光となって爆散デリートする。

「っぉ…………」

 持参していた大きな盾を咄嗟に掲げたお陰で、破片の被害に遭わずに済んだ頭領のような巨人が、その惨状に思わず狼狽える。

 それをしばらく見回した後、巨人は怒気の篭った視線で、中心に立つ小さい人間を見た。

 その小さい人間のような「化物」は、同じように巨人を射抜くように睨みつけている。

「ってめえっ!!!! 覚悟はできてるんだろぉぉなぁぁっっ!!!!」

「んなもん言われなくたって出来てらぁぁあああああッッッ!!!!」

 怒鳴り返したついでに、タタラはいつの間にか消えていた蒼い羽根を再具現化。そして巨大な剣を作り出す。

 巨人たちも自前の棍棒を構えて重心を低く落とし、突撃しようとしている。

「さあ、巨人狩ジャイアント・キリングりを始めようかッ!!!!」

 タタラが直上に飛び出したと同時、巨人たちは爆発したように駆け出した。


      ✚


 スルトは標高100メートルの山をスキップをして四、五歩で登り、後ろを振り返りながら独り言を呟いた。

「おっそろしいほど計画通りっすねえ。まさか「二人」もレグルスを呼び込むことになるとは予想外っすけど、全ては陽動なんだから、問題ないっすしね」

 遠く見るように、スルトは顔を上げる。

「ロキさんは上手くやってるっすかねえ。――まあ、俺には特に関係ないっすけど」

 そして、見てる方向とは反対側を向いて、見下ろした先にいる小さな巨人たちの群れに怒鳴った。

「さあ、反抗の時間っすよ!!!! えいえいおー!!!!」

「えいえいおー!!!!」

 子どもたちが騒ぐ様子を見て、スルトは思わず呻いた。

「でも、子守は面倒っす……」


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「どうして……ッッ!!!!」

 閑散とした港を見て、南嶺は歯噛みせずにはいられなかった。

「どうして船がないのッ!?」

 そう、南嶺達がタタラの起こした騒ぎに便乗して、輸送機で降りてみると船があったと思われていた場所には、船を囲む足場の骨組みしか残されていなかった。骨組みは雨風に晒されないために半透明な布に包まれており、そのお陰で遠目からは木材が加工中だった為に造船中と勘違いしてしまったのだ。しかし、足場の骨組み以外残されていないという事は……

「造っていないかぁ、もしくはもう出発したかの二つだねぇ」

 後部の座席に座る美流九が、つまらなさそうに呟いた。

「取り敢えずちぃーちゃんを呼び戻しに行くわよ。このままここにいる意味なんかないわ」

 南嶺は操縦桿を握って機体を旋回させる。

「そーだねぇ。そうしたいけど、そうも行かなさそうだよぉ」

 美流九は後部座席の窓から外を覗き見ながら、すこし顔をにやけさせた。

「え?」

 そこで南嶺も気付いた。

「どうやら、本命のはずだったものが来たみたいだねぇ」

 そして、その巨人はやってくる。


      ✚


「随分壮大な作戦だったな」

 ロキは後ろのうごめく闇の軍勢をちらりと見ながら、舵を回した。

「全く、船の材料として誤魔化すのは随分大変だったんだ。その変の苦労は理解して欲しいよ」

 はぁ、とロキは大きく溜息を吐く。

「でも確かに「あの男」の言う通りだな。ムスペルの特攻作戦で行った所で、アスガルドの馬鹿どもには勝てはしない。だが、ムスペルの立場上闇の軍勢はムスペルには逆らえない。ならば、ムスペルを戦場に「参戦」させなければ良い……。こうでもしなきゃ、ムスペルにいくら口添えした所で、ラグナロクを勝ち抜くことはできないからな」

 だが……と、ロキは少しばかり思案顔になった。

「『あの男』は本当に狂気しか望んでいないのか? だとしたら、本当に恐ろしいのは俺でもなくフェンリルでもなく……あの『レグルス』だということになるな」


      ✚


「うらぁぁあああああああああああッッ」

 まるで弾幕ゲームのように棍棒を掻い潜りつつ、俺は剣でどの巨人のものとも分からぬ腕をぶった斬る。悲鳴が鼓膜がはちきれんばかりに上がったが、アドレナリンが分泌されている影響なのか少しも気にならない。

 叩きつけられた棍棒にジャンプして飛び移り、そのまま棍棒から腕へと一瞬で駆け上る。肩まで登った所で巨人の驚く顔が見えたが、それを剣を振るって掻きむしった。顔が消えたと同時に残った胴体も霧散して、俺は足場を失い間抜けなままに落ちる。

「せめて俺が飛ぶまで足場持てよぉぉおおおおおおおおッッ!!!!」

 文句を叫びながら、ここぞとばかりに振り下ろされる棍棒を剣で受ける。空中で受けたおかげで俺はそのままの勢いで地面に叩きつけられた。

「ゴホッ!!」

「今だ野郎ども!! やっちまえ!!!!」

「「「「「エイサー!!!!!」」」」

 巨人共は容赦なしにリンチのように、地面に叩きつけられた俺に棍棒を叩きつけてきた。いたっ、痛いよっ!!

「くそ、忌々しい!!」

 転がって棍棒を避けるが、絶え間なく来る棍棒は逃げる隙を与えてくれない。俺はそのうち避けることままならなくなって、俺はその内剣で受け止めることしかできなくなっていた。

「皆で一斉に行くぞ!!!!」

「「「「せーのっ!!!!!」」」」

「仲良しだなぁ、おいッ!!」

 一斉に叩きつけられた棍棒に、俺は怪力を開放して一気に跳ね上げ吹き飛ばした。巨人たちが苦痛の悲鳴を上げながら面白いように吹っ飛んでいく。

「てめえが司令塔だなッ!!」

 眼前に残った、呆然とした表情の頭領を睨みつける。

「……よくもやってくれたなぁぁああああああああああああっっ!!!!!」

 目があった瞬間、頭領の瞳に怒気が篭り、頭領は二本の棍棒を手に駆け出しきた。

「ぉぉぉおおおおおおッ!!」

 まず横薙ぎに振られた一本をジャンプで躱し、そのまま飛翔して頭領の胸の辺りへ。

 しかし、そこで予想外の動きが入った。頭領は身軽な動きで軽快に回転し、二本の棍棒を振り回してきたのだ。俺はそれを咄嗟に後ろに飛んでかわそうとしたが、間に合わず掠ってしまう。

「ぁぁぁああああああッッ!!」

 かすれた勢いで真横に吹き飛ばされて、そのまま岩肌に飛び込む。

「ぐほっ!」

 呻き声を上げるが、すぐさま立ち上がって横っ飛び。頭領から投げ飛ばされてきた棍棒が、岩肌に突き刺さった。

「恐ろしい腕力だな」

 思わずヒヤヒヤしながらも、俺は雄叫びを上げて頭領の元へと飛び込む。

「ぅぉぉおおおおおおおおおッ!!」

 大振りに剣を振り回すと同時に、頭領が振り下ろしてきた棍棒がぶつかる。

「んなヤワなもんぶった斬ってやる!!」

 足で空中を力強く蹴り、さらに怪力をフルパワーで解放。バランスを崩した頭領は背中から地面に倒れる。

「このまま一気に!!」

 俺は剣を振り下ろす。だが、頭領も必死の形相で棍棒かざして剣を食い止めてくる。

「このっ、このっ、このっ、このっ、このっ、このっ、このっ、このぉっ!!」

 何度も何度も剣を叩きつけて、ようやく棍棒がへし折れた。

「これで、終わりだッ!!」

 勢いのまま剣を突き立てた。

 だが、

「頭領の死、無駄にせん!!」

「!! 上から!?」

 俺は顔を上げて空から来る巨大な影を見る。迎え撃とうと剣を頭領から抜こうとして、

「ん? 抜けっ、ないっ!!」

 よく見てみると、頭領が笑みを浮かべて剣を掴んでいた。もう死ぬと分かっている奴が出来る、決死の芸当だ。

「クソッ!!」

 契約のちからに必要なMPはとっくに使い果たしていた。武器も抜くことが出来ない。さらに四方八方から邪魔な筋肉共が飛んでくるせいで逃げ場が無いと来ている。

 ムジカの言った「デスゲーム」という言葉が、不気味にフラッシュバックした。

「ここで! ここで終わりなのかよ!!」

 無数の巨体が近付いてくるのを目の当たりにして、俺は思わず目をつぶった。

 ――ここでゲームオーバーか……

 そう、覚悟した時、


 轟音が、真後ろで鳴った。


 目を開き、振り返ると巨人たちがまるで見当違いのところに着地して棍棒を振るっているのが見える。

「クソっ、こいつなんで潰れないんだ!?」

 巨人はそうは言うものの、だが棍棒は何もない地面に叩きつけられるばかりだ。

「な、何が起きてるんだ……?」

 呆然と呟いた問に、返答があった。

「たった一人で巨人族に立ち向かうなんて、馬鹿が居たもんだね。まあ、そういうの嫌いじゃないけど」

 後ろからの声に振り返ると、悠然と少女が歩いていた。露出度が高い服装に、ツインテールで凛とした蒼い瞳の、気の強そうな印象の少女が歩いていた。

「は……?」

「何がなんだかさっぱりって顔してるね。簡単だよ。今巨人たちが見ているのは、君であって君じゃないものなんだ」

「もっと意味がわかんないんですけど……」

「ようは、光の屈折率を変えて、君が見える『位置』を騙したんだよ。全てはフェイクってね」

 眼前まで近付いて来た少女は、妖しい笑みを浮かべて手を差し出した。


「私はメイ。レグルスの「フェイカーし」よ。よろしくね」


 段々話が混迷してきたわね。一体この島で何が起きていたのかしら。……それにしてもまた女キャラが出てきたわね。ちぃーちゃんも本当にいい度胸よねえ(小悪魔的スマイル)

by南嶺


色々痛い作者よりメッセージ


 諸事情により、今回でCCOの連載更新を一時的に完全にストップさせます。面倒だからだろうって? 貴様はmeが受験生だということを知っているのかぁぁぁ!! 知りませんよね。すみません。

 そんなこんなで、次回更新は12月末です。月1ペースでは更新できる予定なので、楽しみにしてくださっている皆様はそれまで今しばらくお待ちください。


 普通は4月まで投稿しないだろうって? それでも小説が書きたいんですよぉぉぉおおおっ!!


追記:その時にあけましてオメデトウなお年玉プレゼントがあるかもしれません。現在予定なんで確定はできないので、そこのところはご了承下さい。

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