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その9

 巨大ロボットぉ!? ちぃーちゃんやっちゃえ~!!

 by美流九

      ✚


科学ゾーン:ステーション265:内縁部:アンテナ付近――


「行くぞ!!」

 思い切り地面を蹴りあげ、空中に飛び上がる。

 銀の巨躯が禍々しい赤い目を光らせて睨みつけてくるが、その姿をみて恐れよりも笑みが浮かんできていた。

 何故なら、まるで少年マンガのように、強大な敵が目の前にいるからだ。誰もが一度は味わいたいこの緊迫感を、緊張感を、興奮を、俺はまさにリアルタイムで経験しているのである。――ここは仮想空間だとかいう話は放っておいて。

 しかし、当然そんな簡単に行く訳がない。そんな簡単な程、オンラインゲームの世界は甘くないのだ。

 何故なら、視線の先にいるのは、倒されるべくして作られたエネミーではない。倒されず、倒す為に作られたものなんだから。

 一定の行動の法則も、ゲームみたいにあるわけではないのだ。

 だから、いきなりどんな攻撃がくるか分からない。

 それは当然俺も理解していた。だが――その理解は、随分と甘かったようだ。

 空中で様子を見ていると、突如巨人の右腕が跳ね上がった。それもズズズ、と重たく持ち上げるような動きではない。圧倒的に早い動作で巨人の腕は持ち上がる。

 しかし、大丈夫だろう。巨人との距離は優に百メートルはある。これだけの間合いがあれば、相手の攻撃は大抵砲撃しか――

 ドガン、と気付いた頃にはもう吹き飛ばされていた。

「いぎッ……!!」

 声にもならない痛みが全身から伝わって、脳内に叩きつけられる。

 巨大な腕は俺の予想よりも遥かにリーチが大きいようだ。見当違いをしていた――

 己の失敗に気付くときには、優に百メートルは吹き飛ばされて、並べられていた民家の一つの外壁に身を叩きつけられていた。

 壁面に幾何学模様を創りあげてしまったのに気付き、今の一撃がどのくらいの破壊力かを思い知る。通常こういった建物はそれなりに頑丈に出来ているのだが、それでもひびが入ってしまっているのだ。もしかしたら、普通のプレイヤーキャラなら死んでいたかもしれない。だが――

 俺のHPはほんの少し減った程度だった。

 あの攻撃ですら「この程度」だ。さすがはチートだった。

「ちぃーちゃん!!」

 南嶺と美流九が心配そうな表情をして近寄ってくる。

「心配されなくても、頑丈だから無事だって――ッ!!」

 巨人の肩口が派手に盛り上がったのを見て、慌てて飛び出し、二人を抱えて宙に飛ぶ。

 突如巨人の肩口からミサイルが景気よく三十発ほど発射され、先程までいた場所に何発か衝突。路面を深く抉って吹き飛ばしていた。

 しかし、その数発以外は全て俺達のほうへ向かってくる。

 当然、ミサイルを避けるコースで空中を飛ぶのだが、

『ミサイルといえば追尾がお馴染みですよね』

 ムジカの皮肉にも似た声に合わせるように、避けたはずのミサイルが急激向きを転換し、こちらに向かってきた。

「くそっ、アニメかよっ」

 南嶺と美流九がより一層俺の腰の辺りを掴んでくる。俺だけなら盾で受けて即終了だが、今彼女たちから手を離すのはまずい。

 それを狙ってきたのか、あいつは。

「畜生、思惑通り行かせるかよ!!」

 俺は空中を蹴って、地面へまっしぐらに進む。

「ちぃーちゃん!! いつものことだけどおかしくなったのぉ!?」

「失礼なこと言ってんじゃねえ!!」

 徐々に地面眼前に近づいてくる。脇で絶叫する南嶺と美流九をみやりながら、俺は墜落する直前で体を無理やり回転させる。そして地面衝突スレスレで足を蹴りだし、斜めに跳んだ。

 急な回転についていけなかったミサイルは、そのまま地面に衝突。残らず全て巻き込んで爆発した。

「ぐぉっ」

 俺は二人を庇うように前に突き出し、背中にもろに爆風を受ける。

 なんとか空中でバランスを崩さずに、俺は空中で体勢を整えると、周りを見渡してみると、建物が雑多としていて、まだ被害の少ない場所があった。迷わずそこへ飛んでいく。

『逃げるつもりですか!!』

「ちげーよ! あとで相手してやるから待ってろ!!」

 適当に応答しつつ、建物の影に着地。二人を降ろした。

「南嶺! 美流九! 分かってると思うけど、お前たちはアイツの意識がこっちに集中している間にアンテナ行って逃げてくれ!!」

「でも――」

 何かを言いかけた美流九だったが、それは途中で南嶺に遮られる。

「分かったわ。ただし、無茶して1キルでもされたら現実世界でなぐるわよ?」

 なんて容赦ない幼馴染なのか。酷い、慰めの言葉もないなんて。

「ダイジョーブだよぉちぃーちゃん!! その後私がだき……首十字するからぁ!!」

「どうしてお前らはそう暴力的な方向でしか物事を考えられないんだ!?」

 後何を言いかけたんだ!? と問いかけようとしたその時だ。

 ドーン! と、

 眼前の家々が木っ端微塵に。

「あっぶねええええええええええええええ!!」

 心臓が張り裂けそうなくらいバックバック言っている気がする。なんてタイミングで攻撃してやがるんだ。怖すぎるだろ!!

「くそ、このままじゃここも危ないな。早く二人共逃げろ!! 俺が注目されてくる!!」

 言うだけいって、俺は幼馴染達のほうを見ずに、素早く空中へ飛び出していった。


      ✚


「くそ、このままじゃここも危ないな。早く二人共逃げろ!! 俺が注目されてくる!!」

 ―――などと言われて、迷わずちぃーちゃんを置いて逃げるわけが無かった。

 ちぃーちゃんが遥か上空に飛び去った後、美流九が南嶺に近寄ってくる。

「南嶺ちゃん!! どうするの!ぉ?」

「!と?の間に小さな「ぉ」を入れる高等技術はやめなさい。驚いてから一拍あけて疑問してるみたいだから。そんなことより、当然、わかってるわよね?」

「当然、このまま逃げるわけないんだよねぇ?」

「当然よ」

 そう、この二人は「引け!」と言われたら絶対に押す人間なのだ。過去にちぃーちゃんが池の近くで「押すなよお前ら。絶対押すんじゃねえぞ!!」と念入りに警告されたので、ネタの前振りかと勘違いし、全力でタックルして池の底にミステリみたく沈めたこともあった。

「でも、どうするのぉ?」

 美流九は自分が作戦を考えても仕方ないと気づいているので、当然作戦は南嶺に聞いた。

「……今はまだなんとも言えないわね。相手の弱点なんか、そうそう見つかるわけでもないのよ」

 南嶺は南嶺で、それぐらいしか役に立てていない自分に苛立っていた。彼女だって本心では戦いたいのだ。

 しばらくちぃーちゃんと巨大ロボの戦闘を見ていた美流九は、ふと一つの事実に気付く。

「あれぇ? 思ったんだけど、あの巨大ロボ定位置から全く動いていないよねぇ?」

 確かに、でかい胴体と派手な動きのせいで、躍動的には見えるものの、しかし実際の所全く自分の位置を動かしていなかった。

「おかしいわね? 移動しないのに二本足をつける必要はない筈だし――」

 しばらく考え込んだ南嶺は決断する。

「もっと近くに寄っていきましょう。何かまだ、秘密があるかもしないし」

「――南嶺ちゃんが言うなら、そうだねぇ。行ってみよう」

 美流九も南嶺の提案に賛同した。

「ここで拉致られた仕返しもしたいしねぇ」

 不敵な笑みを浮かべた美流九に、南嶺も同じように不敵な笑みを浮かべる。

「このまま終わると思っていたら、大間違いよ? ムジカさん」

 二人の幼馴染の復讐劇が、ちぃーちゃんの知らない時に進行し始めていた。


      ✚


 指先から五本の熱源ビーム!!

「ちょっとまった。そんなんアリかよ!?」

 器用に五本の指を動かして、ぶんぶん目の前を熱線が通りすぎていった。運悪く熱線にぶつかってしまった建造物は、バターを切ったみたいによく斬れている。

 このままでは俺は八つ裂きにされてしまうだろう。

「うおっ、うわっうわっ、ほっ、よっ!!」

 ――が徐々に余裕が出てきた。所詮は指で操っているだけなのだ。指をよく見ていれば大体は軌道が予測できるし、動きも横薙ぎの攻撃だけだ。

 ――だけどこれじゃあ、攻撃ひとつ出来やしねえ!!

 そんな事を焦って考えている余裕はない。一瞬でも手の動きから目を離せば、すぐに八つ裂きにされてしまうに決まっているからだ。せめて、相手の動きを一瞬でも止められればいいが――

「ちくしょう!!」

 だが、

『このままでは拉致があかないですね』

 と熱源ビームの照射が唐突にストップする。

「………?」

 疑問符が浮かぶ。あのまま続けられていたらいつか確実に集中が切れて、俺は否応なく八つ裂きにされていた筈なのに――?

「拘泥してても仕方がねえ!」

 切り捨てるように言って、俺は大きく腕を広げる巨躯へ飛び込もうとした。

 すると、巨人の盛り上がった胸が、上に大きく跳ね上げられ、胸のあった部分から何百発ものミサイルが覗いた。

「――!?」

 すかさず後ろを振り向き脱兎の如く逃走開始。

 後ろから花火を打ち上げるような発射音が止めど無く連続する。

 ほんの興味から思わず後ろを振り向くが――

「うげぇっ!? ミサイルそんなに!?」

 視界を埋め尽くすほどのミサイル群が、後方から追い上げてきていた。

「おわああああああああああああああああっ!!」

 情けなく叫び声を上げながら、俺は高速で空中を右往左往する。だが、ミサイル群は一発も互いがぶつかって誤爆したりせずに、一心不乱に俺の後を付いてきた。まるで金魚のフンのようである。

「言ってる場合じゃねえって!!」

 自分の心にノリツッコミしておいて、俺はとにかく加速する。さっきみたいに地面すれすれで跳ね上ればいいとも思うが、正直あの量の爆発で巻き込まれない自信がない。間違いなく喰らってしまうだろう。いくら防御力が高くても、HPに限りが無いわけではない。チート=無敵とは言えないのだ。ほら、さっきの爆発を食らったり熱線掠ったりしたお陰でHPが十分の一ぐらい削れて――って、

「なんて自動回復オートヒーリングしてねえんだ!?」

 最初の頃に南嶺から関節決められたときはしっかり回復していたのに――?

 俺の疑問に、意外にもムジカの声が答えた。

『それは私がバトルフィールド宣言したからですよ』

「バトル…宣言?」

『思いっきり省略していますが、その通りです。内縁部に敵が侵入してきた場合、オートヒーリングが効いていたら戦闘になりませんし、その分『核』を破壊されやすくなってしまいます。それを防ぐためにバトルフィールド宣言をすれば、オートヒーリング機能をオフにできるようになっているんです」

 長ったらしい説明ありがとうございまーす!!

 いや、そうではなくて、

「おい、それじゃあてめえらの目的は果たせないんじゃねえか!?」

 大声で叫び返しながら、俺は辺りをぐるりと見回す。どこか連続した曲がり角は――

『ええ、その通りですね』

 ムジカから返答が帰ってきたが、何故か残念そうな所は微塵も感じられない。まさかコイツ――

「てめえまさか、最初からそのつもりだったな!!」

『……流石、なかなか鋭いですね』

 ようやく、ムジカが最初に人質を取った理由が分かった。

 もともと、アイツは俺を殺すつもりでいたのだ。しかし、いきなり殺しに掛かると本人の体裁が危ないとでも思ったんだろう。だからムジカは、まず最初に殺す『理由』を作り出そうとした。すなわち大義名分だ。名誉の確保だ。その為には、まず俺達から仕掛けさせなくてはならない。だからまず俺達、いや俺の敵愾心を煽るために、人質を取って自分を敵だと認識させた。まず、最初は鹵獲目的でプレイヤー達を送り出し、俺達に倒させた。すると、他のプレイヤーは憤慨するだろう。そこを突いて、大義名分を作り出したのだ。しかし――

「たった一度俺を倒すために、随分と厭らしい事をやってくるんだな!!」

 俺はまだ無事に残っている一軒家を発見すると、素早く高度を低くし、空を蹴って家の角を直角で曲がる。これは蹴ることでスピードのベクトルが変化するリベロの特性を生かした作戦で、追尾ミサイルがすぐには直角には曲がれないことに気づいて、この曲る事によって起きるタイムラグの差で、距離を離そうという魂胆だ。

 三周ほど家を周回すると、曲がって暫くした所で、一気に地を蹴って上空に飛び出す。

 ロケットのような勢いで遥か高くまで飛ぶと、俺は追いかけてくるミサイルを見下ろす形で振り返った。

 巨大な剣だった蒼い羽根を弓に変え、矢を番える。

 だが、番えた矢は普通のものとは変わっている。まるで矢の先端の刃を何百と連ねて、大きな串でつき差したような巨大な矢だ。その巨大な矢に合わせるようにして、弓そのものも全長が俺の身長よりも少し小さいくらいまで大きくなっていた。だが、どちらにも重すぎるほどの重さは感じない。

 ゆっくりと矢を引いて、じっくり狙いを定めて――解き放った。

 ビュン! と真っ直ぐ流星を描く矢は、ミサイル群の五十メートル手前で散弾のように無数に分裂して、遍くミサイルを微塵も残さず貫いた。

 次の瞬間、破裂するように爆発する。

 大丈夫だ。十分距離もあるし、巻き込まれることは―――

「ぎゃああああああ!! 爆風くるぅううううううう!!」

 ありそうだった。

 叫びを上げながら懸命に空を蹴って上空に逃げる。あまりにも一心不乱で上っていったため――

「あうっ!!」

 天井に頭をぶつけた。

「くっそ、天井を空にペイントする必要は無いだろ!!」

 思わず文句を言うが、そんな場合じゃないって。

 巨人の腕、顔、体から大小様々な砲門が並べられていた。

「よりどりみどりってわけか!!」

『減らず口を叩けるのもここまでです!!』

 ピシャリと言われて、ムジカの憤慨を表すように、嵐のような激しさで光弾が飛んでくる。

「へっ、この程度で止められるか!!」

 俺は蒼い羽根を盾に変えて、光弾を弾いて弾いて弾く。そのままの勢いで突進していく。

 大きな左腕が振られるが、迷いもなく上に跳び、避ける。そのまま落下地点を微妙に操作して、上手く腕の上に着地した。

「自分には攻撃できねえだろ!!」

 だが、予想とは違ってムジカは迷わず砲門の標準を俺に合わせようとしてくる。

「おおっと!!」

 こうなったら攻撃を喰らう前にせめて邪魔な腕を一本切り落としておこう。

 俺は盾にしていた羽根を剣に変え、思いっきり振り上げ、振り下ろす。当然、巨人の丸太なんか目じゃない太い腕はいっぺんに叩き斬られる――はずだった。

 予想に反して、ガキィン! と剣が弾き返されたのだ。巨人の装甲には大きく抉れた跡はあるものの、かなり浅い。これは一体どういうことだ――?

『隙ありです!!』

 ムジカの声に、俺ははっと現実に意識を引き戻されるが、剣を持つ腕は弾かれた反動があるのか痺れたように動かない。どうやら刃物は一定の強さ以上で弾かれるとその分麻痺が起きるように設定されているようだった。

 思わず苦虫を噛む俺に、極太のレーザーが飛んできて、視界を真っ白染め上げると同時、圧倒的な衝撃が体に叩きつけられた。

「ぐがっ……!」

 大きく地面に叩きつけられ、一瞬視界の画像がブレた気がした。ノイズが走るほどに高速で吹き飛ばされたらしい。

 四肢に力を込めて立ち上がり、HPを確認すると、なんと60%近くまでHPが落ちていた。よく見ると、巨人の左腕は大きく抉られ、煙を上げている。

『言い忘れてしまいましたが――』

 ムジカが見下すような声で冷酷に言い放つ。

『「リベロ」や「イラ」などの「レグルス」プレイヤーは、一度でも死んだらアカウント取り消し――即ち、ゲームオーバーですから』

 !? なんて言った今!!

「『イラ』? 『レグルス』? アカウントは一度でも死んだら取り消し? 一体あんた何知ってやがるんだ!?」

 明らかにこのチート能力に関して知っている様子のムジカだが、俺の問いかけた質問には答えない。

 その代わりと言うように、巨人は残った右手を俺に向かって突き出す。その中心には巨大な銃口が見えていた。多分、さっきの攻撃もこの右手によるものなんだろう。

「―――ッ!!」

 咄嗟に立ち上がり、飛ぶ。次の瞬間視界が閃光に染まったかと思うと、さっきまで居た場所が大きく抉れて、シュウと音をたてて煙をあげていた。

「くそッ!!」

 そのまま俺は突き出されたままの右腕に降り立って、剣を大きく振りかざした。――が、結果は変わらない。大きく弾かれ、動きが麻痺する。

『そんな簡単に行く程、世の中は甘くないんですよ!!』

 俺が乗ったままの腕が、ブンッ、と横に勢い良く振られる。視界が一瞬でブレて、次の瞬間には瓦礫群に叩きつけられていた。痺れるような小さな痛みが、体中から這いずり回って脳に届く。HPゲージは55パーセントにまで落ちていた。

 このままじゃ、勝てない。

 自信満々で飛び出していった癖して、俺は結局ここで無様に負けるのだろうか。

 そんな事は嫌だった。俺はそんなのごめんだ。

 だけど――と、俺は唇を噛み締める。

 どうやったら勝てるのか、どうにも分からない!!


      ✚


「ちぃーちゃんの剣が弾かれてるぅ!?」

 南嶺が美流九の声で振り向くと、ちぃーちゃんが大きく剣を振り上げたまま痺れたように動かないのを見つけた。次の瞬間視界がチカっとしたかと思うと、ちぃーちゃんの載っていた腕が大きく半円に抉られて、その後方でちぃーちゃんが地面に叩きつけられて倒れている。

「やはり、一筋縄ではいかないみたいね……」

 と南嶺は思わず舌打ちした。

 あの巨大ロボの性能を知るよしは無いが、それでもあれがこのステーションの最終兵器だということぐらいは分かる。それは即ち、単機で相当戦力を保有すると考えていいだろう。

 その戦力は、ちぃーちゃんが斬れなかった腕を容易く吹き飛ばした程なのだから、威力は相当なものだと考えられる。

 しかし、攻撃が効かないのであればちぃーちゃんだってやりようがない。先程ステーションを破壊した時のように巨大レーザーで焼き払えればいいが、あれはエネルギーの充填に時間が掛かるし、何よりそのままアンテナまで破壊してしまう可能性だってある。ちぃーちゃんはそこの所もしっかり配慮するだろうから、きっとあのレーザーを使う事はないだろう。

「なんとかならないもんかしらっ!!」

 唐突に現れた敵兵を、南嶺は心臓辺りにめがけて正確に銃を撃ち放つ。バタバタと倒れる音がするが、南嶺はそれに目もくれなかった。

 せめてあの装甲を脆く出来ればいいんだけど――と南嶺が考えていたその時だ。

「南嶺ちゃん、あれぇ!」

 美流九が巨大ロボットの足元のほうを指さしていた。

「何? 新しくアンドロイドとかターミネーター的な敵兵でも出てきたの?」

「南嶺ちゃん、それ全然冗談になってないと思うよぉ」

「冗談じゃなかったんだけど」

「こんな時ぐらいたまにはボケを挟もうよぉ……じゃなくってぇ」

 美流九はほら! という感じでロボットのケツの辺りを指差す。それを追っていくと、

「……尻尾?」

 ケツには尻尾があった。真っ黒な太い尻尾は、人間で言う肛門のあたりから伸びており、それを追っていくと、その先は地面に作為的にできた穴に向かっていた。

「……南嶺ちゃん、思考が漏れているよぉ。後、私が言うのもなんだけど、女の子が肛門を恥じらいなく言うのはどうかなぁ」

「もっと色々下品なこと言ってみる?」

「遠慮しておきまーっすぅ」

 あれは何のためにあるのか、と南嶺は推察する。しかし、ヒントも何もなければすぐに分かるものでもなかった。

「それにしてもおっきぃーねぇ! あんなの現実で作ったら滅茶苦茶電気喰うよぉ!!」

 美流九の言葉に、南嶺ははっとする。

「なるほど。あれは電力を供給するチューブなのね。でも、いきなりの事だったから、元からあったものを使うしか無かったと」

「どういうことぉ?」

 南嶺がブツブツと言う独り言に興味を示した美流九は、疑問を呈した。

「元から使っていたってぇ?」

「そう、きっとその通りよ。多分あのチューブはアンテナに繋がれていたものだと思うわ。だけど、それほど長さはないから、下手にロボットを動かすとチューブは外れてしまう。だから下手に動かせないのよ。だけど――」

 南嶺は不敵な笑みを見せて、美流九の不思議そうな瞳を見つめた。

「それは上手く利用できる。しかも、私達の手でね」

 美流九が首を傾げる。

「それってつまりぃ――」

「ちぃーちゃんには守ってもらってばかりだけど、それって私の性分には合わないのよ」


「今度は私達がちぃーちゃんを助ける番よ」


 ようやく私の出番ね……。次回は科学満載よ!!

 ――って作者!! なんで頭抱えてるの!! え? 俺がこれ考えつくのにどれだけ苦労してると思ってる!? って?

 え? これぐらい簡単でしょう?

 by南嶺


――作者は世の中の不条理に絶望し、逃亡を開始しました――


 ッパン!! ナ、ナンダト。ソ、ソレハハッシュパピーデハナイ、カ……


――筆者は南嶺によって捕らえられました――

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