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その12

美:えー今回出番ないのぉー?

蹈:しかたないだろ。説明回はお前には似合わないと思ったんだろうよ作者が。

美:すっごい差別だねぇ、それ。

蹈:でも、今回はコメディ成分が少ないから前書きジャックして構わないんだと。

美:え!? じゃあ出番の多いちぃーちゃんはさようなら~

蹈:あ、おい!? ア~レ~

(蹈鞴千助さんはログアウトされました)

美:えへ☆ 強制ログアウトぉ!!

ケ:随分と楽しそうな事やってるね

美:あんた誰ぇ!?


後書きに続いちゃう。


      ✚


現実世界:〇〇高校:屋上――


「クロス・クロス・オンラインが、デスゲームだとしたら、どうしますか?」


 唐突に言われた一言に、俺は暫く言葉を失ってしまった。

「……悪い。幻聴が聞こえたみたいだ。もう一度言ってくれないか?」

「クロス・クロス・オンラインが、デスゲームだとしたら、どうしますか?」

「すまない、ちょっと疲れてるのか幻聴が聞こえるんだ。もういちべぶらぼへッ!!」

 み、みぞおちに拳がめり込んで痛い!!

「三回は言いません」

 とてつもなく見下した目線で、かずみさんは拳をゆっくりと引いた。

「……クロス・クロス・オンラインがデスゲームだとしたら? そんな事唐突に言われてもなあ。あれは確かに非公式で作られたゲームではあるけど、ヘッドバイザーがそんな事できるようになってないし、そもそもVR世界に閉じ込められてさえいないじゃん」

 俺は腹をさすりながら、取り敢えず自分の意見を語る。

 そうだ。そういったジャンルを扱う小説は古来より山のようにあるが、その殆ど全てが『VR世界にユーザーを閉じ込める』という手法を取られている。まあ単純に言えばログアウト不可能になるって事だ。で、その殺しの方法としてもっともポピュラーなのが、コンソールに繋がれた脳に電磁波を高出力で照射して、破壊するという手法だ。

 だが、当然のようにその方法が思いつかれている以上、世間一般だってそういった安全面は気にする。なので開発にあたって厳しすぎるとも言える厳正な審査を、ヘッドバイザーには行ったそうだ。そうした安全面への配慮の結果、ヘッドバイザーは絶対に人を殺すことの出来ない安全なものになったのだ。

 というかそもそも、『クロス・クロス・オンライン』でログアウト不可能なんて事態にはなっていない。閉じ込められてすらいないのだから、このゲームがデスゲームになり得る筈がないのだ。

 だが、かずみさんはううん、と首を振った。

「別に、そんな方法を使わなくたって人を殺す事はできます」

「でも、それって仮定なんだろ?」

 最初に言った。「だとしたら」と。ならば、最早すでにデスゲームでは無いことは確定してしまっている。

「それは単純に試しただけです」

「……試した?」

「そう。あなたに真実を語るべきだけの価値があるかどうかを」

 ……真実だって?

「じゃあ……何か? あんたが言った『デスゲーム』。あれは本当の事だって言いたいのかよ?」

 俺は胡散臭く思った。当然だ。そんな出鱈目な事信用できるか。

「……残念ながら、それに答える価値は無いと気付きました」

「は……? って待てよ、そんな不審な捨て台詞だけ残して去っていくなよ気になっちゃうだろ!!」

 背中を向けて去っていくかずみさんの肩を、俺は咄嗟に掴んだ。

「なんですか?」

「なんですかじゃねえよ!! そんな事言われてそのまま見過ごせるか!!」

 かずみさんはそのまま向き合って、冷酷な瞳をこちらに向ける。

「それでは、蹈鞴さんはそれを信じるんですか? 言って、信じてくれるんですか?」

 その言葉に、俺は思わずううっ、と呻いてしまう。

「そりゃあ……内容に、よるけどさ」

 その態度が何か癪にでも触ったのか、かずみさんはむっとした様相で小さく呟いた。

「……やはり、あの人のいう事は嘘でしたか」

「は? あの人?」

 もう興味が無いというように、かずみさんは背中を向ける。だが……、

 俺はもう一度、その肩を掴んだ。

「一体何なんですか? 私はもうあなたに用事は……」

「あんたになくても、俺にはあるね!!」

 このまま帰らせて、後でもし真実だったら非常に悔やまれる気がする。俺は勢いに任せて推測を言った。

「あんた、やっぱり昨日のムジカだろ! 思えば、あいつもなんか隠してるみたいだったし。あんたが俺に言おうと思ったって事は、俺にその事をなんとかして欲しいとでも思ってるんじゃねえのか?」

 その言葉に、振り向いたかずみさんは神妙な面持ちになる。

「私がムジカという名前であのゲームをやっている事は否定しません。ですが、私があなたになんとかしてほしいと頼み込んできたと思っているなら、勘違いも甚だしいです。それに、一々人をわかったように思い込むから尚腹が立ちます」

 その言葉と同時に、睨みつけがより一層厳しいものとなり、俺は思わずたじろいでしまう。確かに最後のはちょっと余計な事口走ったなあという後悔はあるが、そこまで睨まなくても。

「――ですが、あなたがそこまで言うなら、話して差し上げましょう。ただし、責任は取りません。覚悟はいいですか?」

 やっと話す気になったのか、と一瞬名探偵の相棒が最後まで種明かしをせがんで、最後の最後でようやく明らかになるんだと安堵するのと殆ど似たような心境になりながらも、しかし最後の責任は取りませんという言葉に、薄ら寒いものを覚えつつ、

「……ああ、話してくれ」

 それでも俺は、先を促す。

「……いいでしょう」

 ムジカもといかずみさんは、屋上の自殺防止用のフェンスに背を持たれると、一息吐いて語り出した。

「そもそも、あのヘッドバイザーが誰に開発されたのかは知っていますか?」

「そりゃあ、あのラティオ―社だろ? こんなこと、今や社会の常識だぜ?」

「正確にはラティオー社の護堂遊里率いる開発チーム、が正しいですが」

 護堂遊里、の所で奇妙に怨念がこもっていた気がするのは気の所為でいいんだろうか?

「もともとVRというものは世界中がこぞって開発を進めようとしてました。ある新興国ではそれに何十億と開発費をつぎ込んでいたそうです」

「何十億……。想像もつかねえ」

 一生遊んで暮らせる金である。俺は一日中何もせずだらだらとゲームをする生活を想像してみた。……いや、どう考えても堕落した人生であると、俺は少し自分に嫌気が差した。

「その理由は分かりますか?」

「理由って……皆ゲームで遊びたいんじゃ」

 俺の言葉に、かずみさんは馬鹿でも見たように頭に手をついて溜息を吐く。なんだ、もの凄く馬鹿にされたぞ。

「軍事利用以外に何がありますか」

「え、軍事利用?」

「そうです。VRゲームというものは軍事に転用できるんです。なにせ、殆ど本物の戦闘を体験できるわけですし、銃弾なんかを無駄にして、無駄金ができるのを防げるんです。それに、実践での経験不足も防げるようになりますから」

 なるほど、と俺は納得する。

 確かにVR世界ならば、限りなく実践ができるし、人死や怪我人もでない。様々なパターンのシミュレーションだってできるし、さっき言われた通り、金だって節約できる。それにまた、ゲームという事で兵士達の訓練へ臨む時の士気も向上するだろう。それが目的で軍に入ろうとする奴だって現れるかもしれない。それに戦争に勝てるというハイリターンを鑑みれば、何十億という金をつぎこんだって惜しくはない。

「当然、真っ先に開発に成功したのはアメリカでした」

「そいつは、俺も知ってるよ」

 VRゲームをもっとも最初に造り出したのはアメリカだ。そこに掛けられた技術力は相当のものだし、やはり予算だって他の国とは桁違いだ。各国の中で最も早く造り出すのが早いのは当然と言える。だが……

「でも、そのVRゲームがこれまた微妙だった訳だよな」

 そう、アメリカのVRはかなり微妙だった。というのも、機械が相当に巨大化してしまった為である。それにアメリカはこれを独自技術にしようと、開発に成功したと言う事以外、世間に何一つ公表しようとはしなかったし、輸出にも応じなかった。きっと、各国に技術が渡って、VRを利用されてしまうリスクを考えての事だったんだろう。そして、その試験運用も散々だったということも後に発表された。

「脳内に酷いノイズ音が入って、試用後に体調不良を訴えた人が殆どだったって話だった筈だ」

「そう、アメリカは開発には成功しましたが、残念ながらクオリティは完全に失敗と言える程に低いものでした」

「そこで登場したのが……」

「ヘッドバイザー、と言うわけです」

 アメリカが開発に成功して半年後、日本のラティオー社が発表したのが、ヘッドバイザーと呼ばれるヘルメット型のコンソールだ。

「ヘッドバイザーはその技術こそ公開されなかったものの、とても安価で大きさかなり縮小されて、それに世界中に取引されて行きました」

 前述の通り、VRというものは各国がこぞって開発を進めるほどに魅力的なものだった。

 それが家庭用ゲームで、しかも安価で売られているのだ。当然買わない手はない。各国はまるで買い漁るようにヘッドバイザーを日本から大量輸入した。お陰で日本の景気がかなり回復してきているというのは、最近の明るいニュースの一つだ。

 ちなみに、日本がヘッドバイザーを輸出したのは、当然秘匿する理由が無かったというのもあるが、ヘッドバイザーの性質にも理由があった。

「ヘッドバイザーに使われている容量の半分は、演算能力に用いられているのは、当然知っていますよね?」

「ああ、一つ一つのヘッドバイザーがスパコンの一端を担っていて、使用機数が多ければ多いほどクオリティも高くなるし、データ送信もスムーズになるんだろ」

 分かりやすく言えば三人寄れば文殊の知恵に近いだろうか。

 即ち、より多くのヘッドバイザーがあれば、その分演算能力も高くなるという訳だ。無限に増殖する脳細胞とも言える。そして増えた分だけデータも軽くなるし、画質もどんどんよくなる。一挙両得といった訳だ。

 ――が、そんなに話は上手くはいかない。

「どの道ゲームを制作する過程で、時間も容量もかかりすぎるんだけどな」

 これは以前言ったと思うが、どんなに通信が高速化して画質や動作は良くなっても、それによってサーバーへの負担が半端なすぎるのだ。大体、世界観そのものを創りだすのも時間が掛かる。もうすでにヘッドバイザー発売から五年になるが、簡単なソーシャルゲームレベルでしかゲームが作られていないのが現状だ。アクションものもなきにしもあらずだが、残念ながら画が酷い。有望なゲームが生み出されるようになるまで後一年は掛かるだろうという話だ。――逆に後一年だからこそ、俺は未だにヘッドバイザーを捨てることが出来なかった訳だが。

 だからこそ、

「あのクロス・クロス・オンラインはイレギュラーなんだけど」

 そう、現状であのゲーム以上のクオリティを持つゲームは存在しない。それほどまでに異常なのだあのゲームは。

「その通りです。クロス・クロス・オンラインは、現状のオンラインゲーム業界で最高傑作とも言えるものでしょう」

 かずみさんは俺の言葉に頷いて、更に話を続ける。

「――ですが、おかしいとは思いませんか?」

「? 何が?」

「一度ゲームをやってみた事がある貴方なら分かると思いますが、あのゲームは些か異常とも言えるほどに感度が良いと思いませんか?」

「感度っていうと、あれか? あのまるで現実みたいに体が動く感覚」

 一度、敵との近接格闘戦で投げ技を使ったことがあるが、あの時の感度は確かにおかしかった。あそこまで自然に体が動くのはおかしい。体が覚えている、とはよく言ったものだが、それは当然VRゲーム内では適用されない筈なのだ。それだけじゃない、リベロで武器を変換する時だってそうだ。頭で思い描いたことがノーモーションですぐに投影される。あれだって、普通のゲームじゃありえない事だ。

「その通りです。ですが、それだけではありません。貴方は最初違和感を感じませんでしたか? データが余りにも軽すぎると」

「あー、そういやそうだっけ」

 そんなこともあったような無かったような。

「でも、どうしてあんなに軽いんだろうな?」

 現在のVRゲームは、ゲームデータの一部をヘッドバイザーにコピーする事でサーバーへの負担を減らすという対応をしている。いつも新規で何かステージを拡張する時は、その度に大容量が追加されたパッチが更新されるのだ。この容量の大きすぎるパッチが問題で、この所為で一つのヘッドバイザーに1タイトルしかインストールできず、ゲームが固定化してしまうという由々しき事態が発生している。

 そんな現状にも関わらず、『クロス・クロス・オンライン』のパッチの容量はかなり軽い。これは一体どういう事なんだろう。

 その疑問に、かずみさんは驚愕の事実を語った。

「それは単純に、もともとヘッドバイザーというコンソールの容量なかには、早既に『クロス・クロス・オンライン』のデータがある程度入っているからです」

 …………………………は?

「ちょ、ちょっと待った。じゃあ何か? ヘッドバイザーはもともと『クロス・クロス・オンライン』をプレイさせるために造られたとでも言いたいのかよ?」

「全くもってその通りですが?」

 かずみさんは何を当たり前の事を、とでも言いたげの顔で平然と言い放った。

 つまり……

「まさか、『クロス・クロス・オンライン』を創ったのはラティオー社なのか!?」

「はい。正確に言えば、護堂遊里率いる開発チームですが」

 うわあ、と俺は頭を思わず抱えてしまう。突拍子もなさすぎて話についていけないし、ていうか話のスケールが大きすぎる。大体――

「なんでかずみさんはそんな事を知っているんだよ!?」

 その言葉に、かずみさんは表情に一瞬苛立ちの色を見せた後に、ゆっくりと息を吸った。どうしよう、俺まずいことでも言ったかな。

 俺がやや逃げ腰でいると、かずみさんは一つ大きな咳をして気を取り直した。

「それは、私があの最低のくそったれ野郎じゃありませんでした護堂遊里の娘だからですよ」

 お、驚くべき所なのか!? それとも苦笑いを浮かべるべき所なのか!?

 思わず反応に困ってしまうほどに、今の言葉にはそれだけの怨念が篭っていた。そうか、不機嫌な理由はこれだったか。どうりでしかめ面をする訳だ。

 この話はこれ以上突っ込まないという事を心に誓いつつ、俺は話を懸命に逸らした。

「きょ、今日は天気がいいなー」

「AH?」

 かずみさんの凄んだ視線が言葉と共に俺の胸に突き刺さる。このドキドキはもしかして恋!? ――いやいや、この震えってまさか恐怖!? 殺気を感じるよ!?

 完全に話を逸らした方向が間違いだった事に気付いた俺は、今の間違いを覆い隠すように懸命に喋る。

「そ、そうだとしても――どうしてラティオー社は『クロス・クロス・オンライン』を公式に配信しなかったんだ?」

「……それは世間体があったからですよ」

 多少むっとした感じは取り除けていないものの、かずみさんの殺気は毒気が抜けた。よかった、上手く話を反らせたみたいだ。

「世間体って?」

「さっきも言いましたが、ヘッドバイザーを開発したのは、開発チームが独自に開発したものです。即ち、ラティオー社が命令して造ったものではないのです。――当然開発したら賞賛の嵐だったでしょうけど。だから下手に公表したら、『クロス・クロス・オンライン』に仕組んだ“仕掛け”がバレた時に会社にかなりの責任問題が掛かるだろうし、世間に公表する前の審査で、そういう仕掛けは消される可能性もありました。だから公式発表出来なかったのです」

「それは分かった。でも、そろそろ本題へ入らないか?」

 俺は携帯を取り出して時刻をかずみさんに見せる。もうすぐ昼休みは終わりだった。

「そうですね。前置きはこの辺りで終わらせましょう」

 ごくり、と俺は唾を呑んだ。

 いよいよ、語られるのだ。このゲームが何故、デスゲームなのか――

「デスゲームのセオリーは、ゲーム内に閉じ込める事ですよね?」

「ああ、小説なんかじゃよくある話だ」

「しかし、それではどう足掻いたって世間にバレてしまう。さっきも言いましたが、開発チームはラティオー社に迷惑を掛ける行為を望みませんし、世間一般に広く広がるのも是としません。だから、彼らはそれ以外の方法で、間接的にデスゲームを仕掛けることにしました」

「間接……的に?」

 どういう意味なのか図りかねて、俺は首をひねる。

「どうやってするんだ?」

 かずみさんはしばし目を閉じて、やがて重々しく語りだす。

「VRゲームで閉じ込めず、尚且つデスゲームを行う方法……。それを考えた彼らは、一つの方法に至りました。それは……」


「キャラクターデータをクラッシュすると同時に、その人物の人格を破壊クラッシュすることです」


前書きの続き


美:へぇ~。ちぃーちゃんのサーヴァントねぇ。

ケ:いや、実際はその逆なんだけどね。

南:そこは譲れないわ。ちぃーちゃんは私のサーヴァントよ!!

美:うわぁ、南嶺ちゃん! 突然びっくりしたよぉ。

南:こんな楽しそうな事、参加しないわけがないじゃない。

ケ:出番もないからね。

美:作者ぁ? どうなの?

作:いやぁ、皆結構出すよ? ケツアル君以外。

ケ:な、なんだって……

美:それじゃあまた次回♪

ケ:ちょっと待ってくれ。ここで終わるわけには――!!

南:キャラが崩壊しているわね。


追伸:ケツアル君も活躍するので心配なさらず。

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